アメリカ大統領選が面白い!

私の今年の10大予想の中に「アメリカ大統領選は最高のソープオペラ」というのがあります。ソープオペラとはアメリカの昼ドラのことで昔、石鹸の会社のスポンサーが多かったことからこの名がついています。しかし、この昼ドラは状況によってはゴールデンアワーのドラマに格上げしてもよいかもしれません。

来週月曜日の2月1日にアイオワ州で候補指名争いの戦いが始まり、3月にはスーパーチューズディがあるなどアメリカもいよいよ大統領選の話題で持ちきりになります。その中で民主党、共和党のみならず無所属としてあのブルームバーグ元ニューヨーク市長が出馬を真剣に検討するという新たな切り口が見えてきました。このあたりを含め、さらっとおさらいしておきましょう。

まず、民主党ですが、クリントン氏が優勢と言われていたものの現状、サンダース氏が猛追しており、一部では逆転しています。サンダース氏は自称「社会主義者」で富裕層増税、公的医療などかなり左巻きなものの99%と1%の社会が根底にある中で新移民、ラティーノ(ラテンの人の意でいわゆるヒスパニック)などマイナーの不満はたまってきています。極端な公約はドナルド トランプ氏の戦略に共通するところがあり、かつての中道右派、中道左派主流から様変わりしていると言えます。

但し、民主党の両候補はクリントン、サンダース共に68歳、74歳と高齢である点が気になります。クリントン氏は共和との論戦になると脛の傷(メール事件やベンガジ事件、健康問題)で苦戦しそうです。そういう点からは世の中の流れとしては民主党に向かっているのにその勢いをうまく取り込めない状況にあるともいえます。

今さらブルームバーグ氏が無所属で出馬を検討するといったのはクリントン氏が不利になり、まさかのドナルドトランプ氏が大統領になる可能性の芽をつぶすことにあろうかと思います。その意はサンダース氏の大統領も許さないと見え、極端な政策を阻止するということでしょう。つまり中道対極論の側面が今回の重要な大統領選のポイントとなります。

ちなみにブルームバーグ氏はもともとは民主でしたが2001年のテロ直後のニューヨーク市長選の際、共和党が有力候補を出せず、自らが共和党から出馬し当選した経緯があります。よって氏は正にホワイトナイトと申し上げても過言ではないでしょう。

かつて極論はごく一部のボイスでした。共和の茶会党がその例でしょう。ところが世界がイスラム問題などで不和になり、予想もつきにくい不安定な状況にあります。アジアの時代が生み出したのは低賃金化でアメリカの労働者の賃金が上がらないことが中流の大きな不満となっています。

共和党の大統領候補、トランプ氏の支持層は中流の白人とされます。つまり、かつての強いアメリカ、WASP、マジョリティとしての権威を復活させたいという気持ちをトランプ氏に託しているように見えます。今、ほとんどのマスコミや専門家はトランプ大統領はないと信じ切っていますが、私は今後、テロなど不和に繋がる事件が起きれば一気に勢いを増し、あり得ない大統領の誕生はなくはないと思っています。

アメリカのラティーノ、アジア系、黒人など非白人系は現在37%程度で今後この数字はさらに増え2020年には5割になるという見方もあります。この人種によるアメリカのボイスの割れ方も今回の大統領選の切り口の重要なポイントになります。例えば共和党の候補としては依然好位置につけているテッドクルーズ氏はキューバ移民の父を持つため、もともとの白人層にラティーノも取り込めるという強みはありますが、それが逆に公約のインパクトが薄くなり不利にならないとも限らないのです。その典型がジェブブッシュ候補でスペイン語がベラベラなのにもはや、見る影もない状態にあります。

こう見ると今回の大統領選の切り口は民主、共和という見方だけではなく、中道か否か、支持する人種などより複雑化し、仮にホワイトナイトのブルームバーグ氏が無所属で出馬する事態になれば相当の議論を巻き起こすことでしょう。

私は今回の大統領選で誰が勝つかというよりアメリカがどのような論戦をし、国民が何に強い反応を示すのか、これがキーだと思っています。それが2017年のフランス大統領選にもつながるし、欧州の一枚岩が崩れるかどうかの流れにもつながります。

少なくとも乱戦気味だということはそれぐらい世の中が混とんとしているという裏返しでもあるのでしょう。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月27日付より