バロンズ誌:中国経済のリバランス、楽観は禁物 --- 安田 佐和子

2016年01月04日 22:30

yasuda160104
あけまして、おめでとうございます。本年も皆様に取って幸多い年となりますよう、祈念致しております。

バロンズ誌、新年最初の特集は利回り最大9%の投資先についてお届けしていますよ。ジャンク債から公益セクター、通信関連の個別銘柄など、気になる内容は本誌をご覧下さい。

当サイトが注目する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートはいつものランダル・フォーサイス氏がお休みでジョナサン・レイン氏が担当しています。テーマは中国。抄訳は、以下をご笑覧下さい。

バタフライ・エフェクトさながら、2015年に北京を舞ったのは蝶以上で市場を奈落の底に突き落としたものだ。商品先物は急落し、高利回り債の信用スプレッドは拡大を続け、米株は人民元切り下げや中国政府による本土A株の不器用な支援策にも関わらず何とか大幅安を回避できた。中国は2016年、内需主導型の経済へ移行する過程で金融危機のような大混乱を引き起こさずにすむのだろうか?

シルバークレスト・アセット・マネジメントのパトリック・ホバネツ氏は、中国経済の緩やかな鈍化が喧伝されるなかで警鐘を鳴らす。アジアをあちこち旅してきた同氏はベンチャー投資家であり、中国の大学で教鞭を取ってきた。そのホバネツ氏は、本当の意味で消費者および民間主導の自立した市場経済を築く上で中国が「創造的な破壊」の時代を迎えると予想。新しい経済の仕組みは、放漫なインフラ支出に始まり無計画な商業・住宅建設によるゴーストタウンを生み出した既存のモデルを切り捨てることを意味する。

ただ、ホバネツ氏はリバランスの兆候を殆ど見出していない。信用の伸びは2015年7-9月期の成長率である6.9%を超える不健全さで、デフォルト回避に恒常的融資が必要である事実を浮かび上がらせる。競争と効率化を促進する上で国営企業の民営化が必要とされるが、航空、貨物輸送、原油産業など独占企業を解体するような兆しは見えない。ホバネツ氏は、中国高官が「V字型回復はない、あるのはL字型のみ」と見込んでいると明かすほか、自身の予想として「一段の悪化」を打ち立てる。

一部の中国専門家は3.4兆ドルに及ぶ外貨準備高、比較的低水準にある政府債務、公的および民間債務が国内で賄われており海外の資金逃避は無関係であることを理由に楽観論を展開する。しかしホバネツ氏いわく、日本も1990年代に同じような論陣を張っていたが、20年以上も「失われた」状態だ。

多くが輸出拡大と成長促進を狙い再び人民元の切り下げを余儀なくされると予想する一方、ホバネツ氏はエマージング諸国での通貨切り下げ競争を引き起こすと見込む。また人民元切り下げにより原材料を輸入するにあたり人民元での支払い負担は増すため、輸出拡大の効果を打ち消す見通しだ。

長きにわたる中国ウォッチャーであるJキャピタルのアン・スティーブンソン—ヤン氏も、慎重な見通しを展開する一人だ。そもそも通常の状態でも経済のリバランスは困難を伴うというのに、足元で頼みの個人消費すら失速中。世界銀行は家計支出のGDP比はドイツで55%、米国で68%のところ、中国では40%と報告していた。さらにスティーブンソン—ヤン氏はGDPだけでなく、中国国家統計局が発表する小売売上高にも疑問を呈する。直近は前年同月比で10%以上の伸びを達成しているものの、主要3000社をベースにした小売売上高は10月に前年同月比4.5%増にとどまり2013年の8%増、2010年の15%以上から明確に減速している。中国の民間データサービス会社ウィンド・インフォメーションが発表した小売業者の総売上高は、2015年7-9月期に前年同期比1%増に過ぎなかった。

中国の小売売上高も、下駄を履いている?
chinaretailsales
(出所:Trending Economics

中国の家計は、国営企業や国営銀行その他大手民間企業にとってチープマネーだった。利子が相当低かったにも関わらず、国民は国営企業に貯金していたためだ。うず高く積み上がった貯金が橋や道路といったインフラ、はてにはコンベンション・センターやら高級住宅の資金源となり、過去10年間における資本支出をGDP比40%までに急伸させてきた。中国政府は直接的あるいは間接的に生産活動を支配してきたが、家計支出となればそうもいかない。

家計支出で大部分を占めるヘルスケア、教育、金融サービスの規制ががんじがらめであり投資が不十分であることも問題だ。また富が超富裕層に集中し、先進国で言う中流世帯が育っていない。スティーブンソン—ヤン氏は「所得の持続性に乏しく、成功するには株式を取得するかコンドミニアムを購入するしかなく大規模な債務を抱え込まざるを得ない」とも指摘する。習近平主席が展開する賄賂撲滅キャンペーンも、宝飾品といった高級品の消費やマカオでの支出を抑制させている。

内需主導型への”グレート・リバランス”は多くの投資家に希望を与えて来たが、数ヵ月で成し遂げられるはずもなく何年もかかってしまう。また消費主導のサービス経済自体、資本支出と違って初期段階でのGDPの押し上げ効果は低い。中国の旧型成長システムは失速してしまった後、中国の消費者が世界経済のたるみを補うと期待しない方が無難だろう。

ストリートワイズは、新年のスタートにエネルギー株の復活を予想する。「希望と祈り」は投資戦略として役に立たないが、我々はエネルギー関連に対する姿勢はこの2つだった。2015年に供給過剰と需要鈍化によって原油先物は約30%落ち込み、特に産油国のリーダーたる役割を放棄したサウジアラビアは生産を続けた。今後は制裁解除の期待が高いイランのほか、ロシアも増産が見込まれるなか、米国のエネルギー企業は現金不足に陥る前にコスト競争に直面し、S&P500エネルギ—・セクター指数は2015年に24%も急落。2015年の8月にはヘラクレス・オフショア(HERO)がチャプター11を申請し、ハルコン・リソーシズもデフォルト判定のひとつにあたる債務条件の変更を余儀なくされた。格付け会社フィッチは、ドル建て高利回り社債を発行してきたエネルギー企業のデフォルトが2016年に11%と、1997年のピーク時から原油先物が60%も沈んだ1999年の9.5%を上回ると予想。アナリストは、2016年に状況が好転すると見込んでいない。S&P500エネルギー・セクターは簿価の1.4倍で取引されているに過ぎず、20年平均の2.6倍を大幅に下回る。ラッセル2000のエネルギー指数に至っては、0.9倍という有様だ。

それでも、ウェルズ・キャピタル・マネジメントのジェームズ・ポールセン氏は失業率に着目。1948年以降、失業率が5%以上の場合にエネルギー関連は株価指数を1%下回り公益に次ぐ最悪のパフォーマンスを示して来た。しかし5%割れでは6.6%を超えるリターンを遂げている。JPモルガンは、原油安でも”ディフェンシブ・エネルギー・バスケット”を提唱。資産の質が高くバランスシートが健全で、かつ生産コストの低い企業を挙げる。祈りを捧げるより、希望の星を知っておくべきだろう。

——中国とエネルギー関連と言えば、2016年の注目株。バロンズ誌は悲観寄りのアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートで中国に慎重な見解を、楽観派のストリートワイズでエネルギー株の復活を掲げ明暗を分けています。ウォール・ストリートにおける中国のソフトランディング期待の後退を表しているのか。少なくとも、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げより中国経済のハードランディングから派生した波乱を危惧しているということなんでしょうね。

(カバー写真:faungg’s photos/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年1月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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