マクドナルドにみる日本人論

2016年03月29日 10:44

日経電子版に「縮むマック、晴れぬ視界、売上高はピークの7割に」という記事があります。記事の内容に新味はないのですが、とどのつまり、マックはいまだに改善傾向がない、ということを言いたいのだろうと思います。当初、マックの不振は偽装チキンとしていましたが、時間経過に対していつまでも回復しない状況に違う理由を探し始めました。挙句の果てにアメリカ本体も不振だからマックそのものの衰退説というのもありました。

マック衰退説は否定しませんが、日本のマックの不振ぶりは他国と比べ際立っており、アメリカ本社も日本市場に期待を寄せていないランク付けとなっています。では、日本のハンバーガー市場が不振なのかいえばシェイクシャックやカールスジュニアといった日本でのニューブランドのみならず、モスやバーガーキングなどにも客が押し寄せるという状況をみるにあたり、マック一人負けは鮮明であります。

私はマックが日本人に植え付けたイメージを変革することはなかなか困難だとみています。手を変え品を変え、新メニューを生み出していますが、基本は同じでどうしてもここのハンバーガーではなくてはいけないとは思えません。むしろ、たまに食べるハンバーガーならもうちょっとおいしそうなものを、と思う人もいるでしょう。ハンバーガーフリークの人はバンズやソース、肉の焼き方などにこだわりを持つでしょう。

日本人は基本的に新しいものが好きです。「新製品」という言葉には異様に食いつきがよく、その中身が満足できなければ二度と振り向かないというシビアさを持ち合わせています。コンビニの商品が早ければ一週間で変わる、日本で売り出される新製品の9割以上は陽の目をみないのも同じ理由です。商店街に新しい店が出来れば必ず覗いてみるし、駅前に新しいレストランがあればどんな店だろうと思わず、立ち止まる人もいるかもしれません。

広告やウェブサイト、あるいは新聞でも雑誌でも時折リニューアルをするのは同じ見栄えだと飽きられるからです。ではなぜ日本人はこの「刷新」が好きなのか、ですが、一つには四季をもつ日本の風土なのではないかと思います。春夏秋冬折々に着るものが変わり、節目が変わり、新たなるスタートを切ります。この切り替わりが日本人の本質としてあるために「いつまでたっても冬着」というのは受け入れられないのでしょう。

カナダのスーパーマーケットに行けば20年前と同じ商品が同じ場所に鎮座しています。むしろ同じであることに意義があって、違うものになれば客は店員に食って掛かるでしょう。「これはあの商品と同じ味がするのか」と。欧州もそうだと思うのですが、かなりコンサバな考え方で世間一般が認めたものではないとその陳列棚に並ぶことが許されないのであります。

カナダのラジオ番組からはフラッシュダンスのテーマソングやプリンスの曲がいまだに頻繁に聴こえてきます。別にオールディーズの番組ではなく、普通に「あの時の名曲」として流れるのでしょう。良いものは素直にその価値を認める発想だと思います。よって一度エスタブリッシュしたブランドネームはそう簡単に崩れないとも言えるのです。

日本はその点、真逆です。常に新しいもの、新しいスタイルを提供し、顧客はそれに盛り上がり、興奮しますが、時間と共に衰退していきます。供給側は先駆者が常に勝利し、二番煎じでまずまず、三番手以下は熾烈な価格競争に挑み、挙句の果てに淘汰されるというパタンが繰り返されます。

その点、マクドナルドの賞味期限は長かったと思います。その間、数々のライバルが出現しました。ファーストキッチンやロッテリアなどかつてもハンバーガー競争がありましたが、どれも同じような品揃え、同様の価格構成でユニークなアイディアを打ち出したところはありませんでした。これがマックの長期君臨を支えた背景ではないでしょうか?

日本人は移り気です。それは世間の風が右へ左に吹けば流されます。その中でコアなファンがその商品を支え、陽の目を見ることもあります。アイスのガリガリ君は年5億本以上も売るお化け商品に成長しましたが、なぜそこまで伸びたか、といえばコアなファンの支えのもと、売り手が手を変え品を替えこれでもか、と責めてくるからではないでしょうか?移り気な日本人の先を行くわけです。そこには驚きがあります。コーンポタージュ味、クリームシチュー味、ナポリタン味の三部作は有名ですが、それは売り手が買い手の想像力と期待を超えているところに意味があるのです。

そういう意味では日本のビジネスは欧米のスタンスと全く違います。同じ商品を20年置いていても売れる国とは違います。カップヌードルでも確実に進化しているのです。味により麺とスープの絡みを考え、麺の太さが全部違うという芸当は涙が出るほど日本的であります。

マックがなぜ、不振から抜け出せないのか、日本人の持つ特性、そしてカナダ人のカサノバさんの日本人研究が十分ではないことにその一つの理由は隠されているのではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月29日付より

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