FRBの利上げペースは緩やかに --- 久保田 博幸

2016年03月18日 11:00

3月16日のFOMCでは、政策金利であるところのフェデラルファンド金利の誘導目標を年0.25~0.50%で据え置くことを賛成多数で決定した。投票メンバー10人のうち9人が現状維持に賛成したが、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は反対し、0.25%の利上げを提案した。

会合後に公表された声明文では、「世界経済と金融動向は引き続きリスクをもたらす」とし、イエレン議長は記者会見で「海外経済への不安感が金融市場の動揺につながっている」との懸念を示した。

ただし、米国景気については「失業率が4.9%に下がるなどほぼ完全雇用の状態にあり、米経済は拡大を続けるとみている」とし、物価上昇率も「エネルギーと食品を除いたベースでみれば上昇した」と述べていた。

昨日発表された2月の米消費者物価指数はエネルギー価格の低下から前月から0.2%低下した。しかし、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比では2.3%の上昇となった。この上昇率は2012年5月以来の高い水準となったようである。

FRBによる米国の景気や物価に対する見通しには大きな変化はなかったものの、中国などの経済動向や金融市場での年初からのリスク回避の動きなどから、FOMCの年内利上げに関する見方にはやや変化が生じた。

FOMCメンバーが示した四半期予測によると、2016年末時点のFF金利誘導目標は中央値で0.875%となっており、年内2回程度の利上げを示唆した。昨年12月時点の予測では4回程度の利上げが示唆されていた。

この四半期予測通りに金融政策が実施されるわけではないものの、これによって金融市場での利上げ予想に近づいたとも言える。年初のリスク回避の動きもあったが、それ以前に年4回の利上げはさすがに無理ではないかとの認識も市場では強かった。私も2006年の日銀のゼロ金利解除後の利上げペースなどからみても、半年に1回できるかどうかとみていた。

ただし、これにより年内利上げそのものが後退したわけではなく、あくまでも市場のコンセンサスに近い緩やかな利上げが実施されるであろうとの見方から、これを市場は好感した。

FRBはこのようにペースはさておき、正常化への歩みは止めていない。世界経済は現在、決して危機的な状況にあるわけではない。それにも変わらず危機的な状況にあったときよりもさらに踏み込んだ金融緩和政策を行っている中央銀行が存在しているのはどうしてなのだろうか。

顔写真201011
久保田博幸(くぼた ひろゆき)
1958年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒。
証券会社の債券部で14年間、国債を中心とする債券ディーリング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。現在、金融アナリストとしてQUICKなどにコラムを配信している。また、「牛さん熊さんの本日の債券」というメルマガを配信中。2015年まぐまぐ大賞で資産運用部門第2位を受賞。日本アナリスト協会検定会員。

主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」すばる舎、「短期金融市場の基本がよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年3月18日の記事を転載させていただきました。転載を快諾くだいました久保田氏に心より御礼いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

 

 

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