スマホの端末はなぜ「実質0円」で売れるの?

スマホの広告によく「実質0円」というのが出てきますが、あれって不思議ですね。たとえばiPhone6sは普通に買うと9万円以上しますが、新規契約や他社からの乗り換えだと、月々の割引で0円で買えるというのです。中には9万円の現金をくれる店もあります。

これはもちろん、アップルが0円で売っているからではありません。メーカーは普通の値段で売っているのですが、それをキャリアが買い上げて販売店に卸すとき、新しく契約をとったら販売奨励金を出すのです。たとえば新規契約1件ごとに9万円もらえば、販売店は0円で売ることができます。

ではその販売奨励金は、どこから出ているんでしょうか? みなさんの払う通信料金からです。たとえば9万円の端末を「2年しばり」で買うと、少なくとも2年間は通話料を払わないといけません。この料金はいろいろありますが、政府の調べによると、年間1世帯あたり平均18万8000円です。

そうすると2年間の通信料金は37万6000円。キャリアは9万円の割引よりはるかにもうかるわけです。ここで大事なことは、この通信量は新規契約の人もずっと使っている人も負担しているということです。つまりキャリアを乗り換える一部の人の端末のコストをそれ以外の長期利用者が負担しているわけです。

だから「0円」をやめれば通信料金は安くできます。それが最近増えてきた格安SIMカードです。料金は最低で月1600円ぐらい。端末は「SIMフリー」なら何でもいいのですが、iPhoneと同じ性能の台湾製のスマホが2万7000円ぐらいで買えます。これはMVNOとよばれる小売業者がキャリアのSIMカードを売っているだけですが、端末の割引をしない分だけ安くなるわけです。

端末だけだと0円より高いみたいですが、2年使った場合に払うお金は、キャリアで1世帯で2台使っているとすると、1人あたり2年で18万8000円ですが、格安SIMだと1600円×24ヶ月=3万8000円ですから、

  • キャリア:端末0円+通信料金18万8000円=18万8000円
  • 格安SIM:端末2万7000円+通信料金3万8000円=6万5000円

と1/3ぐらいになります。キャリアの場合は長く使えば使うほど損しますが、格安SIMだとその1/3ぐらいの料金でずっと使えます。格安といっても、キャリアのSIMカードを売っているだけですから、機能はほとんど同じです(少し違う場合もあります)。

格安SIMは格安スマホでないと使えないわけではなく、最近のスマホはSIMロック(自社のSIMしか使えない制限)をやめたので、ほとんど使えます。たとえばiPhone6sに格安SIMをつけても通信できます。電話番号もMNPで引き継げるので、キャリアの端末とまったく変わりません。

そんなわけで、別に総務省が「指導」しなくても、みなさんがちょっと頭を使えば、通信料金は1/3ぐらいになるのです。