バロンズ誌:米株高局面は、利益確定売りのチャンス?

2016年04月25日 06:00

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バロンズ誌、今週のカバーは半期に一度の「ビッグ・マネー調査」です。調査結果によると、足元の株高にも関わらず、金融市場関係者から強気な見方が後退しています。「強気、強気寄り」との回答は38%と、前回の55%を下回りました。調査を開始してから20年間で、最低に近い水準だといいます。2016年末の株価予想も、慎重そのもの。ダウでは18056ドルと、22日の終値18003.75ドルとさほど変わりません。米大統領選では、ヒラリー・クリントン候補が勝利するとの予想が64%と、ドナルド・トランプ候補の20%を圧倒しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内利上げ見通しは、「2回」が50%、「1回」が37%でした。中国が年内に人民元を切り上げるとの予想は、75%に達しています。詳細は、本誌でご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今回はFOMCを前に米株における利益確定売りの必要性を問います。抄訳は、以下の通り。

今年に入って、グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストが言う”リフレ・トレード”が行われているかのようだ。2016年の年初来リターンは、エマージング債のリターンが13.4%と、2015年の14.9%のマイナスから大幅に好転している。エマージング株も14.9%と資産クラス別3位で、2015年の7.4%のマイナスから巻き返す状況だ。2位は海外債で10.5%のリターンを遂げ、2015年のワースト3位から名誉挽回している。年初来リターン別での4位はハイイールド債は6.5%となり、2015年のワースト4位の4.5%マイナスから返り咲いた。

全ての資産クラスにおける共通点は、原油先物価格だ。2月につけた26ドルから60%の回復を遂げ40ドル台を回復する動きに合わせ、パフォーマンスを改善させた。原動力は石油輸出国機構(OPEC)ではなく、中央銀行と言える。中銀は原油先物の急落とドル高といったデフレ圧力に抗うべく追加緩和の種を蒔き、その種は春の到来に従って芽吹きをみせた。おかげで資源通貨の上昇を招き、加ドルや豪ドルをはじめロシアのルーブル、南アフリカ・ランド、政局に揺れるブラジル・レアルまで軒並み上昇した。金先物や銀先物も上昇し、金鉱株は強気相場入りを伺う。”SPDR®ゴールド・シェア (GLD)”は2015年終盤につけた安値から、20%以上も跳ね上がった。

もっとも、調整入りの兆候は見逃せない。例えばシーブリーズ・パートナーズのダグ・カス氏は、グロース株が成長を示していないと説く。例えば決算が失望を誘ったグーグルを有するアルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、スターバックス(SBUX)の株価は22日には5.4%安、7.0%安、4.9%安だった。ビザ(V)も2.0%安と、これまでの牽引役がさえない。債券と同じような扱いを受けていた生活必需品をはじめとする消費財にも売りが及び、キンバリー・クラーク(KMB)は3.7%安、コカコーラ(KO)やペプシコ(PEP)は配当あるいはそれ以上の価値が吹き飛んだ。

JPモルガンの創始者、J.ピアモント・モルガンはこう言った——「底値で買う、あるいは高値で売って富を築いたわけではない。ただ単に65%付近の水準にいただけだ」。今年、相場を張る上で覚えておいて損はない言葉だろう。カレンダー上では、「5月に売り逃げろ(Sell in May And Go Away)」という投資格言も思い出させる。

ダウ(週足チャート)、最高値を超えた後で調整も?
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(出所:Stockcharts)

カレンダー上では、FOMCの開催も近づいている。ロイターの調査では据え置きが予想される一方、80人中で50人のエコノミストが6月14〜15日開催でのFOMCで利上げを見込む状況だ。翻ってFF先物動向での6月利上げ織り込み度は19.6%に過ぎない。12月13〜14日開催のFOMCで、ようやく62.6%に至る。

エコノミストが6月利上げ予想に傾く理由は、労働市場にある。失業率は5%付近で推移し、米新規失業保険申請件数は直近で1973年以来で最低を更新した。ただ、ギグ・エコノミー(ギグ、つまりひとつのプロジェクトや1回限りの仕事をこなし生活をやりくりする形態)という言葉が誕生したように、パートタイム労働者の増加に注意したい。JPモルガンのジェシー・エドガートン米エコノミストいわく「過去6年以上にわたって労働市場が著しく回復した一方、非自発的なパートタイム労働者が劇的に改善しなかったが、循環的ではなく構造的な背景が潜んでいそうだ」。

そのひとつに、医療保険制度改革(ACA、オバマケア)を挙げる。ACAは企業に対し週30時間以上勤務する従業員に医療保険を提供する義務を含むため、企業は医療保険負担を回避する目的で労働時間を30時間以下に抑えかねないためだ。

もうひとつの理由が、ウバーのようなアプリでサービスを展開する企業の増加が挙げられる。ビアンコ・リサーチによると、フリーランス形態の職が増加しており、内国歳入庁(IRS)の統計ではフリーランス形式の確定申告フォームが急増しているという。

問題は、パートタイムとギグ・エコノミーの普及と米新規失業保険申請件数が過去の循環と同じ意味を示すかということだろう(筆者注:過去にフリーランスが増加した理由は、フルタイムで雇用されるより高額の所得が得られる利点があった)。

イエレンFRB議長は、他のFOMC参加者より「最大限の雇用と中期的なインフレ目標値2%」に対し硬直的ではない。むしろ、政策決定には海外動向だけでなく国内情勢に配慮すると発言している。米株の新高値達成は、米新規失業保険申請件数の減少より利上げの決定を促す余地がある。

米株市場に特化したコラム、ストリートワイズはウォールストリートのポジションとファンダメンタルズの乖離を問う。抄訳は、以下の通り。

ウォールストリートで、”ポジション”と言えばファンド・マネージャーやトレーダー達が投資したポートフォリオ動向を表し、マーケットで説明できない変化が起こると活用されがちだ。S&P500が2月から14%上昇した理由のほか、バイオテクノロジー株の上昇、年初来にドルが4.1%下落した背景として、使用される。ウォールストリートが他の投資家がどのような取引を行っているかに取り憑かれる半面、ファンダメンタルズといった重要点を見過ごしがちだ。

ポジション動向はS&P500を最高値まで押し上げる原動力がある半面、直近のファンダメンタルズでは正当化しづらい。利益を確定する上では、ポジションだけでなくファンダメンタルズに気を配る必要があるだろう。

——アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、米株高でも慎重スタンスを維持。FOMCを前にした利益確定の売りを推奨していましたね。米新規失業保険申請件数の改善にはパートタイムやフリーランスの増加が一因にあるといった見解をにじませ、米株高による早期利上げの可能性を匂わせます。個人的には、2013年頃から筆者が声高に伝えていたフリーランス増加のほか、就業率の低迷について指摘していたことは感慨深い。米労働分析局(BLS)では現れない数字なので全体像がつかみにくいものの、フリーランスが安定した雇用とは言えない傾向にあるため、同関連の個人消費や住宅販売に影響を及ぼしかねません。テクノロジーの変化に加え最低賃金15ドル引き上げの影響も重なり、労働市場は構造的に新たな岐路に立っていると言えそうです。

ストリートワイズと言えば強気な認識を寄せる傾向が高いにも関わらず、足元の相場には慎重な様子。今回、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートと足並みをそろえたかのようです。FOMCの開催を控える上、6月23日の英国国民投票もあって、ブルになりきれないのでしょう。今回の「ビッグ・マネー調査」の結果にも、影響されたのかもしれませんね。

(カバー写真:Randy Lemoine/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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