米株安、有力な米大統領候補の顔ぶれが一因 --- 安田 佐和子

2016年01月24日 06:00

election
米株の週足、年始初めて陽線引けしましたね。バロンズ誌のカバーは前週に続きマーケットの重鎮によるラウンドテーブルです。今週は、債券王の名を欲しいままにしたPIMCOの創立者で現ジャナス・キャピタルのビル・グロス氏に欠席を決断させた新債券王のジェフリー・ガンドラック氏の投資アイデアが誌面に登場。運用資産800億ドルを抱えるダブルライン・キャピタルの創立者であるガンドラック氏は、ズラウフ・アセット・ マネジメントの創業者兼社長であるフェリックス・ズラウフ氏と同じく年内の利上げなしを予想しています。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、米大統領予備選に焦点を当てます。抄訳は、以下の通り。


米北東部を襲うであろう豪雪は、ある意味でアメリカ人の望みを叶えるものだ。ワシントンD.C.が閉鎖を余儀なくされ人がいなくなってしまうのだから。大雪警報が発令されずとも、すでに政治家はD.C.を後にしただろう。1600 ペンシルベニア・アベニュー(ホワイトハウスの住所)の住人を決めるため2月1日にはアイオワ州で党員大会、9日にニューハンプシャー州での予備選を予定しており、中西部やニュー・イングランド地方は選挙広告で埋め尽くされているはずだ。

CRTキャピタル・グループの金利ストラテジー・ヘッドのデビッド・アバー氏は、「米大統領選の結果こそ一段の市場不安を煽るだろう」と予想する。なぜなら「マーケットはトランプ、クルーズあるいはサンダースに耐えきれない」ためだ。

ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで株式市場が 1)米国経済、2)Fedの金融政策、3)中国、4)地政学的リスク——だけで急落しているわけではないと主張する。米国の連邦政策こそ市場参加者を不安にさせ、特に民主党候補で自ら民主社会主義者を名乗るサンダース候補(米上院議員、バーモント州)に頭を悩ませているという。もちろん共和党候補も問題視しており、世論調査の支持率レースでは不動産王ドナルド・トランプ候補やテッド・クルーズ候補(米上院議員、テキサス州)がトップ2をひた走る状況。こうしたアウトサイダーを食い止める上で、オハイオ州知事のジョン・ケーシック候補がニューハンプシャーでの躍進が期待される。そうなれば、トランプ候補やクルーズ候補の台頭を抑える流れが生まれるというものだ。

党員集会・予備選スケジュール、直近はこちら。Rは共和党、Dは民主党を指します。
schedule

(出所:US Presidential Election News

シュワルツマンCEOが指摘するように、アメリカ人にとって自国のトップを決める大統領選挙は世界にとってグローバルなレベルでリーダーを決定するも同然である。少なくともマーケットは現時点で、支持率トップに挙がる候補者を好ましいとは考えていないようだ。

21日に、マーケットは名実ともにハッピー・ハンプ・デー(週の真ん中にあたる水曜日、気持ちを週末に向けて盛り上げるための言葉)を迎えた。原油相場は4%も急伸し、2003年の安値である27ドルから週末には32.19ドルへ高騰して引け。米株も歩調を合わせて上昇し、特に15日までの週はエネルギー関連の上昇に支えられた。ショート(空売り)勢が好む銘柄が急伸したのは、単にテクニカル的な理由が背景であり、イランの制裁解除に伴う供給拡大や中国の景気減速懸念を踏まえればファンダメンタルズとは言えない。格付け会社ムーディーズは米株が大幅高を演じた22日、ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSA)、トタル(TOT)、スタトイル(STO)といったビッグ・ネームを含む120社の「格付け見直し」を発表した。バークレイズは1550億ドル相当の社債がジャンク債へ格下げされると見込みのところ、バリュエーションはエネルギー関連の格下げを反映していないと注意を促す。

株式市場の援軍こそ、中央銀行だった。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「我々の行動に上限はない」と発言し追加緩和の可能性を点灯。日銀にも、円高圧力や金融市場の混乱を背景に緩和圧力が高まる。中国は春節祭を前に流動性供給と同時に人民元の下支えとして元買い・ドル売り介入を通じ元の供給量を抑制するという矛盾した政策を実行中。とはいえ李源潮・副主席は、中国政府は「まだ未熟」な同国株式市場を「支える」と発言していた。

2016年に入り主要国の中銀がリスク市場に流動性を供給しようとするなか、ウィルシャー・アソシエーツによると米株は22日に1.3%上昇し週ベースでは時価総額を3000億ドル回復した。もっとも年始からは7.4%も下落したままで、1.8兆ドル失われたままである。

2015年12月の利上げ開始以降、Fedは米株に何の手も差し伸べていない。26-27日に開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、どんなメッセージを送ってくるか注目。2015年9月FOMCでは、金融市場の混乱を背景に利上げを見送った。当時、利上げ織り込み度が急低下したように、現時点でも3月の追加利上げへの見通しは26%まで落ち込んでいる。いま47%と最も高い確率が見込まれているのは、6月だ。

ストリートワイズは、高配当株へ危険信号を発する。米株は年始からフリーフォール状態で、3週間では高配当銘柄で構成されるiシェアーズ 好配当株式 ETF(DVY)は4%も沈み、S&P500の7%安とさして変わらない。2015年の高リターンを踏まえれば、驚きに値する。理由は簡単。高配当は業績によって支えられてきたが、足元で米経済は鈍化の兆しをみせ業績期待が後退しているためだ。アトランタ連銀の試算では米10-12月期国内総生産(GDP)は0.7%増という有様。業績見通しが明るくない以上、高配当も安全とは言えない。S&P500の構成銘柄は、利益のうち41%を配当にまわしてきた。景気拡大サイクルに入ったばかりであれば、懸念する必要ない。しかし、コンバージェックスのストラテジスト、ニコラス・コラス氏に言わせれば現状、景気拡大の成熟期を過ぎたも同然だ。こういう時には、生活必需品銘柄といった往年の優良株に注目すべきだろう。

——アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートはジョージ・ソロス氏をはじめブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ氏、そしてガンドラック氏などと同じくFedは年内利上げできないとの見方を支持しているような論調でした。弱気派トーンを貫き、足元の米株高も「テクニカル」と一刀両断しています。ストリートワイズ、今回は高配当銘柄にベアな見方を呈したかと思ったら、ディフェンシブ関連へのアロケーション変更を示唆していました。年始からの急落を経ても、米株の力強さを信じて疑わないかのようです。

(カバー写真:Jane Wyman/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年1月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。


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