【映画評】グランドフィナーレ

2016年04月17日 16:24

スイス・アルプスの高級リゾートホテル。80歳を迎え現役を引退した世界的な指揮者のフレッドは、ここで穏やかな隠居生活を送っている。ホテルには、フレッドの親友の映画監督ミックをはじめ、ハリウッドスターやセレブが滞在しているが、皆、それぞれに心に悩みを抱えていた。そんな中、フレッドのもとに、英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜかフレッドは頑なに断り続ける。その理由は、娘のレナにも隠している、妻とのある秘密にあった。だが、ホテルの滞在客との交流の中で、次第にフレッドの心に変化が訪れる…。

フェリーニの系譜に連なる映画作家で、21世紀の映像魔術師と呼ばれるパオロ・ソレンティーノ監督の新作「グランドフィナーレ」は、全てを手に入れ引退した天才指揮者の心の再生を描く人間ドラマだ。スイスの山間にある豪華で優雅なリゾートホテルでのセレブたちの日常は、それだけで浮世離れしていて幻想的である。滞在するセレブたちは、過去に栄光を極めたもばかり。同時にその栄光に苦しめられている。大ヒットした映画のイメージに縛られるハリウッドスター、カリスマ的サッカー選手、世界一の美女…。一方、フレッドは絶頂期の自分の作品「シンプル・ソング」を封印しているが、それには妻にかかわるある秘密が。これがあまりに切ない。

名優マイケル・ケインをはじめ、登場する役者は皆、演技派ばかりだが、中でも出演時間は短いものの、本人と重なるかのような大女優を演じるジェーン・フォンダの演技は圧巻だ。中庭で催されるイベントの優美さや、全員が同じポーズをとる前衛的な構図など、完成度の高い映像の連打にしびれるが、とりわけアルプスの緑あふれる大自然の中で、フレッドが動物たちを前に指揮をする場面の美しさに思わず心を奪われた。老いをみつめながら、なおも人生を肯定する稀有な佳作である。

【70点】
(原題「YOUTH」)
(伊・仏・スイス・英/パオロ・ソレンティーノ監督/マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、他)
(映像美度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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