NY大豪雪に見るグローバル時代の報道番組の有り方 --- 平 勇輝

2016年01月31日 06:00

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記録的な大豪雪となったアメリカ東北部


ニューヨーク州などアメリカ北東部を中心に記録的な積雪となった先週の大雪。東京や香港でも記録的低温が続くなど、先週はとりわけ寒い一週間だったと思います。アメリカで起きた今回の大豪雪の話題は、日本を含め世界各国のニュース番組で取り上げられました。

アメリカの大雪のニュースは聞き飽きたイギリス人


歴史的な異常積雪を受けて、今月26日に非常事態宣言を発令した、ニューヨーク市。防寒着姿で市民に警戒を呼び掛けたビル・デブラシオNY市長の記者会見の様子は、大西洋をまたいだイギリスでもライブ中継で放送されました。ところが、タイムズスクエアで雪合戦を楽しむニューヨーク市民とは裏腹に、テレビのニュース番組の有り方について疑問を呈したイギリス人が少なくありませんでした。これに関連して、イギリスの公共放送局BBCで興味深いニュース番組が放送されていましたので、ご紹介したいと思います。

グローバル時代のニュース番組の有り方


隔週金曜日に放送されているBBCのニュース番組Newswatch。15分程度の比較的短い番組ですが、視聴者からのメッセージを番組中で公開し、それに対して番組責任者や専門家がコメントするなど、インタラクティブな側面があることが特色です。この番組は、2003年に開始された米英軍のイラク侵攻の中心的根拠となった大量破壊兵器の脅威について、英国政府が恣意的な情報操作を行ったとするBBC側の批判が、偏向報道であったと問題視したハットン司法調査委員会の報告書、いわゆる「ハットン・インクアイアリ」を基に、より公正公平な報道を実現する目的で始まりました。ここ最近でNewswatchが扱った話題には、シリア内紛や移民問題など、多様な見方や考え方のある比較的センシティブなものがあります。

アメリカ北東部の大豪雪の話題はNewswatchでも取り上げられていましたが、BBCの視聴者からは「過剰に取り上げられ過ぎている」「報道のアメリカ化ではないか」といった批判的な意見が寄せられました。もっとも、今回の大雪は、文字通り、歴史的なものでしたので、ニュース番組に取り上げられることそれ自体は何もおかしいことではありません。番組に出演した専門家も「(大豪雪のニュースは)報道価値があるものだ」とコメントしていました。

ところが、先週のBBCのニュース番組のヘッドラインニュースとしてニューヨーク市の様子が中継された後の天気予報のコーナーでも大雪の話題が触れられ、イギリス各地の気象情報よりも先にアメリカの話題が繰り返されていた点を視聴者の一部が問題視。さらに、BBCの視聴者の多くはNY市民でないにも関わらず、前述のデブラシオ市長の7分間もの緊急会見の様子がまるまる放送されたのを受けて、BBCのニュース番組の話題の取り上げ方について猛抗議した視聴者のメッセージがNewswatchで触れられていました。皮肉屋なイギリス人らしいコメントの1つに「アメリカはいつからイギリスの州になったんだ?」というものも。

グローバル化が進み、世界各国の主要ニュースがヘッドラインニュースとして取り上げられることは、全く珍しいことではなくなりました。日本のニュース番組でも、アメリカやアジアなどの世界各地のニュース、とりわけ政治経済関連の話題がひっきりなしに取り上げられています。

しかし、自由度が高く、掲載できる内容と量がほぼ無制限のネットニュースとは異なり、ある一定度の公共性と公平性が求められるテレビのニュース番組は、どのような内容のニュースを、どれくらいの頻度で、どのように報道するのか、ということを常に考えなければなりません。この点において、「アメリカの大雪の話題ばかりではなく、よりイギリス人に身近である移民問題やテロリズムの問題を触れるべきだ」というBBCの視聴者が寄せたコメントは、もっとも意見だと思います。同様なことは、日本のメディアにも言えると思います。

公共の電波を用いて報道番組を放送する上で、放送局側の偏見や恣意性が含まれてしまうという点は、常に考慮しなければない問題の1つです。もちろん、完全に公正で公平な放送を実現することは無理難題を押し付けるようなことですが、それだけ大きな責任を持っているという自覚を、既存のテレビメディアの関係者は持たなければなりません。

インターネットの普及によって、誰もが自由に意見し、議論することができるような社会になりつつありますが、それでもなお、テレビの影響力を過小評価するべきではなく、とりわけニュース・報道番組については、その社会的影響力の大きさを考慮したうえで、番組自体の在り方についてよく考えなければならない問題であるといえるのではないでしょうか。

平 勇輝(たいらゆうき)・ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校法学部犯罪社会学部所属、ロンドン大学キングス・カレッジ校国際安全保障研究センター非常勤研究員

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