「日中韓首脳会談」の定期開催は意味がないのでは?

2015年11月16日 07:00

今回の日韓会談の成果


朴大統領は一応会談を呼びかけて成立させ、安倍首相も無難にこなして、米国政府の要請には応えた。中身がないのは始めから分かっていた事で、どうでも良い事だ。日本にとっては共同会見も昼食会もなかったのはとても良かった。韓国側は礼を尽くしたとは言えないので、内心忸怩たるものがあるかもしれないが、うるさい反日勢力に突っ込まれる隙を与えなかったし、日本側は次にこちらがホストになる時に気を使わなくて済むだけ随分楽だ。街の焼肉屋で気楽に食べたカルビは首相の健康にも良かっただろう。

※今後は定期開催が決まった日中間3カ国首脳会談だが…(首相官邸公式サイトより)
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朴大統領がなおも拘っている従軍慰安婦問題については、日本側が「本件は解決済み」という原則的な立場を崩せないのは当然の事で、この点では「安倍首相ならまさか揺れる事はないだろう」と思われるので、多くの国民は安心していられる。朴大統領は「これが日韓関係改善の足枷になっている」と言っておられる様だが、それはご自身にとっての足枷であって、日本人は誰も足枷になっているとは思っていない。だから、それを外したいのであればご自身で外して頂くしかない。

この問題は「国家間の法的な問題」ではなく、「管理責任を十分に果たせず、自分の意思に反して働かされた気の毒な元慰安婦の方々を救えなかった罪科を持つ旧日本政府になり代わり、現在の日本政府が、その道義的な責任感から、それぞれの方々に対してあらためてお詫びをし、金銭的な補償についても意を尽くす」というのが、宮沢内閣当時からの一貫した日本の立場である事を、安倍首相もあらためて確認すればよい。その為にもし必要なら、現在はもう存在していない「アジア女性基金」に類するものをあらためて作り、自らが署名した新しい首相親書も出せば良い。しかし、それ以上の事はありえない。

そもそも、韓国政府と多くの韓国人には何か基本的な感違いがあるのではないか? 両国の関係は勿論良ければ良い程いいに決まっているが、現在の日本は別に日韓関係が良くならなくても困ることはない。それに、歴史をどう認識するかは、主権国である日本の国民が決める事であって、そんな事を韓国人に教えて貰いたい等と思っている日本人は皆無だろう。

確かに、日本人の中にも、過去をやたらに正当化したがる「あまり知性的とは言えない人達」もおり、そういう人達が時折韓国人の感情を逆なでにするような発言をしているのも事実だが、中立的な立場から書かれた多くの書籍等を読める立場にいるだけ、日本人の平均的な理解は韓国人のそれよりははるかに高いレベルにあると思う。例えば「日本の朝鮮統治を検証する」と題したジョージ・アキタとヌランドン・パーマーの共著(草思社)等は、事実関係を極めて丁寧に検証している点で最も信頼に値するが、果たして何人の韓国人がこのような書籍を読んだ事があるのだろうか?

この次は「日中韓」ではなく「日中」「日韓」だけで十分


今回に限って言うなら「朴大統領に体裁を繕わせた」という意味はあったものの、そもそも「何故日中韓の三国が一堂に会する必要があるのか」が私には一向に判らない。現状では「中韓が気脈を通じて一緒に日本を責める」という構図の方が多そうなので、北朝鮮問題以外は、日本としてはむしろ忌避した方が良い。北朝鮮問題でも、日本が「殊更に米国を外して日中韓だけで話をする」事に何か意味があるかは疑問だ。

かつては、産業界でも「CJK(日中韓)の協調」という事が盛んに言われた。私自身が関係していた総務省の通信行政担当部門は特に熱心だった。これは「通信規格等の世界標準が常に欧米のメーカーの主導下で決まり、アジア諸国の利益は阻害されている傾向がある」という被害者意識から出たもので、「日中韓が力を合わせて、次の世界標準を主導していこう」という考えに基づくものだった。

しかし、私は、この様な動きについては、その当時から懐疑的だった。先ず、欧米のメーカーというものはそんなに国家意識は持っていない。相手国の政府が決める様な事については、自分の国の政府を動かして圧力を加えようとするが、技術的な問題に関しては、組んでメリットのあるところと組むのが原則で、その相手がどこの国の企業であろうと意に介さない。従って、日本のメーカーが何か良い技術を持っているなら、同じ日本のメーカーや中国、韓国のメーカーと組むよりは、欧米のどこかのメーカーと組んだ方が「世界標準化の場で多数派工作をする」にあたってはむしろ合理的だと私は思っていた。

また、私は、そういう試みが日本の思惑通りうまく進められるとも全く思っていなかった。「国際的な協業にあたっての駆け引き」といった事には、中国メーカーも韓国メーカーも当時はまだ慣れてはいなかったが、日本メーカーも決して巧みだとは思えなかったし、万事に「中小企業的なしたたかさ」を持つ中韓メーカーに比して、日本メーカーは全般的に官僚的で柔軟性に欠け、そこに政府が絡むと、政府の思惑に迎合しようと「建前」に盲従する恐れがあった。こんな事では「結局は中韓にうまく利用されるだけではないか」という危惧を私は当初から持っていた。

結論から言うなら、ずっと先の事ならいざ知らず、現状では「北東アジア三国同盟」で日本の国民が幸せになれる様なシナリオは全く書けない。民主党政権が一時期意欲を持った「アジア共同体構想で米国を牽制する」などというシナリオは、「今から考えてみれば危険極まりないものだった」と言うしかない。要するに、こういう事を考える人達は「中国の力の過小評価」という致命的な欠陥を持っており、またその一方で「中国がなおも共産主義を標榜する独裁国家である」という明白な事実を忘れてしまっている。

「中国に比べれば共に小国である日本と韓国が協調して中国と交渉する」というシナリオなら、大いに意味があるし、私の良き友人である韓国の元実業家などもその様な考えだった。しかし、韓国民の多くがなお過去を引きずって「親日には死んでもなれない」様な状況下にいる現状では、こういうシナリオに期待するのは非現実的だ。従って、「日中関係」と「日韓関係」は明確に切り分けて、それぞれに冷静に「双方の利害得失」を読み抜き、自らは「日米同盟」を堅持した上で、したたかに交渉していくしかない。

「日中韓首脳会談」の定期開催などは不要だと思う。

松本 徹三

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