価値観の多様性を認めない教育委員会

2016年03月30日 13:04

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「出産の義務化」発言で持論を展開した大阪市立茨田北中学校の校長・寺井寿男氏が再任を辞退し退職することになりました。また報道以降、市教育委員会が検討されていた懲戒処分も保留になったようです。

●問題の経緯について

まず、生徒や地域に迷惑がかかったことや公務に影響が出てきたこと。教育的配慮にかけるとして市教育委員会が懲戒処分を検討してきたこと。寺井校長は来年度も校長としての勤務を希望していたものの、学校や市教育委員会に迷惑をかけたのでその責任を取りたいとして辞退届を提出したこと。これが今回の流れになります。

以下が問題となった発言の要旨です。全文を読むと報道とは異なった印象を持ちます。

「今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げて良く聴いてください。女性にとって最も大切なことは、こどもを二人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。

なぜなら、こどもが生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです。しかも、女性しか、こどもを産むことができません。男性には不可能なことです。

『女性が、こどもを二人以上産み、育て上げると、無料で国立大学の望む学部を能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたら良い』と言った人がいますが、私も賛成です。子育てのあと、大学で学び医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けば良いのです。子育ては、それ程価値のあることなのです。

もし、体の具合で、こどもに恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれないこどもを里親になって育てることはできます。

次に男子の人も特に良く聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。

人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。

子育てをしたら、それで終わりではありません。その後、勉強をいつでも再開できるよう、中学生の間にしっかり勉強しておくことです。少子化を防ぐことは、日本の未来を左右します。

やっぱり結論は、『今しっかり勉強しなさい』ということになります。以上です。」

●なにが問題なのか

出産を義務として公人である校長が切り出すことには配慮が欠けた点があることは否定できません。「子供を産む産まない」というデリケートな問題について持論を展開したことは拙速との意見もあります。否定派の意見は「女性に対する侮辱である」というものが多いのでしょう。肯定派は「少子化に対する問題提起をして何が悪いのか」というものでしょう。しかしこの論点は非常に重要です。少子化は日本の将来にとって大きな問題だからです。

個人的な「価値観の押しつけ」との批判もあります。当初、寺井校長は「出産が義務と言ったのではない。子供たちに、親や保護者、社会への恩返しを考えないといけないという観点で話した」(産経新聞)と発言の意図や趣旨を説明したとあります。発言の内容が報道されると、発言要旨を同校のホームページで12日朝から公開していましたが、市教育委員会からの指示により13日に取り下げています。

しかし「少子化に対する理解を深めて子供を産んで育てることの大切さを伝えること」は間違ってはいないように思います。言葉尻を捉えて報道したり、言葉狩りのような状態に陥ると子供を産むことや育てることの議論ができなくなります。市教育委員会はもっと大局的に考えて価値観の多様性を認許することも必要ではないかと思います。私は、生徒に対して問題提起をしたと考えれば充分に理解できる内容だと考えています。

尾藤克之
コラムニスト
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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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