ブリュッセルの空港と地下鉄で爆発、テロの脅威再び --- 安田 佐和子

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ベルギーの首都ブリュッセルは、欧州連合(EU)の本部だけでなく北大西洋条約機構(NATO)の拠点を構える。米国の通商代表部の事務所が置かれるように、古くから地の利を活かし交通と交易の中継地点として栄え続けた。小パリと呼ばれるほど街並みは荘厳にして優美であり、市街は世界遺産にも登録されている。

そのブリュッセルで22日現地時間午後8時頃、2件の同時多発テロ事件が発生。ブリュッセル北東のザベンテム空港出発ロビーで爆発が起こり、まもなくしてEU本部にほど近いマールベーク駅でも続いた。空港での爆発は、自爆テロによるものだったという。BBCによると空港で少なくとも13人が死亡し35人が負傷、マールベーク駅では15人が死亡し55人が負傷したとされている。

欧州株市場は、下落で反応。独DAXは一時0.2%安、仏CACは一時0.6%安、英FTSEは一時0.5%安を示した。米株先物も売りで反応し、ダウ先物は一時39ポイント安を迎えた。ただし、その後はプラス圏へ転じるなど方向感に乏しい。

米国ではパリ同時多発テロ事件後に支持率を伸ばしたトランプ候補が早速、フォックス・ニュースに出演し「私なら、何が起こったか判明するまで国境を閉鎖する」と発言。米国には不法移民があまりにも多く存在すると語り、「誰を入国させるか大いに用心深くあらねばならない」と述べた。

地政学的リスクなどを専門に扱うユーラシア・グループの創立者、イアン・ブレマー氏は「来週も今回の事件が話題に上がれば、私は驚きを禁じ得ないだろう」とのコメントを寄せる。アメリカ人は、こうした不測の事態に「慣れている」からというのが、同氏の意見だ。

パリ同時多発テロ事件の唯一とされる生存実行犯と思しき容疑者が18日に逮捕された後なだけに、欧州当局が厳戒態勢を敷く可能性が高まる。

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(出所:Le Monde

22日の夜、事件を受けフランスのエッフェル塔はベルギー国旗の色をあしらう予定だ。

(カバー写真:Luc Mercelis/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年3月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。