地方財政に関するゴマカシの議論は終わりにするべき

2015年11月14日 07:00

イケダハヤトさんと水谷翔太さんの地方消滅に関する議論について下記の通り分析してアゴラに投稿したところ、私の論稿に対して長崎総合科学大学の前田陽次郎さんから違和感を感じるということでご意見を頂きました。

<私の意見>
財政の観点から、イケダハヤトさんが住んでいる地方自治体は地方交付税と国庫支出金漬けであること、彼が明るい未来がないと指した東京都が現在進行形で彼の生活の場である地方自治体の財政を支えていること、地方への夢想ではなく地方消滅への準備を推奨する水谷氏の意見が正しいことなど。

「地方創生を止めて地方消滅でいこう!」水谷翔太さん・大阪市天王寺区長

「「地方消滅でいこう」という論調に対する強烈な違和感 」(イケダハヤトさん)

「イケダハヤトVS水谷翔太、~地方消滅論を客観的に考察」(拙稿)

「地方消滅なのか、地方自治体消滅なのか」(前田陽次郎さん)

まず、私の意見は元々地方財政制度論としてではなく、イケダハヤトさんが地方税の納税などを引き合いに出したため、その程度の税収で地方の惨状はどうにもならないということを述べたまでであり、経済的に半社会主義化している地方の未来が明るいという主張が全く的外れであることを解説しただけです。その上で、前田陽次郎さんが述べる地方財政の議論はほとんど意味がないものだと反論させて頂きます。

主要な納税地域である東京都民が地方財政に意見を述べるのは当然

前田陽次郎さんは「中央と地方が悪口を言い合うのではなく、もう少し双方が良い方向に向けるような議論をしたほうが生産的ではないのか」と述べられていますが、私が述べたことは「地方自治体の財政は都市部からの財政移転が無ければ破綻している」という事実です。

地方自治体の財政の大半が地方交付税と国庫支出金で賄われていることは周知のことであり、国税の元手を出している納税地は東京都などの都市部が巨大なウェートを占めています。そのため、東京都民には地方財政と地方の見通しについて厳しい意見を述べる権利と義務があると思います。(イケダハヤトさんが住んでいる場所から生まれる僅かな国税額と東京都から支払われる莫大な国税額の差を無視して、私たちは同じ国税使っているから一緒だという論理で片付けることは暴論です。)

東京都民には地方出身者なども多く含まれるため、地方に対して明確に「実質的に破綻している状況を真剣に考えろ」とは言わないだけです。そのため、バシッと事実を伝えられることに違和感があることは認めます。しかし、私は都市からの送金が無ければ地方が実質的に破たんしている事実を覆い隠す議論こそ不毛だと思います。

そもそも地方税率は自由に変えられるので好きに設定したら良い

また、前田陽次郎さんは「税制自治体が大都市に有利に設定されている」から「大都市の自治体は裕福(税収が高い)」と述べられています。申し訳ありませんが、このようなお上意識が地方の衰退を生み出してきた原因と言えるでしょう。

地方税法の規定では地方税率は税目によっては自由に変えられるため、その地方自治体が納得できるように地方税率を変更したら良いと思います。標準税率よりも引き下げることは制度的な問題が生じるかもしれませんが、標準税率よりも税率を引き上げることは可能です。

私は既に絞り取るべき財源もほとんどないような非都市部の地方自治体から豊富な税収が得られる課税の在り方というものが思いつきませんが、仮に税率を変更した地方税収で地方自治体が運営できるなら好きなだけ増税したら良いと思います。

自分はそんな場所には全く住みたいとは思いませんが・・・。

地方財政は「ゴマカシ」から「事実」を議論するようになるべき

最後に、地方交付税の不交付団体が東京都しかない状況が間違った税制であることは認めます。ただし、消費税と地方交付税の税額を比較されていましたが、全く無意味な考察だと思います。

なぜなら、その議論は平成27年度一般会計で約37兆円の国債発行を前提としているからです。つまり、消費税がどうのこうのという話以前の問題として、社会保障、地方交付税、その他諸々のための税収が根本的に足りていないのです。この莫大な借金は一体誰が返していくのでしょうか?

そして、国家人口が分散分布した状態で増加していく社会とは異なり、人口減少して経済的に衰退する地方ではなく、東京を中心とした都市部の法人・住民が積みあげられた国債を返済していくことは明らかです。現在、非都市部の地方自治体が行っていることは、借金は作りっぱなし、返済する担い手はドロン、という国家ぐるみの大規模な詐欺みたいなものです。

担税力が無い地方自治体は、都市部からの送金、都市部への借金の飛ばし、が無ければ、とっくの昔に消滅しています。

前田陽次郎さんのような議論を目にすると、地方住民のために地方交付税などで作った借金を返済していく運命、にある東京都を中心とした都市部住民の立場を多少は考慮してほしいと感じます。都市部住民の納める税金は地方住民の私物ではありません。このまま都市部の競争力を奪い続ける政策を継続しても両者に明るい未来は存在しません。

地方の人々は自立の道を模索するのか、地方消滅を準備するのか、を選ぶべきでしょう。

渡瀬裕哉
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事

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