バロンズ誌:強気相場に、失速の兆し?

2016年05月01日 11:20

barron

バロンズ誌、今週のカバーは「撤退するイスラム国(Islamic State in Retreat)」。米中央情報局(CIA)のマイケル・ヘイデン元長官は、現在の中東が30年戦争が勃発した17世紀当時の欧州同然だと指摘する。当然、こうした暗黒の予想はコンサルティング会社にとって有益だろう。しかし、同誌はイスラム国(ISIL)が2017年末に勢力を格段に弱めると予想。イスラム国(ISIS)がイラクのティクリートをはじめラマディ、シンジャル、そして最近でシリアのパルミラなどの支配領土を失い、かつ米露がシリアでの停戦合意の維持を図り、サウジアラビアとイスラエルの関係にも改善がみられるなど、外交面からも楽観の兆しがあるという。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今回は再び強気相場終焉に警告を発します。抄訳は、以下の通り。なお、2009年3月から開始したブル相場は4月29日をもって2608日を迎え、1949〜56年の記録を更新し過去2番目に躍り出ました。

ブル相場は、失速しつつあるのか—Is the Bull Market Running Out of Steam?

年初からの急落に終止符と打った2月11日以降、S&P500は14%買い戻され年初来リターンは1%高を示す。しかし、2015年5月の高値まであと一歩に迫ったところで、4月25〜29日の週足は1.3%安と2月5日週以来で最低を記録した。

リフレ・トレードが叫ばれるなか、原油先物は26ドル台から70%も回復、ドル実効相場も3%下落した。各国の中銀が商品価格の下落を招き、かつエマージング諸国の経済に打撃を与えるドル高に歯止めを掛けるため協調政策に打って出たとの噂はさておき、2月11日といえば米景気見通しがピークアウトした時と合致する。当時、アトランタ地区連銀のGDPナウは2.7%増だったが、以降は下方修正が相次ぎ最終的には0.4%増に至った。結局、米1−3月期GDP速報値が0.5%増だったのは、周知の通りである。

同じくFF金利先物も、利上げ織り込み度が2月11日を最後に低下していった。同時にドル高が巻き戻されたほか、商品先物の買い戻し、ハイイールド債市場の回復を招き、米国債とジャンク債の利回り格差は2月11日の8.44%ポイントから5.66%ポイントへ縮小した。

3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では世界経済と金融市場をリスクに挙げ経済・金利見通しでFF金利示唆が年4回から2回へ修正した一方、4月FOMCではそうしたリスクを削除させた。金融市場の動向を踏まえれば、当然だろう。しかし、日銀のゼロ回答は世界に衝撃を与えた。前週末の28〜29日には米株の下落を促し、特に決算で失望を与えたアップルは11%以上も急落、93.74ドルへ沈んだ。著名投資家でアップルの大株主であるカール・アイカーン氏はかつてアップル株が240ドルへ上昇すると予想したものの、直近では自身の株価予想の半値以下で全て売り払ったと発言している。それだけでなく、アイカーン氏は財政刺激策なしであればマーケットが「最後の審判(day of reconing)」を迎えるとの警告を発した。

アイカーン氏の発言が「5月に売り逃げろ(Sell In May And Go Away)」に則したものなのか、短期的あるいは長期的な戦略の成せる技なのかは不透明だ。しかし、ベスポーク・インベストメント・グループの分析によると、5月〜10月のパフォーマンスはそれ以前に当たる1〜4月次第だということが分かる。1928〜2015年にわたり、S&P500の1〜4月のリターンがほぼ横ばい(±2%)だった回数は16回で、5〜10月の平均パフォーマンスはマイナス0.21%と最も弱い。今年の1〜4月のリターンは1%高にとどまっており、アノマリーに従えば5〜10月の成績は失望に終わるシナリオが考えられよう。年間で陽線引けする確率も、56.3%と漸く過半数を超える程度だ。

逆に1〜4月が2%以上の上昇を遂げたケースは45回あり、5〜10月の平均パフォーマンスは2.99%高。年足の陽線引け確率も71.1%であることを踏まえれば、その差は大きい。1〜4月が2%以上の下落を示した27回の例では、5〜10月のパフォーマンスは平均1.11%高だったが、年間を通じ陽線引けする確率は、53.6%にとどまる。

今年は米大統領選を予定するだけでなく、経済が鈍化する過程で中銀による政策手段も限られる状況だ。今年の夏は、クレイジーな展開を迎えうる。

「正直な人間なら返済できないほど、債務を抱えている」——とは、ブルース・スプリング・スティーンが1982年に書いた”アトランティック・シティ”の一節だ。ニュージャージー州にある同市の財政は、トランプ候補が所有したカジノのように新たにまた一つ破産法申請に追い込まれた事情もあり、5月2日に180万ドルの債務返済が不可能となる見通しだ。NJ州の都市が債務不履行に陥るのは、1930年代から初めてとなる。

2014年末まで放映されたドラマ「ボードウォーク・エンパイア」の舞台でした。
Boardwalk_Empire-Season_2
(出所:media.gunaxin

プエルトリコに比べれば、規模はずっと小さい。5月2日に米国の自治領は4億220万ドルもの債務支払い期日を迎え、7月1日には20億ドルの償還を予定する。20億ドルには8億ドルの一般財源債が含まれ何が何でも返済しなければならない。とはいえミシガン州デトロイト、カリフォルニア州ストックトン、アラスカ州のジェファーソン郡の債務不履行例にならい、米国内で切迫したムードに乏しいのも事実。リッパーによると地方債ファンドには前週、11億7000万ドルもの資金が流入し2015年12月30日週以来で最大を記録したという。

