決算 悲喜交交

新年度入りと共に注目されるのが主要企業の2016年3月の決算であります。これから6月下旬の株主総会に向け、この決算を通して様々なドラマが生まれることもあります。

2015年度は第3四半期までは円安効果があり、経常利益の増幅幅が大きくなった会社に自動車などの輸出関連企業が並びます。特に輸出比率の高い富士重工やマツダには恩恵があったと思います。が、第4四半期(1月-3月)の為替は一気に円高に振れたことで影響が出てくるものと思われます。多くの企業はかなり先まで為替予約をしていますから急激には影響を受けません。但し、2016年以降の事業見通しについては為替予想の見直しを余儀なくさせられることから「目標の下方修正」となり、2015年と比べれば企業業績見通しの見栄えは落ちるかもしれません。

その中でプラスサイドのヒーローはソニーでしょうか?長年のリストラが完了し、業績は上振れしています。平井社長も一時期は相当叩かれていましたが、脱却となりそうです。一方、パナソニックの津賀社長は「必ずしも成長を目指すのがすべてではない。成長戦略は続けるが適切な目標に変更した」として、18年までの10兆円の売り上げ目標を撤回し、その代り20年に利益を15年比1.5倍にすると発表しました。想像ですが、売上至上主義への反省は東芝の状況を目の当たりにしたからでしょうか?もっとも、私に言わせれば利益を増やすのも立派な成長だと思いますが。

マイナスサイドの雄は東芝、シャープになると思います。こう並べると電機業界の悲喜交交とも言えそうですが、案外下方に振れて苦戦しているのが、新興国経済の減速で新日鉄住金やJFEといった鉄鋼、また、資源価格の大幅下落で商社はボロボロの決算が並びます。スプリント関連で苦しむソフトバンクも決算対策が必要かもしれません。

商社などに見られる決算の特徴は過去の負の遺産の吐き出しで昨年も膿を出したのに、実はもっとあったということか、この一年の更なる資源価格の下落で新たなる膿が出たということでしょう。多くのサプライズ特損計上の発表はライバル社との無理な競争、また、シェール事業のようにまだ不安定な基盤の事業に突っ込み過ぎた、とも言い替えられます。

5年前はよかったけれど今はダメ、といったビジネスはゴロゴロしています。私が以前からアセットライトにすべき、と申し上げているのは長期では投資回収が出来ないケースが多くなっている証であります。

今後、気を付けなくてはいけないサプライズ特損の可能性としては近年、海外企業を積極的に買収したようなところでしょう。日本企業による海外企業の買収は案外、上手くいかないところが多いものです。日本電産の永守社長のように自分が率先して買収企業に入り込んでいくぐらいの「同体化」をしないとなかなか成功しないものです。あるいはJT(日本たばこ)のようにマネージメントが完全に国際化している企業も比較的安泰です。一方、近年の失敗例としてはタケダがありますが、個人的にはソフトバンクもスプリントではまだ相当苦労する気がしています。

蛇足ですが、このところの日本の株式市場をみると東証一部上場銘柄の株価は冴えない展開が続きますが、ジャスダックなど新興市場の指標はぐんぐん上昇しています。東証一部には海外からのマネーが激しく出入りしますが、新興市場は個人投資家が主導性を握っています。面白いビジネスを展開している企業は新興企業に多く、私も毎日のようにへぇ、と驚くような数々のユニークさに「企業が軽いからこそできる技」なのだろうと思っています。

以前、大企業の時代から新興企業の時代へ、ということをこのブログで書きましたが、フットワークと軽さは今の時代だからこそ、重視すべきだと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月4日付より