為替が動くその背景

2016年05月01日 13:14

ゴールデンウィークに突入している日本には嫌なムードが立ち込めてきました。為替であります。

金曜日の円ドルは106円前半まで円高となり、来週も日本側の市場参加者が少なくなる中、仕掛け的なドル売り円買いの動きが出る可能性があり、一部の方にとっては休み気分もぶっ飛んでしまうかもしれません。麻生大臣が30日深夜に異例のコメントを出したのは月曜日からの為替動向にくぎを刺す必要があったからでしょう。

今回の為替の動きは先週、アメリカFOMCが政策の維持を決めただけではなく、経済の基調が弱いバイアスに変化し、6月の利上げも厳しいのではないかというトーンが出来たことが最大のトリガーです。そしてその直後の日銀の政策会議では現状維持、また利下げが取りざたされていたニュージーランドも現状維持となりました。その為、ドルが主要通貨の中で弱含み、円が買われる土壌が出来たのであります。

ちなみに同様に買われたのが金で15か月ぶりの高値をつけ、1290ドル台まで回復してきました。ちなみにゴールドマンサックスは年初から金の売りを推奨しており、確か、6月に1050ドル、12月に1000ドルという目標値が出ていたのですが、完全に逆の展開となっています。チャート的には持ち合いから上放れになりつつありますので次の目標は1400ドル程度になります。

また、同様に資源価格も高騰しており、NYの原油市場も46ドル程度となっています。鉄鉱石など他の資源も同様に高騰しています。このあたりは私が昨年末から指摘していた内容に沿っているかと思います。

さて、為替は勝手に動くものではなく、背景があっての話であります。ブルームバーグのDollar Spot Indexという米ドル単体の強さを見るには都合のよい指標があるのですが、これが昨年12月の1250をピークに下落基調に入っており、現在、1150の水準まで落ちてきています。ドル高が始まったとされる14年半ばはこの指標が1000程度でしたので仮にドル安サイクルに入っているとすれば相当の下げ余地が残されていることになります。

そんな中、アメリカ財務省が対米の貿易黒字国を「監視リスト」として加えることを発表しました。そのリストには日本、中国、台湾、韓国、ドイツが入っているようですが、為替操作には目を光らせるということに他なりません。日本は5月下旬にサミットを控えることからもともと為替介入には動きづらいこと、アメリカ財務省の姿勢がこのところ、日本を突き放すような態度に見えることからアメリカが自国の利益をかつて以上に重視し始めた可能性があります。これはトランプ氏の政策とも合致しており、いよいよアメリカがアメリカらしさを失いつつあるのかもしれません。

その場合、アメリカは戦後、日本を支えてくれたアメリカではなくなるということですから日本は対米政策を慎重に検討し直す必要が出てくるかもしれません。トランプ氏に至っては日本は駐留米軍を含めた安全のただ乗り的発言を繰り返していますからこれがいよいよ現実のものとなれば日本も難しい選択を迫られるかもしれません。

ではなぜ、アメリカが変わりつつあるのか、ですが、アメリカがかつてのリーダーシップを維持できなくなり、ウィンウィンの関係が維持できなくなっているからかもしれません。つまり逆説的ですが、アメリカの老化現象が始まり、栄養ドリンクを何本飲んでも元気が回復しずらくなってきたのかもしれません。

例えばアメリカ企業が節税対策でタックスヘイブンを使うことに関してはどうでしょうか?それが仮に合法の範囲内であってもアメリカ国民が本来享受すべき税金のメリットを逃れているという道徳上かつ道義上の問題として世論のボイスが黙っていない時代がやってきたのであります。

例えばアップルという会社がどれだけ優れていても節税対策で何千億ドルも税金を節約してきたとすればアメリカ人のメンタリティからすればアップル離れを案外簡単に引き起こしてしまうのです。つまり、アメリカは今まで寛容過ぎた、これからはもっと自分のことを考え、99%の人の利益を守るというスタンスに変わりつつあることを日本は早めに察知すべきでしょう。

パナマ文書もどう考えてもアメリカの仕業ですが、その究極的意味合いはタックスヘイブンを取り締まり、アメリカ企業はアメリカに税金を落とさせるという政策に見えるのです。

ならば為替をドル安に誘導する理由のもう一つの理由はシェールオイル産業の復活でしょうか?ドル安に伴い、資源価格は回復してきており、原油が50-60ドル台に回復してくればシェールオイル業界も息の根を吹き返すはずです。つまり、これもアメリカの自己都合と考えれば合点は行きます。

こうなればTPPはどこかにすっ飛んでしまいますし、安倍首相としてもわざわざアメリカ議会で演説までして日米関係の維持に努力してきたものは何だったのだろうか、ということになってしまいます。

短視眼的政策。これがアメリカの現在の姿勢だと思います。日本はこれにどう対応するのか、素早く、そして賢い対策が待たれます。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 5月1日付より

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