バロンズ誌:マイナス金利で、投資の世界に変化

2016年04月18日 06:00

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熊本を中心に発生した地震での被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

バロンズ誌、今週はカバーに米国の2大自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)とフォード(F)を取り上げます。新車販売台数に失速の兆しが見えるものの、両社の株価は2017年にかけ25%の上昇余地があると指摘。GMの配当利回りが4.9%、フォードが4.6%であるだけでなく、株価収益率(PER)でもフォードが6.6%、GMも5.6倍に過ぎず、S&P500構成銘柄の17倍を大幅に下回り割安だとも説きます。株価自体もGMは再上場した当時の33ドルを下回る水準で、フォードも13ドルと3年前とほぼ変わらず。中国をはじめ自動車需要の低下がみられるものの、株価は上方向へ加速していくと予想します。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今回のテーマはマイナス金利です。抄訳は、以下の通り。

超低金利政策がもたらす、長期にわたる挑戦—Ultralow Interest Rates Pose Long-Term Challenge

ポール・サイモンが30年前に名曲「The Boy In The Bubble」を書いた以前から、奇跡と不可思議に満ちた日々が存在した。現代はスーパーコンピューターをポケットに忍ばせ、コミュニケーションはもちろんデータ管理やエンターテイメントを手のひらで楽しめる。投資の世界での奇跡は、マイナス金利だろう。

マイナス金利は世界中を席巻し、7兆ドルに及ぶ国債利回りはゼロ以下で推移している。そうした国債を保有するには金利を支払わねばならず、預金金利すら預金者が負担を強いられる有様だ。さらに驚くべきことに、住宅ローン保有者は銀行から金利を受け取る立場にある。ストラテガス・リサーチ・パートナーズのジェイソン・トレナート氏は、リスク・フリー資産保有にあたり金利を支払う意味を問う。マイナス金利の国債を満期まで保有すれば、損失を被るのか確実だ。

米国ではマイナス金利を採用していないが、20年にわたってゼロ金利(現在はマイナス金利)を採用してきた日本における老後生活の例は参考に値する。極端な例とはいえ貯金が底をついた老人が刑務所に入り食事と医療ケアを得るため、万引きに走るケースは象徴的だ。

バロンズ誌の幸運な読者には、そのような運命とは無縁だろう。しかし、過去のリターンに安穏としてはいられない。伝統的なポートフォリオは債券保有率60%、株式保有率40%とされているものの、インサイト・インベストメント・マネジメントの債券担当ヘッド、エイドリアン・グレイ氏によればリターンは5〜6%にとどまり多くの公的年金が掲げる7〜8%に遠く及ばない状況だ。

金利正常化は利回りの上昇を促しキャッシュと国債のスプレッドを拡大させ、株式市場には向かい風要因だ。グランサム・メイヨー・ヴァン・オッタルー(GMO)の7年見通しによると大型株のリターンは実質ベースで年間1.2%のマイナスとなり、割高による点が大きい。債券にいたっては1.7%のマイナスで、米国のインフレ連動債では0.2%のマイナス、キャッシュでは0.3%のマイナスが予想されている。

より高いリターンを求めるなら、エマージング諸国の株式や債券をポートフォリオを組み込むべきだろう。GMOは前者につき年間4.6%、後者では2.4%のリターンを見込む。それでも、過去に果たした米株の年間リターン6.5%には遠く及ばない。これが、投資世界の現状だ。

超低金利は、世界的なディスインフレ圧力を加えている。同時に、鈍い名目成長率が企業の利ざやを縮小させ、企業の価格競争力は低下し賃上げ需要に対処せねばならない。これまで最高経営責任者(CEO)は株主資本利益率(ROE)を(筆者注:自社株買いによって)拡大させることに専念してきたが、市場はこうしたカラクリに気づきレバレッジが低く(筆者注:社債発行で自社株買い資金を賄って来たため)、利ざやの高い銘柄に注力し始めている。

ストラテガスのトレナート氏は、マイナス金利政策を振り返った時に「誤り」として認識されると見込む。また、「一部のセクターの判断が不自然に引き上げられ、余計なリスクを与える」可能性にも注目。実際、生活必需品セクターの株価収益率(PER)は21倍で、金融セクターは簿価からみれば割安の水準で取引されている状況だ。PNCアセット・マネジメントのトム・メルチャー最高投資責任者(CIO)は、資産1億ドルの超富裕層は1000万ドルを一切投資に振り向けないリスクを懸念する。

