【映画評】モヒカン故郷に帰る

2016年04月11日 11:30
モヒカン故郷に帰る 公開記念DVD

モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン・永吉は、恋人の由佳が妊娠したのを機に結婚を決め、その報告のために故郷である広島県の瀬戸内海に浮かぶ戸鼻島へ7年ぶりに帰郷する。広島県出身のミュージシャン・矢沢永吉をこよなく愛する頑固おやじの父・治、筋金入りの広島カープファンの母・春子、たまたま帰省していた弟・浩二の家族全員が久しぶりに顔を揃える。家族団らんかと思いきや、のらりくらりする永吉の態度に父・治は怒りを爆発、いつもの親子喧嘩が始まる。それでも永吉と由佳の結婚を祝う宴が盛大に祝われた。しかしその夜、治が倒れてしまう。検査の結果、ガンが見つかり、一家に動揺が走るが…。

売れないバンドマンの息子が余命わずかの父親のためにユルく奮闘するヒューマンドラマ「モヒカン故郷に帰る」。タイトルは、日本初のカラー映画で木下惠介監督の「カルメン故郷に帰る」のパロディだろう。だが無論、本作はまったく関係ないので念のため。この映画、役者のアンサンブルが魅力的だ。モヒカン頭でデスメタルを歌う主人公は、よく言えば朴訥だが、いつものらりくらりの冴えない性格。故郷の島(戸鼻島は架空の島らしい)で待ち構えるのは、熱くなりやすい性格の父と、達観したかのような細目の表情が印象的な母。こんな家族に、おバカだが気のいい恋人が加わり、とぼけた会話でユルい笑いを誘う。それぞれがちょっとずつズレた関係のまま、家族として成り立っているところがリアルだ。

後半はいわゆる難病ものになるのだが、「横道世之介」などの沖田修一監督は、決してメソメソしたお涙頂戴物語にはしない。主人公は、余命わずかな父のために、大量のピザを注文したり矢沢永吉になりきったりと、ひょうひょうと、でも必死に奮闘。末期ガンという超シリアスな状況が、不器用ながらも一生懸命に生きる家族によって浄化されていくような錯覚を覚えた。クライマックスは、まさに盆と正月が一度にきたかのよう。柄本明の突き抜けた名演と、穏やかな瀬戸内の島の空気が、涙と笑いを同時に届けてくれる。
【65点】
(原題「モヒカン故郷に帰る」)
(日本/沖田修一/松田龍平、柄本明、前田敦子、他)
(家族愛度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年4月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