アゴラ新編集長が「書く」ことで見つけたもの

2015年12月01日 00:00

言論プラットフォーム「アゴラ」と世界的筆記具ブランド「モンブラン」とのコラボレーションでお送りするブランドジャーナル「NO WRITING NO LIFE」。第3弾は、アゴラ編集長の新田哲史です。大手新聞記者、PR会社を経て独立。ネット選挙や企業PRのコンサルティングの傍ら、独自の視点によるコラムをネットメディアに寄稿。10月にアゴラの編集長に就任しました。「アナログとデジタルの端境期に育った世代」の視点から「書く」ことをテーマに語ります。(取材・構成はアゴラ編集部)
(※この企画はモンブランの提供でお送りするスポンサード連載です。)
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国語が苦手でも「書く」のが好きになった転機


ーー読売新聞で10年余、記者を勤められましたが、元々「書く」ことが好きだったのですか
文筆で身を立てようという人は、子供時代から読書や作文が好きで得意という方が多いでしょうが、実は高校時代まで国語は苦手科目でした。テストで「この主人公がこの場面の気持ちはどれか最も適当か4択で選びなさい」という問題を外すと、「なんで自分の回答がダメなんだ!」とよく怒っていました(苦笑)

転機は大学受験。小論文試験対策で自分が書き始めると、文章の構造が分かり始め、現代文の問題が解けるようになったのと、合格体験記の出版物に自分の寄稿した原稿用紙30枚ほどの手記が掲載されたこと。体験記が書店に並んだのを見たとき、自分が書いたものが知らない誰かに読まれる喜びを感じましたし、数万円ほど原稿料もいただけて、「書いて稼ぐ」手応えを知ることができました。そう考えると、人に読んでもらえるだけの「完成物」を作りたい欲求は二十歳の頃にはあったのでしょう。

サヨナラ本塁打の見どころを10分で書く


ーー記者時代は相当訓練されたのでしょうね
最近刊行した初めての著書「ネットで人生棒に振りかけた!」(アスペクト)にも書いた話ですが、初めて書いた記事は電柱に乗用車が衝突して運転者が死亡した単独事故のニュースでした。警察の広報文を元に電話取材し、過去記事を参考に書いて出したら先輩から「これは車の右側がぶつかったのか?左側がぶつかったのか?」と尋ねられました。答えられないと「すぐ確認しろ!」とドヤされました。事件性はなく、著名人が絡んだわけでもないので、紙面には10数行ほど掲載されるだけですから、記事にはそこまで載るわけではありません。先輩が言いたかったのは「どんな小さな事故でも何か大きな異変の兆しがあるかもしれない」と諭したかったのだと思います。
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▲アゴラ研究所の編集長席にて

ーー記者時代で印象に残っている取材や記事を教えてください
記者を辞める2010年にロッテ球団を担当していたのですが、レギュラーシーズン3位のチームが初めて日本シリーズ優勝を勝ち取る快進撃に立ち会えたことは忘れられません。歴史的なニュースに遭遇することも記者の醍醐味です。ただ、試合展開など時々刻々と変わる状況で締め切りまでに完成度の高い原稿を安定して書けるかもプロの記者として問われます。今でも覚えているのは、2009年4月16日。井口選手がナイターで劇的なサヨナラ満塁ホームランを打ったのですが、朝刊の締め切りまでわずか10分余り。プロ野球担当になって日が浅く、本人のコメントも満足に取れない中で、試合のハイライトをまとめたコラム450字ほどを入稿できました。その時間の締め切り版の一般紙でコラムまで書けたのは読売だけ。スピードと質と量の要求に応えられたことがその後の自信につながりました。

手書きの方が取材相手の表情を読める


ーー記者といえば手書きのメモをしている印象があります
ロッテ担当時代に面白かったのが、ネット裏の選手たちの談話取りで日本と外国の記者たちの違い。日本の記者はペンでメモを取るのですが、外国人の記者たちはネット裏の雑談でもiPhoneやICレコーダーでガシガシ録音するのはカルチャーショックでした(笑)日本のメディアも、政治家や官公庁の記者会見はレコーダーや、パソコンに直接打ち込む記者がここ10年ほどで主流になってきました。

しかし、そうした取材現場の“デジタル化”を疑問に見る人もあります。記者を辞めて政治関係の仕事をしてからのことですが、ある副大臣経験者と、そうした記者たちの取材手法について意見交換する機会がありました。その方も定例会見でパソコンに打ち込むのに必死な記者を目の当たりにしているわけですが、記者たちは会見でロクに取材相手である自分の顔も見ず、「ライティングマシーン」と化しているというのです。たしかに質疑応答の中身をきちんと考えられているのか微妙です。

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ーー手書きのメモの方が相手をよく見て取材できるのですか
これは別に今回の企画だから手書きの良さを強調するわけではないですよ(笑)もちろん、インタビュー記事を作るのに、機械的に一言一句全てをメモすることが必須なシーンもあります。ただ、手書きでメモしているときの方が相手の顔、表情、呼吸を合わせながら、やりとりしやすいのではないでしょうか。本質を突く質問をして相手の目が一瞬でも泳いだかどうか分かりますし、「もうその話は、この辺で」と目でサインを送ってくる人もいます(苦笑)そういう時は、どんどん突っ込む時もあるし、後で電話や夜回り取材で本人にコソッと本音を聞いた方がいいのか判断するわけです。

書くことで新しい出会いを見つけた


ーー新聞社退社後、PR会社を経て独立されましたが、ブログを書き始めたきっかけは
転職した後うまく行かずに心身を病んでしまい、1年近く休んだ後という想定外の独立でした。私はとにかく書いて人に読んでもらうことが好きだったので、リハビリも兼ねて書いてみようと思ったのです。時事評論を私なりに視点で書き、アゴラに投稿したことでその後の自分の活躍の場を増やすきっかけになりました。
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2013年にインターネットを使った選挙活動が解禁され、私もネット選挙の企画周りから選挙準備をお手伝いする仕事を始めました。政治や選挙の世界で見聞きしたことを元に政治記者とは違う視点でブログを書くようになりました。特に都知事選の時に家入一真さんを担ぎ出してから、「政治の話をよく書くブロガー」として注目されるようになり、アゴラ主宰の池田信夫や乙武洋匡さん、駒崎弘樹さん、安藤美冬さんといった著名な方々と出会うきっかけにもなりました。

新聞記者を続けていても、インフルエンサーとお付き合いすることができたでしょうが、新聞社は政治やスポーツなど担当が分野ごとに縦割りになるので、現在のように政界、ベンチャー企業、農業、出版業界など様々なジャンルの方々と接点がつながることは無かったと思います。独立してからは、ある時はライター、ある時はコンサルタント、ある時は選対事務局長というように様々なポジションを反復横跳びしてきました。予想外に素敵な出会いがあるのを「セレンディピティ」と言いますが、多彩なフィールドから得た知見をネットメディアに「書く」ことで私は近年、セレンディピティを享受できました。これからもどんな望外な出会いがあるのか、楽しみにしています。

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取材の締めくくりに新田編集長に、世界的プロダクトデザイナーのマーク・ニューソン氏がデザインした「モンブランM」の万年筆を使ってもらい、「あなたにとって書くこととは何か?」を綴ってもらいました。(各写真をクリックすると「モンブランM」の公式ページをご覧になれます)
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