今週の出来事から

岡本 裕明

今週もいろいろありました。その中から経済金融を中心にみていきましょう。

まずは為替です。一時107円台までつけた急激な円高は麻生大臣の発言で一応、その歯止めがかかった形となり、金曜日の欧州では一時109円台まで動いたものの週末の引けは108円ちょうど当たりとなっています。「一体どうなる、この円高」、ですが、日本の専門家の予想がまず当たらないのは日本サイドの尺度で見ているからです。何度も言うようですが、円とドルは規模が違います。子供と横綱が相撲をするようなものですからあくまでもドルの都合を考えた方が大勢では読み込みやすくなります。

では北米ではどう見ているかといえば例えばPIMCOでは2014年からのドル高の終焉を指摘しています。ドルスポット指数のチャートも1月をピークにドル高は終わっており、チャート的に下値を切り下げる展開になっています。また円予測精度首位のジュリアスは目先105円割れ、中期的に80円という数字を出してきています。

イエレン議長は利上げトレンドは継続するものの「ゆっくり」というハト派の姿勢を崩していません。これはインフレ率が回復しないこともありますが、経済の成熟化で金利はかつてのような派手な上下運動はせず、低水準で狭いレンジの動きに留まるという意味合いに捉えています。つまり、アメリカも金融政策については日本化したと考えています。これは経済が一国に留まらず、グローバル化することで一国の経済の影響度が下がり、振れ幅が落ち着いてきたこと、また、バブルとその崩壊を経験し、国民の消費に対する常識観が変わってきたことがあるのではないでしょうか?

為替と絡んで日本の株価も相当頭が痛いところだと思います。週後半でようやく一息ついた気がしますが、大きなポイントは一つ。実は東証マザーズは金曜日も大幅に上がり、昨年来高値をつけているのです。先週あたりにもその点はこのブログで指摘していたと思いますが、個人投資家は外国人投資家の「潮の満ち引き」に影響される東証第一部より値動きが良い新興市場に資金をシフトしているということです。

これは見方を変えれば単に外国人投資家云々ということよりも東証第一部企業の「高齢化現象」が始まったとみたほうがよいでしょう。高度成長期を含め、長年の努力で大きく成長した日本型大企業は節々に老化に伴うクラックが生じています。また大きすぎて方向転換できないケースも出てきています。昨日話題に出したセブンアイHは鈴木氏の退任でその巨艦のかじ取りの行方が正にホットなトピックスになっています。

同じことは期待をかなり裏切ったユニクロ、ファーストリテイリングの決算でも言えるでしょう。柳井会長が不合格と言っていますが、自分の会社に自分で落第点をつけるのはなにか腑に落ちません。ユニクロは今や日本で稼ぐというより海外の規模の方がはるかに大きくなっています。が、その海外に於いてアジアを除き盛り上がらないその理由を早く突き詰めるべきではないでしょうか?NYの巨艦店出店は私は理解できませんでした。白人ファッションとアジア人のファッションは全く違います。感性もサイズからくるデザインも別です。柳井会長もH&Mやザラを意識しすぎた気がします。

最後、社会問題を一つ。バドミントンの二選手の違法カジノ問題はショックでした。桃田選手は現在世界第2位にランクされ、オリンピック金メダルの期待がかかる選手でした。幼少時からバドミントン一筋だった彼を狂わせたのは何だったのでしょうか?

彼の努力によってもたらしたのは突然降ってわいたような収入でありました。推定年収3000万円(TBSの放送より)は一般人ではあり得ない数字だと思いますが、本人にしてみれば常に練習、試合、海外遠征で自由が効かない中、ほんのひと時、お金を使いたい、という欲望にかられたのだろうと思います。

野球選手の賭博問題もありましたが、似たようなものだろうと思います。物質的には満たされています。かつての野球選手はベンツを買うことがステータスでしたが今やそれは当たり前でその次に何に使うのかといえば「ドキドキ、ハラハラ」を求める若い人がいてもおかしくはない気はします。とすればその道に走るか、抑制できるかは倫理観しかなく、個人個人がどこまで強くなれるかだろうと思います。

いろいろ考えさせられる一週間でした。では良い週末を。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月9日付より