それでも、不倫疑惑タレントを「抹殺」してはいけない --- 後藤 和也

2016年01月21日 06:00

tasogare
芸能界ではスクープが相次いでいる。特に、好感度抜群とされた女性タレントのベッキーさんの不倫疑惑をめぐるニュースは、連日さまざまな報道がなされている。

■今回の騒動とは?
筆者はベッキーさんと不倫相手とされる男性ミュージシャン(以下、「男性」)のファンでもアンチでもない。ベッキーさんについては「あぁ、テレビによく出ているのねえ」という程度の認識であり、男性側に至っては今回の報道で初めて存じ上げた次第だ。言い方は悪いが、両者にそんなに関心はない、ということを冒頭にて明確にしておきたい。また、筆者は当事者間に不倫関係があったかどうかは断定できる立場にないことも申し添える。

年明け早々に週刊誌が報じた内容によれば、ベッキーさんが妻子ある男性と不倫をしていることが、男性のLINEが盗み見られたことから発覚したという。報道によれば正月に、二人で男性の実家を訪問するなど、深い仲であるという。

その後のベッキーさんらに対するバッシングの嵐は言わずもがなだ。特にCMや出演番組を多数抱えるベッキーさんに対しては、スポンサーが損害賠償請求やCM降板を検討しているなど、多くのネガティブな報道がなされた。先日開いた謝罪会見も、記者からの質問が許可されなかったなどの内容に、逆に批判の声が多く寄せられる結果となっている。

■看過できない報道について
先に述べたとおり、今回の一連の騒動について特段の興味もなかったのだが、先日のある報道が気になった。以下の内容だ。

タレントのベッキー(31)が、ロックバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル川谷絵音(えのん、27)との不倫疑惑騒動で10日で約4キロ痩せたことが16日、分かった。
(中略)
関係者によると、1月4日に川谷の長崎県の実家を訪れ、出てきたところを週刊文春の記者に直撃されてから「軽はずみなことをしてしまった」と食事が喉を通らない状態が続いているという。知人によると、今回の騒動で、出演するCMの一部が差し替えられるなどの影響が出てしまったことで、ベッキーはなかなか寝付けず、食欲がない日々が続いている。

「ベッキー 10日で4キロ減 騒動で食事喉通らず寝付けず 仕事以外は自主謹慎」
スポニチアネックス 1月17日(日)5時32分配信(ヤフーニュース)

寝付けず食欲がない、ひきこもりがちなど、心の病の兆候ともいえる状態にあるという報道だ。ベッキーさんといえば「いつも前向き、元気な清純派」なタレントであり、今までゴシップとも無縁であった。「むしろできすぎ」という声もあったほどだといい、その反動からか、ネット上でも辛辣なコメントが目立つ。無論、仮に不倫という事実があったとすれば、倫理的な行為とは言えず、男性の妻は第一の被害者と言え、スポンサーなどの関係者にも損害を与えたというロジックは成立するだろう。ファンの信頼を傷つけた、という見方もできるのかもしれない(筆者はファンというものはある種の強烈な片思いのようなものであると考えるので、「信頼を傷つけられた」と逆上するのもなんだかなあと思わなくもないが)。

以上の報道やバッシングを傍観しながら、ある事件を思い出した。STAP細胞を巡る笹井教授の自殺事件だ。

■STAP細胞騒動と本件の類似点について
まだ記憶に新しいSTAP細胞を巡る事件。小保方さんの指導者役として記者発表を仕切っていたのが笹井教授であった。ご存知のようにSTAP細胞論文の信頼性について疑義が生じてからは、それまでの「ノーベル賞級の偉業」という評価が一転し、小保方さんと不適切な関係があったのではないかという趣旨の報道が数多くなされた。

その後、笹井教授は自殺という選択をしてしまう。死後、関係者の証言により、笹井教授と普通のコミュニケーションがとりづらい状況にあったということ等、騒動のさなかに、心の病に急速に蝕まれていったと思われる事実が判明した。死後は、笹井教授の功績を称え、その早すぎる死を悼む報道が主となり、不適切な関係を糾弾する内容がフェードアウトしたのが非常に印象的であった。

無論、本件とSTAP細胞の騒動では内容も質も異なる。ただし、これまで賞賛の対象でありマスコミによって持ち上げられていた対象が、ある瞬間にまさに手のひらを返されるようにどん底に叩き落されるという過程や、当事者とは言えない不特定多数の者から人格攻撃のような辛辣な非難がなされることは酷似しているのではないか。

■おわりに
無論筆者は、不倫という行為があるとすれば、それを肯定するつもりは毛頭ない。不倫は文化だともいうつもりもないし思ってもいない。従来からのファンでもない、むしろアンチのような人たちや、今回の報道で初めて存在を知ったような人たちがヒステリックに自身の正義感から罵詈雑言を浴びせる姿に、ある種の危険性を感じるから、拙稿にて問いかけるのである。

我々の発する言葉は、時として鋭い矢のように相手の心身に突き刺さることがある。その結果、相手が死を選ぶということもある。我々はそれでも、相手に対し非難を続けるべきだろうか。相手を抹殺しなければならないほど、その相手と自分の関係性は深いのだろうか。どれほどの利害関係にあるのか。

本件が仮に事実とするならば、好感度を商売の手段としているベッキーさんらは、なんらかの責任を負うことになるだろう。暫くの間となるかもしれないが、「芸能界から抹殺」されるのかもしれない。ただしかし、「この世から抹殺」等ということは、仮に当事者だったとしても、現法令下では決して許されるものではないという当たり前のことを、我々は再認識すべきではないのだろうか。

「常に笑顔で、前向きに頑張っていました。勇気をもらいました」等と、死後に功績を称賛したところで、何らの意味もないのである。

【参考記事】
■「年も明けたし、何か資格を取ろう!」と思ったあなたに伝えたいこと (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/47304400-20151223.html
■「未達成感」が育児ストレスを増大させるのでは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/47075444-20151202.html
■元猿岩石芸人から学ぶべきスキルとは (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/46884848-20151113.html
■「俺、メンタル的にヤバいかも・・・」と思ったら。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/46714386-20151027.html
■山本耕史流アプローチがストーカーとならない理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/46042230-20150825.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント


この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2016年1月19日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

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