ホワイトハウス記者晩餐会、オバマが最後に吠える!

安田 佐和子

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オバマ米大統領、最後のホワイトハウス記者晩餐会(WHCD)も抱腹絶倒、皮肉とジョークが入り交じり大盛況でした。別名”Nerd Prom(オタクのパーティ)”とされる晩餐会、レームダックが取り沙汰されながら、冴え渡る弁舌は健在。これだけキレッキレのトークを延々と披露できるならば、トークショーでも始めて欲しいくらいです。スピーチ後の退場も、いわゆる”マイク落とし(Mic Drop)”を踏襲する演出っぷり。最後の一般教書演説ではセンセーショナルでしたが、記者晩餐会では右手の人差し指と中指を唇にあて左手でマイクを落とすパフォーマンスで会場を沸かせました。

最後の一般教書演説、マイク落としだけでなく目の前の原稿を舞い上げましたよね。

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(出所:youtube

今年は「オバマ アウト」の一言とともにマイクを落とす。エンターテイナーですねぇ。

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(出所:Washington Post

もちろんオバマ米大統領はジョークばかりでなく、イランで拘束されていたワシントン・ポスト紙のジェイソン・レザイアン記者の帰還に言及することも忘れません。

ワシントン・ヒルトンに顔を見せたセレブリティは俳優ウィル・スミス夫妻のほか、女優で熱心な民主党支持者のケリー・ワシントン、往年の歌姫グラディス・ナイト、俳優で監督のエドワード・バーンズと元スーパーモデルのクリスティ・ターリントン・バーンズ夫妻、俳優マーク・ラファロや女優レイチェル・マクダモスなどがそろいます。ただし昨年同様、今をときめくスーパースタークラスとは言い難い面々でした。

では、オバマ米大統領の必殺ジョーク10選をご紹介しましょう。

10)カナダのジャスティン・トルドー首相について
「誰かがこう言ったんだ。『大統領、あなたはもう昨日の人だ。ジャスティン・トルドー加首相は完全にあなたの座を射止めた。ハンサムで、チャーミングで、未来でもある。』だから僕はこう言った『ジャスティン、もうよしてくれ』。(In fact somebody recently said to me, ‘Mr President, you are so yesterday. Justin Trudeau has completely replaced you. He’s so handsome, he’s so charming. He’s the future.’ And I said: ‘Justin, just give it a rest.’)」

9)テッド・クルーズ候補とオバマ米大統領に向けられた出生疑惑について
「テッドは厳しい週を迎えたね。インディアナ州に赴いてバスケットコートに立ちゴールのフープをリングと呼んだ。他にどんな語彙があるんだ?野球のスティック(本来はバット)、フットボールの帽子(本来はヘルメット)、だけど僕は外国生まれだからね!(Ted had a tough week. He went to Indiana… stood on a basketball court and called the hoop a basketball ring. What else is in his lexicon? Baseball sticks, football hats, but, sure I’m the foreign one!”)」

8)共和党のラインス・プリーバス全国委員長に対し、米大統領候補選びについて
「あらゆる成功をお祝いするよ。共和党、大統領候補選び・・全てが素晴らしい!(Congratulations on all your success. The Republican party, the nomination process – it’s all going great.)」

7)共和党の米大統領候補レースについて
「8年前、政治に変化が訪れる時がきたと言った。振り返ってみれば、私はもっと具体的であるべきだったようだ。(Eight years ago I said it was time to change the tone of our politics. In hindsight, I clearly should have been more specific.)」

6)共和党全国委員会(RNC)とブローカー・コンベンションの可能性について
「出席者に魚か肉のどちらが良いかを尋ねたんだけど、RNCの全員が『ポール・ライアン』と書いたよ。(Guests were asked if they wanted steak or fish, and a whole bunch of you wrote in ”Paul Ryan”.)」

5)独立派としての立候補を取り止めたブルームバーグ前NY市長について、トランプ候補へのあてつけで
「自身が言うだけのお金の価値がある。(actually worth the amount of money he says he is.)」