過去を比較すると、地方債が債務不履行に陥るケースは社債より少ない。ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータでは、BBB格(投資適格級で最低)の社債の債務不履行率は1970年から2013年にかけ4.61%に対し、地方債は0.32%にとどまる。

リターンも、注目だ。”iシェアーズ・国内地方債ETF(MUB)”は2015年に4.57%のリターンを叩き出し、”iシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF(AGG)”の2.35%を大きく上回る。地方債で懸念すべきは債務不履行ではなく、むしろその割高感だろう。2桁台のディスカウントから足元はプレミアムが並び、AAA格の30年物地方債利回りは2.54%と米30年債利回り2.67%以下にとどまる。

イリノイ州シカゴをはじめ、年金支払いで債務を溜め込む都市もある。しかし、地方債は確実なプロジェクトを元にした歳入担保債といった安全性の高い商品が多い。さらに地方債ファンドの多くは、プエルトリコ債を除外したものが目立つ。

プエルトリコとアトランティック・シティには、ブルース・スプリングスティーンがこんな望みを託していた。「あらゆるものが消えてなくなるというのは事実さ。だけど、いつか還ってくるかもしれない」。両者がデフォルトを経て、カムバックを果たさないとも言えないのではないか。

もうひとつの名物コラム、ストリートワイズは中国に焦点を置きます。抄訳は、以下の通り。

中国経済がソフトランディングしない理由—Why China’s Economy Won’t Land Softly.

中国経済はあらゆる観点から鈍化し、2015年8月から年初の米株安を演出してきた。直近で、中国悲観論は後退中だ。中国の1−3月期国内総生産(GDP)は前年同期比6.7%増だったが、外貨準備高は3月に増加へ転じた。おかげでS&P500は2月の安値から13%も切り返し、ダウとともに年初来でのトータル・リターンはプラスを維持している。

ただし、中国政府が統計の数字を水増しする傾向が高い点は否定できない。何より問題なのは、急ピッチで拡大を続ける債務だろう。1−3月期に新たな債務が1兆ドルも急増したとされ、GDPが10兆ドルであることを踏まえれば記録的といっても過言ではない。カリフォルニア大学のビクター・シ教授によると、GDP比でみた債務は2008年の150%から直近で300%近くへ膨れ上がったという。

過去6年間、チープマネーを通じて行ったマリンベストメントの代償に空アパートが並び、使用されていない高速道路や橋脚、展覧会場が廃墟と化しつつある。こうした建築物はGDPの建設投資を押し上げたが、債務の支払いに必要なキャッシュフローは生み出していない。不良債権が積み上がるのは火を見るより明らかで、著名投資家ジョージ・ソロス氏にして中国経済ハードランディング説を唱えさせるに至っているのだろう。

仮に中国経済がハードランディングに直面した場合、米国投資家は対岸の火事として受け止めるべきではない。日本の「失われた20年」の例を踏まえ、世界経済への影響が軽微にとどまると結論づけるのは早計だ。中国でのiPhone販売が不振に終わり13年ぶりの減収を計上したアップルこそ、良い教訓になるだろう。

——米株には日銀の決定も重なり頭打ちの気配が漂いつつ、懸念すべきはアトランティック・シティとプエルトリコの状況でしょうか。プエルトリコは2015年に米国自治領で初のデフォルトに陥ったものの、比較的落ち着いた処理が進んでおり法的措置が生じるような運用会社やヘッジファンドを敵に回すような措置を講じなかった(代わりにプエルトリコ市民の虎の子を預ける信用組合が犠牲になりましたが)。アトランティック・シティの場合はクリス・クリスティ知事率いるNJ州が市の運営を直轄する案を検討、資産売却や債務再編を図る考えを示します。アトランティック・シティのガーディアン市長は「独裁的だ」と批判していますが、共和党の米大統領候補レースでトップをひた走るトランプ氏にくっつくクリスティ知事ですから、トランプ氏はもちろん自身が閣僚入りを果たす上で汚点になるような事態を何としてでも回避するでしょう

中国のハードランディング説、今回の動きは米財務省が為替報告書に中国をはじめとした5ヵ国を「監視リスト」として公表したこととの因果関係が感じられます。中国の他は日本を含め台湾、韓国、ドイツが並び、米2月貿易収支では台湾を除き米国にとっての貿易赤字ランキングでトップ10が顔を揃えました。台湾は中国との関係で加えられたとも考えられます。

いずれにしても中国や日本、韓国のアジア諸国が並んだ点は、米大統領選を見据えた動きと解釈できます。共和党のトランプ候補が中国に人民元安や関税引き上げを主張、日本と韓国には米軍撤退を叫び相応の負担を求める状況で、支持率は高止まりを続けていますよね。民主党のクリントン候補も、北米自由貿易協定(NAFTA)を支持した過去を忘れたかのように、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は自身が適切とみなす水準に達していないと批判し為替条項に関する厳格な条件を要求したものです。

米議会への「ガス抜き」の側面も拭えませんが、米大統領選を控えた政治的パフォーマンスとも考えられ、円高が進む日本では特にとばっちりを受けた格好です。麻生財務相は口先介入を続けていますが、仮に実施すれば米議会でのTPP批准にも影響しかねず。米国にとっては、1粒でTPPの米議会批准と米大統領選の得点稼ぎで2度おいしい為替報告書の監視リスト。日本にとっては現状、中国より苦さしか感じられません。伊勢志摩サミットを控えれば、なおさらです。

(カバー写真:Chris Goldberg/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