ローラーコースター相場にサヨナラするのは早計

2016年04月03日 10:00

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バロンズ誌、今週のカバーで共和党の米大統領正式候補にオハイオ州知事のジョン・ケーシック氏を推します。同候補の政策と経験はマーケット、米経済にとって有益と指摘。ケーシック候補は財政保守派でオハイオ州の財政赤字を黒字に転換させた実績を持ち、民主党のクリントン候補との対決では世論調査でリードする強さを示します。キャピタルゲイン税率を15%へ引き下げるよう求め、トランプ候補が推奨する長期キャピタルゲイン・配当収入税の最高税率20%より下げ幅は大きい(現行のキャピタルゲイン税率は最大で39.6%)。環太平洋パートナーシップ(TPP)を含む自由貿易にも支持を表明し、トランプ候補やクルーズ候補と一線を引きます。共和党の指導部は撤退を呼びかけるものの、バロンズ誌はケーシック候補に肩入れせざるを得ないようです。詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はマーケット動向に焦点を当てます。抄訳は、以下の通り。

ローラーコースターは、同じ地点で乗り降りする。しかし乗った後に気持ちが悪くなり、吐き気を催す人もいるだろう。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、年初からの急落を経て世界の株式相場は0.4%上昇した。米株に至っては10%以上も落ち込み調整相場に突入した後、1%高に転じている。欧州株の2.4%安、英国の2.3%安、日本の6.4%安と比較すれば、御の字だろう。一方でエマージング株が5.8%高を遂げたのは、驚きに値する。1月にエコノミスト誌が”ブラジルの衰退(Brazil’s Fall)”と題したルーセフ大統領の俯いた顔を拍子に掲げたことを振り返れば、わずか3ヵ月でこの違いは目覚ましい。

こちらの表紙、ブラジルの政治状況だけをみれば今でも通用しますけどね。
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(カバー写真:Economist)

原油先物が26ドル台で底打ちし、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加緩和を打ち出したからだろうか?

金利低下が支えになったことは、言うまでもない。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、講演で金利低下が「安定装置として機能した」と発言したものだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)が3月に年内利上げ示唆を4回から2回に縮小したおかげで、年内の利上げ織り込み度は1回が61.7%に及ぶ状況。”より長い低金利(low for longer)”の観測が波及するにつれ、市場関係者に安心感を与え金利低下を促したに違いない。

米3月雇用統計の好結果にも、踊らされるなかれ。MFRのジョシュ・シャピロ米主席エコノミストいわく「企業業績が減少し利ざやが低下するなかで、企業は積極的なコスト削減に取り組まなければならず、年後半から2017年にかけて雇用統計の非農業部門就労者数(NFP)が鈍化し、個人消費の伸びも減速していく」。既に成長シナリオは低迷の兆しをみせ、アトランタ地区連銀は1−3月期国内総生産(GDP)の予想値を0.7%増にとどめ、JPモルガンも1.2%増とアトランタ地区連銀の試算を上回るものの2014年および2015年の成長率2.4%増以下に過ぎない。ニューヨーク州やカリフォルニア州が前週に可決したように、最低賃金を15ドルへ引き上げれば利ざやを一段と圧迫させるだろう。高過ぎる人件費により作業の機械化が進めば生産性が上昇する可能性を残すものの、予想外の影響をもたしかねない。

1−3月期に米株相場が大荒れし金利が低水準で推移するなか、債券と同じようなタイプの銘柄が好まれるのは当然の成り行きだろう。モーニングスターによると、”公益事業セレクト セクター SPDR ファンド(XLU)は1−3月期に15.5%高、 ”バンガード・米国電気通信サービス・セクターETF(VOX)” は11.1%高、”生活必需品セレクト・セクター SPDR ファンド (XLP)” は5.6%高を遂げた。

配当利回りが期待できるディフェンシブ銘柄への投資家のご執心は、乱高下するマーケットへの対策なだけでなく視界不明瞭な今後にも照らし合わせたものと言える。ファクトセットによると、S&P500を構成する企業のうち94社が減益を予想しており、過去最悪だった2013年10−12月期に次ぐ水準だ。エネルギー企業が足を引っ張っているわけではない。足元ではテクノロジー関連の25社業績に黄信号を灯し、裁量消費財が18社、ヘルスケア関連が17社と続く。

米株市場にとって、4月は最も残酷な月ではない。「4月に雨が降り、5月に花咲く(April Showers, May Flowers)」の言葉とは逆に4月は米株が花開く月で、ベスポーク・インベストメント・グループによると4月の平均リターンは2.09%高、勝率は66%となる。さらに過去20年間ではリターンは2.6%高へ伸び、勝率は75%に及ぶ。強いリターンを誇るからこそ、「5月に売り逃げろ(Sell in May and Go Away)」という投資格言が生きると言えよう。

ローラーコースター相場が戻ってこないと判断するのは、早計だ。6月23日に欧州連合(EU)離脱の可否を問う国民投票を予定し、米大統領選は極めて大きな不透明性を投げかける。次なる相場の乱高下に、留意しておきたい。

米株市場のコラム、ストリートワイズは新規株式公開(IPO)の動向を考察する。抄訳は、以下の通り。

年初から市場が急落した影響から、1−3月期のIPO総額は7億ドルの8件にとどまった。リーマン・ショックの衝撃が冷めやらぬ2009年1−3月期以来の水準に落ち込んでいる。2015年1−3月期に34社で55億ドル、2014年7−9月期に376億ドルのピークを打った当時と雲泥の差だ。しかもルネッサンスによると1−3月期のIPOはヘルスケア関連が占め、買い手は関係者によるところが大きい。平均の関係者取得率は40%と、2015年平均の22%を大幅に上回った。

こうした状況は、相場が好転すれば変化していく。すでに2月半ば、食品関連のU.S.フーズ・ホールディングスが申請を終え調達額は10億ドルを見込む。不動産事業を手掛けるMGMグロース・プロパティーズやサイバーセキュリティ企業セキュアワークスも追随する見通しで、こうしたIPOをウォールストリートがいかに消化するかがトレンド形成に影響しよう。

——今回のアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートも、慎重姿勢を維持しています。米3月雇用統計の堅調ぶりは目を見張るものがありますが、企業業績が2期連続で落ち込みプロフィット・リセッションを示すだけに、今後も20万人台を謳歌するとは考えづらい。サービス産業での雇用が顕著であるものの、雇用を促進してきた食品サービスに鈍化しており、雇用の先行指標である派遣も2ヵ月連続での減少を経て小幅反発する程度です。桜の花のように、満開の後で散っていくのではないでしょうか。おかげでFedが利上げを先送りすれば米株には追い風になるでしょうが、当サイトで以前から指摘しますように向かい風要因が控えるだけに、楽観は禁物です。

(カバー写真:Anthony Viviano/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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