トランプ候補、代議員数の過半数獲得に黄信号

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ウィスコンシン州の予備選が実施され、ご覧の結果となりました。

▽共和党(開票率99%)

1位 クルーズ候補 48.3% 獲得代議員数 33(合計 740)
2位 トランプ候補 35.1% 獲得代議員数 3(合計 514)
3位 ケーシック候補 14.0%  獲得代議員数 0(合計 143)

▽民主党(開票率99%)

1位 サンダース候補 56.5% 獲得代議員数 45(合計 1056)
2位 クリントン候補 43.2% 獲得代議員数 31(合計 1743)
(※出所:RealClearPolitics)

どちらの党も、獲得代議員数トップの候補が敗北しています。特にドナルド・トランプ候補には厳しい一撃となり、これで7月18~21日開催の党大会で正式候補に躍り出るために必要な代議員数1237の確保が遠ざかりました。党大会で、ブローカー・コンベンションが開催される気運が高まっています。

トランプ外しを狙い結束した主流派の作戦が、ようやく奏功した格好です。ウィスコンシン州知事のスコット・ウォーカー氏は米大統領選に立候補したものの、「主流派が団結するため」という大義名分の下に早々の撤退を発表し、予備選前にはクルーズ候補に支持表明していました。そのほか、同じく大統領選に出馬しながら撤退を余儀なくされたリンゼー・グラム米上院議員も死ぬほど嫌いなクルーズ候補のほか、元フロリダ州知事で戦線離脱を余儀なくされたジェブ・ブッシュ氏も支持表明したものです。

ブローカー・コンベンションとは、いわば談合のようなもの。細かい州ごとのルールは別として予備選や党員集会の結果を反映した第1回目の投票で獲得代議員数が過半数に到達する候補者がいなければ、予備選および党員集会の結果に拘束されず投票する仕組みに移ります。過半数に達する候補者が現れるまで協議を経て投票を繰り返していき、共和党内で最後にブローカー・コンベンションが行われた1948年には投票が3回行われました。

すでに共和党全国委員会(RNC)傘下の規定委員会、カーリー・ホーランド委員が指摘する通り、党大会前にブローカー・コンベンションなどをめぐる規則が抜本的に変更となる「ウルトラC」も否定できません。拘束力を持たない特別代議員の一人でもある同委員は、規則変更の一部として各候補者に「1名でも代議員の支持があった場合、党大会で候補者になれる」案を書簡で提出済みで、これは8州の勝利が必要な2012年版規定と大きく異なります。そうなればトランプ候補、クルーズ候補、ケーシック候補以外の候補擁立が可能となり、ジョン・ベイナー米元下院議長が推すポール・ライアン下院議長が彗星のごとく現れ正式候補の座をさらっていくミラクルもあり得るというものです。どんな奇策を打ち出すのか、共和党予備選から目が離せません。

トランプ候補は共和党以外から出馬しないと誓約したものの、正式候補に指名されなければ独立派として大統領選を戦う意思を表明すると考えられます。ただ、勝算は低い。党大会まで決断を保留した場合、本選の要を握る州で独立候補として登録する締切に間に合わなくなってしまうためです。

こちらをご覧下さい。

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(作成:My Big Apple NY)

フロリダ州やネバダ州といった共和党、民主党の間で勝利が変動するスイング・ステーツの4州、及び共和党の大票田であるテキサス州にて本選で戦う権利を失う見通しとなります。トランプ大統領誕生の可能性は、かなり厳しいと言わざるを得ません。

主流派による反トランプ統一戦線には、何が何でもトランプ米大統領の誕生を阻止するというミッションが見え隠れします。欧州中央銀行のドラギ総裁はユーロ存続のため「なんでもやる(whatever it takes)」態度を表明しましたが、共和党エスタブリッシュメントは団結によって意思表示したと言えるでしょう。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。