BMW「もう車は売らない!? サービスを売る。」

もし、欧州の高級車ブランドBMWが「もう車は売らない。サービスを売る。」と言い出したらぎょっとしますよね。シェアリング経済への転換を感じ取ったBMWのハラルト・クリューガー社長は、3月の新戦略発表会でこう宣言したそうです。

モビリティーで世界1位になる。

これからは価値の生み方がハードからソフト、サービスにシフトしていく。

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いやBMWってコテコテのハード屋さんじゃないですか。しかし、やる時はやります。実はもう2011年から「レンタカー屋さん」をドイツをはじめ欧州9都市で絶賛展開中なのです。

その名も、ドライブナウ。いや直球ぶっ込んできます。「お前運転しろ。今すぐにだ。」です。サービス内容は至ってクール。スマホで近所で空いている車を探す。ICチップ内蔵のカードで解錠し、目的地近くで降りて決済する。それだけ。お店にも行かないし、人も介さない。それはもうIoT(もののインターネット)の模範例です。(前ご紹介したApplePayはこんな感じで使われるようになるでしょう)。既に60万人が利用、1.6キ億ロの走行データが蓄積されました。

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料金設定も斬新。1分31ユーロセント(約38円)。分単位。基本料金なし。料金は走った分だけ。いきなりステーキのグラム単位売りみたいですね。ただし別途入会金29ユーロが必要です。

それにしても一体、天下のBMWが何でこんなことしてるんでしょうか?それは

BMWが売り出した電気自動車 i3 を買ってもらうためです。

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皆さん電気自動車に興味はありますよね。でも、いろいろ不安ですよね。でも試乗会に行ったりするのは面倒くさいですよね。そんな煮え切らないお客さま(馬)を水飲み場(電気自動車に乗せる)ために編み出した秘策がレンタカーというわけです。

(客)航続距離が短い > (BMW) じゃあ、都市部で使ってみてください。十分だって理解して貰えます 

(客)充電が面倒くさい > (BMW) じゃあ、こっちで充電しとくんで。

 (客)高いんじゃないの? > (BMW) いや高くないですから。ランニングコスト込みで考えれば

 (BMW)じゃあ車置いてきますんで、走った分だけお金払ってくれればいいですから。

まるで富山の薬売り。これで、気に入ったお客さんがBMWを買っても良し。使い続けるのも良し。これが欧州で大当たり。そこで何と今年3月に、テスラの聖地、アメリカ西海岸に殴り込みをかけました。シアトル市とRideCellというシリコンバレーのアプリメーカーとタッグを組んで、さらにサービスに磨きをかけます。

名前は少し変えて、今度はReachNow(すぐに届くぜ)です。 お値段は1分49セント(約53円)、ただし今なら41セント(45円)、入会金無料!。電気自動車70台を含めBMWの新車370台を投入しましたので、お好きなのをアプリで選んでください。

いや、至れり尽くせりですね。BMWは電気自動車に本気で勝負を賭けてきました。トヨタにプリウスで圧倒されて、ディーゼル車で挽回しようと思ったら不正問題に巻き込まれて、今更燃料電池車は難しいし。

敢えてドラーバーを外してきたのは無人運転化の布石でしょうね。将来はクリック一つで家の前に車が無人走行でやってきて、降りたら帰っていくなんていう世界を考えてるのでしょうね。

で、オランダは2025年までに全量電気自動車化を打ち出していますので、もうやるしかないといったところですね。日本の自動車メーカーもいいもの作ればお客さんは買ってくれるなんて待ちの姿勢うかうかしていると「富山の薬売りBMW」に足下すくわれてしまうので、ご注意ください。

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ビジネスアナリスト
金融機関で在外勤務する傍ら、電気自動車、IoT(モノのインターネット) 等のイノベーションの実業化の動向を分析。ICT、エネルギー、経済・経営分野にも精通している。執筆やNPO活動を通し、イノベーション普及に向けた啓発にも取り組んでいる。