富裕層の資産運用も、マイナス金利導入で変化の兆し?
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(出所:CarSpotter/Flickr)

超富裕層でなければ、超低金利は低いリターンを意味するだけでなく、長年にわたって仕事せねばならず、引退が送れ、長寿化に合わせたライフスタイルを測定する必要に迫られる。奇跡を待つより、欲することを諦める禅の精神が求められよう。

4月26〜27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ織り込み度はわずか2%とはいえ、利上げ織り込み度の0%より高い。12月13〜14日開催のFOMCで漸く利上げ織り込み度は50%であり、地方債のクローズ型ファンドや不動産投資信託(REIT)が最高値を更新していることと無関係ではないだろう。

S&P500は9週間で7回目の陽線引けを迎え、2015年5月に達成した過去最高値から2.4%に迫る。ベスポーク・インベストメント・グループは、1日当たりの上昇銘柄マイナス下落銘柄が2009年3月10日から開始した強気相場サイクルで最高を更新したと指摘。S&P500が指数以上に力強いことが伺えるという。

別の観点からみれば、強気相場の失速が近い可能性を示す。過去最高値を更新する過程で、6月14〜15日にはFOMCを予定し利上げの可能性が取り沙汰されている。2006年6月以来の利上げを断行した2015年12月、株価は過去最高値近くで推移していたが、年明けに株価は急落の憂き目に遭ってしまった

地政学的リスクも、忘れてはならない。6月23日には欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票が英国で実施され、それ以前の同月7日にはカリフォルニア州で共和党大統領候補予備選が開催される。政治的リスクがFedにどのような影響を与えるかは不透明ながら、米株に与えるリスクは想像に難くない。

マーケットに特化するコラム、ストリートワイズは租税回避に焦点を当てます。抄訳は、以下の通り。

ファイザーとアラガン以後、M&A審査は厳格化—After Pfizer and Allergan, Mergers Get Trickier

かつて米当局による合併・買収(M&A)の審査は、厳しくはなかった。株価の上昇を促し、マーケットそのものを押し上げたものだ。しかし、製薬大手ファイザー(PFE)が租税回避を狙いアイルランドの同業アラガン(AGN)と買収で合意してから、すべてが変わった。米財務省が租税回避最奥作を発表したため、両社のM&Aは破談を余儀なくされ、油田サービス大手ハリバートンとベーカー・ヒューズのM&Aすら、「競争の障害となる」との理由で提訴した。

投資家すら、M&Aに対する見方を変えてきている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、年初の1−3月期に買収する側の企業の株価はラッセル1000ベースで0.8%下落し、2014年の0.4%高から悪化した。理由のひとつは、バリュエーションが挙げられよう。ラッセル1000のPERは17.9倍で、2014年の16.5倍を上回る。金融政策も変化しており、ゆるやかなペースとはいえFedは利上げの方向へ舵を切った。今後のM&Aは以前ほど容易ではなくなる見通しだが、アラスカ航空がバージン・アメリカを買収したようにライバルとの競争力を蓄える上で有益な案件もあり、M&Aの厳格化は悪い話ではないだろう。

——マイナス金利導入をめぐって、昨今の海外メディアは厳しい意見が目立ちます。バロンズ誌と同じくニューズコープ傘下のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は「日本、マイナス金利の実験で四苦八苦(Japan’s Negative-Rate Experiment Is Floundering)」、同マーケットウォッチも「マイナス金利があなたのポケットからお金を取る理由(How negative interest rates take money out of your pocket)」と伝えていました。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙も元金融庁の森信親・長官の言葉を引用し「元アベノミクス支持者、マイナス金利に警告(Former Abenomics backer warns on negative rates)」と題した記事を配信。金融市場ブログのシーキング・アルファも「マイナス金利は全世界および米国の銀行に多大なリスク(Negative Rates Pose Grave Risks To All Global And U.S. Banks)」とするなど、至る所で批判が起こっています。マネーマーケットでシステム上での問題が落ち着き、借入の増加などで景気が刺激されない限り、こうした論調は続くのでしょう。マイナス金利を擁護する国際通貨基金(IMF)が、マイナス金利導入後の世界景気見通しを下方修正するなかでは、形無しですしね。

(カバー写真:IMF/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

 

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