子どもたちの未来の医療費を使い果たす前に(下)

2016年04月27日 17:01

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■胃がん治療の抗がん剤で、莫大な医療費が使われている

間部:お金の問題です。今、年金が問題になっていますが、胃がんになった患者さんを治療するために、抗がん剤を使うと場合によっては百万円単位の医療費がかかります。

駒崎:そんなに?

間部:はい。ひとりで。実際、胃がんになっている方は年間13万3千人、実際には更に多いので、その医療費が莫大なんです。

しかも今、人口ボリュームの多い団塊の世代が、発がんしてしまう年齢に差し掛かってきました。するとこれからどんどん医療費がかかってしまい……

駒崎:将来的に、子どもたちの分が足りなくなってしまう。

間部:そうなんです。医療費を使い果たさないためにも、治療はもちろんですが、「予防」もやらなきゃいけないんです。

駒崎:その通りですね。

間部:日本が将来的にも医療制度を継続させたり、福祉や子育て支援の分野に限られた社会資源を分配するためにも、低価格で大人数に実施できる「予防医療」をやらなきゃならない。

胃がんに関しては、やるべきことはハッキリしているんです。ピロリ菌の検査、そして除菌。それと、大人になってから除菌しても胃がんを完全に予防することは出来ないので、定期的に内視鏡検査や胃がん検診をすること。それで、胃がんで亡くなる人をほぼゼロにできるんですよ。

駒崎:やるしかないですね。じゃあ、今この記事を読んでくれている方が「今すぐ検査しよう!」と思った時に、どこに行けばいいんですか?

間部: 今はクラウドファンディングで、検査キットを少し割引で購入していただける取り組みをしています。その場合は尿を採って、郵送での検査ですね。4,000円くらいで出来ます。

駒崎:僕のやっているNPOは400人くらいの組織なのですが、会社や組織単位で購入して、全員に検査してもらうこともできるのでしょうか?

間部:できます、できます。

<※クラウドファンディングは4月28日(木)午後11:00までの実施です

間部:もちろん、普通にネットで検査キットを買うこともできます。 でも、予防医療の存在を知ってもらうためにも、クラウドファンディングをして、社会的な認知を高めているところなんです。

本当に活動を続けるためには、民間としてビジネスモデルを確立させるか、行政の仕組みを構築しなきゃいけない。でも今はどちらも出来ていないんです。だから、有志でクラウドファンディングを行って、認知向上活動をしながら、短期的な運営資金を集めているんですよ。

駒崎:この活動、もっと盛り上がるべきですよ。僕の知人の市長さんや区長さんにも、地域単位で参加してもらえるように言っておきます。これはやらなきゃ!

間部:ぜひ、お願いします。

■「もう老人だから除菌しなくていいよ」という人も感染源になってしまう

駒崎:そもそも、ピロリ菌を保有していても、除菌されない方も大勢いらっしゃるんですよね。

間部:はい。もちろん、除菌する・しないの選択は個人の自由ですしね。

ピロリ菌を除菌した後で逆流性食道炎になることもあります。リスクもありますから、除菌しないというのも一つの選択肢ではあります。(※逆流性食道炎に関してはこちらの記事をご参照ください)

「もう老人だから除菌しなくていいよ」という方もいらっしゃるのですが、最近ショッキングな発表がありました。

老人介護をしている若い介護士の方々が、勤務歴が長いほどピロリ菌に感染している人が多い、という可能性を指摘されたんです。

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駒崎:それはつまり、胃がんを発症していない老人の方から、感染してしまっているということですか?

間部:そうです。しかも、同じ施設に勤務していても、下痢や吐瀉物に触れることのない事務職の方々は感染率が低いままだったようです。もちろん、一つの可能性を報告したもので今後検証が必要ですが、可能性としてはあり得ます。

駒崎:なるほど……ご本人も知らず知らずに、ピロリ菌を広めてしまっていた可能性があると……。

僕は保育園を運営していますが、そこでも同じことですよね。先生から園児たちに感染させてしまうかもしれないわけだ。「うちの保育園の職員は、全員除菌しています!」って誇らしく言うようにしていきたいですね。

間部:誤解のないように言えば保育園や幼稚園では子ども同士、あるいは保母さんから感染することは殆どないとは言われています。しかしそれでも、感染源は絶っておいたほうがいいですよね。

■手術ではなく、服薬で除菌できるピロリ菌

駒崎:もう少し詳しくお聞きしたいのですが、検査キットを買って、郵送で尿検査をして、陽性だったとすると……どうやって除菌していくんですか?

間部:一週間、胃薬と二種類の抗生物質を飲むんです。

駒崎:へぇ、手術ではなく服薬なんですね。しかも、外来で。

間部:はい、かなり負担は軽いんですよ。値段も実費で、3,000円ちょっと。

駒崎:安い。先ほど話に出た、胃がんの抗がん剤とは比べものにもならない値段ですね。

それで胃がんになるリスクを減らせるわけですから、やるっきゃない。

間部:ぜひ除菌していただきたい。もちろん、大人の方が陽性だった場合は除菌する前に胃カメラを受けて胃がんが無いことを確かめることが重要です。抗生物質を服薬するだけで安心せずに、除菌後も定期的に胃カメラで検査をしてください。

先ほどもお伝えしたように、除菌で胃がんが30-40%予防できても100%の予防は難しいですから、胃がんが出来ていないか調べる必要があります。

■現状を嘆く暇があったら、この事実を伝えたい

駒崎:しかし、今日は知らないことが多すぎて驚いています……。この記事は親御さんも必読ですね。

間部:はい。ぜひ、広めてあげてください。でも、我々は非常に心苦しいんです。

ピロリ菌が発見されてから、もう37年が経つんですよ。それで、この菌が胃がんの原因だとWHOが認めてから、20年ちょっとが経過しました。それでもまだ日本では、医療関係者以外にはこの事実があまり知られていないし、これだけ対策が進んでいないっていうのがね…

駒崎:なんで、こんなに遅いんですか?

年間5万人が亡くなっていて、20年も経過しているとすると、単純計算しても100万人の方々が命を落としているわけですよね……。考えられない。

間部:これまでの堀江さんとの対談でも、数々の問題点はお伝えしてきたのですが……

もちろん除菌する・しないは、本人の自由だし、除菌にはペニシリン系統の薬を使うので、アレルギーがある人は保険で除菌できなかったりもします。さきほどお伝えしたように、ピロリ菌を除菌することで逆流性食道炎になるリスクもある。もちろん、除菌で逆流性食道炎が増えることはないのですが、起こす人もいる。

でも、少なくとも「胃がんは感染症である」「除菌で救える命がある」ということを医療関係者や国がしっかり伝えていない……というのは、僕は罪だと思うんです。だから現状を嘆く暇があったら、こうして伝えて、広めていきたいんです。

駒崎:僕自身、ここまで知らなかっただなんて。これはもう、保健体育の授業で教えなければいけないことですよ。間部先生。今日は本当に、勉強になりました。ありがとうございました。

■検査キットを購入できるクラウドファンディングはこちらから

胃がんの原因は99%ピロリ菌だった。 皆で検査をして予防しよう。

※クラウドファンディングは4月28日(木)午後11:00までの実施です。

■間部先生と堀江貴文さんの対談はこちらから

<前編>日本で年間5万人近く死亡する胃がん。韓国では国の予防医療が成功

<後編>諸悪の根源はCM?ヨーグルトでは殺せないピロリ菌。

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駒崎 弘樹
認定NPO法人フローレンス代表理事

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