【負けても損がない】京都3区補選での民主党の裏ワザ --- 選挙ドットコム

2016年03月05日 06:00

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宮崎謙介前衆院議員の「不倫辞職」に伴う京都3区の補欠選挙が4月12日に告示されます。宮崎氏が所属していた自民党は擁立を見送り、民主党とおおさか維新の会との一騎打ちとなる見込みです。民主党は現職議員を立候補させるという「裏ワザ」を使い、議席の上積みを目指します。

衆院選挙制度の仕組みを知ると民主党の狙いがわかる

民主党が擁立するのは泉健太衆院議員。
2003年の衆院選から3回連続で京都3区にて当選しましたが、2012年に初めて立候補した宮崎氏にわずか200票差で惜敗。2014年はさらに差を広げられて約5000票差で敗れ、2回連続で「比例復活」していました。

衆議院の選挙制度は当選者が1人の小選挙区と、全国を11のブロックに分けて、それぞれ6~29人の当選者を決める比例代表の組み合わせ。比例代表は各政党の得票数に応じて政党ごとの当選者数を決め、それぞれの政党の名簿順位に従って当選者を決めます。

各政党は比例名簿を作る際に、上位に小選挙区への立候補者を並列で並べるのが慣例。そして小選挙区での当選者を除き、落選者の中から「惜しかった順」、いわゆる「惜敗率」の高かった候補者から順に比例当選者とします。惜敗率とは自分の得票数を当選者の得票数で割った数。自分が3万票で、当選者が5万票だったら60%となります。

例えば2014年の衆院選で、民主党は比例東京ブロックの名簿の1位に小選挙区への立候補者20人を並べました。そのうち小選挙区での当選者は長妻昭久氏1人。比例の当選枠は3人だったので、惜敗率が98%だった長島昭久氏、96%だった松原仁氏、85%だった菅直人元首相が「比例復活」となりました。

菅氏の次に惜敗率が高かったのは選挙時に代表だった海江田万里氏。菅氏とはたった1.3ポイントの差で明暗が分かれました。

比例議員の辞職は”次点繰り上げ”

今回、ポイントとなるのは、議員が亡くなったり、辞職したりした場合の「欠員補充」の方法。衆議院の場合、選挙区の当選者が任期中に死亡したり、辞職したりすると宮崎氏のように補欠選挙で代わりを選びます。

しかし、比例代表の当選者が欠けた場合は欠員が出た政党の名簿に従い、次点だった候補者が「繰り上げ当選」となるのです。

民主党は今回、この規定を活用して、現職議員の泉氏を京都3区の補選に立候補させます。比例選出の泉氏が辞職しても民主党の近畿比例名簿で次点だった北神圭朗氏が繰り上げ当選となるので、民主党としては議席が減らないからです。

泉氏は民主党に強烈な逆風が吹いた2012年の衆院選でも自民党候補に200票差まで迫ったほど、地盤の強い議員。 今回は自民党が擁立を見送ることもあり、補選では善戦が期待できます。見込み通りに勝てばプラス1、負けてもプラスマイナスゼロですから、民主党にとってはとても都合のいい「賭け」なのです。

ちなみに余談ですが、選挙区の欠員補充には例外規定があります。めったに起こることではありませんが、選挙で最多得票の候補者が複数いた場合、つまり複数の候補の獲得票数がまったく同じだった場合は当選者を「くじ」で決めます。この場合だけは、当選者が欠けると、外れくじを引いたもう一人の最多得票者が繰り上げ当選となります。

泉氏は「背水の陣」

民主党にとってはいいことずくめですが、泉氏にとっては難しい選択だったでしょう。補選に出なくても当面の間は現職議員でいられますが、負ければ次に総選挙が行われるまで議員バッジを外さなければならないからです。つまり背水の陣なのです。

ただ、仮に泉氏が補選に立候補しなければ自民党が候補を立てるでしょうから、宮崎氏に代わる「強敵」が誕生してしまいます。その対抗馬として民主党が別の候補を立てることになれば、自分が次回の衆院選で京都3区から立候補できなくなるかもしれません。

泉氏にとっても今回の補選は「出るしかなかった」といえます。

注目すべきは現在、公募で候補者を選定しているというおおさか維新の会です。民主党と合流する維新の党との分裂後、初めての国政選挙。同じく新党として初めて国政選挙に臨む民維・新党の泉氏とどんな戦いを繰り広げるのか。

日本政治の先行きを占ううえでも、注目の選挙となりそうです。

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yamamoto山本洋一:元日本経済新聞記者
1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。
ブログ:http://ameblo.jp/yzyoichi/


編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2016年3月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。


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