4)列席していた民主党のサンダース候補について
「前途有望な民主党の顔(the bright young face of the Democratic Party.)」、「バーニー、君は百万ドルに見えるよ。あるいはこう言った方が分かりやすいかな?君は、3万7000件もの寄付を27ドルで受け取ったようだ(Bernie, you look like a million bucks — or we’ll put it in terms you’ll understand: You look like 37,000 donations of $27.)」

3)欠席していた民主党のヒラリー候補、及びゴールドマン・サックスの関係、新たな20ドル札について
今回のネタが上手くいけば、来年ゴールドマン・サックスで使うよ。そしたらかなりの20ドル札を稼げるだろうからね。(If this material goes well, I’ll use it at Goldman Sachs next year. Earn me some serious Tubman’s.)」

民主党のヒラリー候補について
「皆さんもご存知だろう、ヒラリーは若い世代の有権者にアピールしようとしているが、何だかまるで親戚のおばさんがフェイスブックに登録して『私のつつき、受け取った?』って聞くようなものだよね。(You’ve got to admit, though, Hillary trying to appeal to young voters is a little bit like your relative just signing up for Facebook. ‘Did you get my poke?’)」

2)自身の老いについて
「ヒラリーはかつて、私に午前3時の電話に出られるか尋ねたものだ。今となってはどっちにしろ起きてるよ。だってトイレに行かなきゃいけないんだから(Hillary once asked if I would be ready for a 3 a.m. phone call … now I’m awake anyway because I gotta go to the bathroom)」

1)欠席していた共和党のトランプ候補について、女性蔑視、ミス・ユニバース機構との関係、駐米軍の撤退など
「共和党の主流派は、トランプが有力な候補者であることに懐疑的だ。ドナルドは大統領になるには外交経験に乏しいと批判するが、公平を期するなら彼には世界の指導者と会った経験がある。例えばミス・スウェーデン、ミス・アルゼンチン、ミスアゼルバイジャンなどだ(The Republican establishment is incredulous that he’s their most likely nominee. They say Donald lacks the foreign policy experience to be president. But in fairness he has spent years meeting with leaders from around the world: Miss Sweden, Miss Argentina, Miss Azerbaijan.)」

「今夜の晩餐会は、ドナルドにとって悪趣味なものだったのだろうか?(出席しないで)彼はいま何をしているのだろう?家でトランプ・ステーキを食べているのだろうか?あるいは、メルケル独首相ヘの侮蔑をツイッターで放っているのだろうか?(Is this dinner too tacky for the Donald? What could he possibly be doing instead? Is he at home eating a Trump steak? Tweeting out insults to Angela Merkel? What’s he doing?)」

「トランプの経験が活かせない分野と言えば・・グアンタナモ基地の閉鎖だろう。(There’s one area where Trump’s experience could be invaluable … closing down Guantanamo.)」、「トランプには、いくつかの知識がある、地下にあるウォーターフロント施設を運営することとかね。(Trump knows a thing or two about running waterfront properties into the ground.)」

——個人的には、ヒラリー・クリントン候補への辛辣なジョークが多かった印象です。共和党を槍玉に挙げるより支持率に響く言葉は、オバマ政権の下で米司法省がブライアン・パグリアーノ氏に刑事責任免除を与えた事実を思い出させます。パグリアーノ氏は刑事責任免除のおかげで、口を割ってもお咎めなしとなりますからね。

ただし、オバマ米大統領はこう発言することも忘れませんでした——「来年のこの時、この場所には違う誰かが立っているのだろう。どの女性になるかは、誰にも分からないけどね。(Next year this time someone else will be standing here… and its anyone’s guess who she will be)」

今年のWHCDでも、昨年に続きコメディアンが花を添えました。コメディ・セントラルで「ナイトリー・ショー」のス司会者を務めるラリー・ウィルモア氏の卓越したジョークは会場が反応に困るほど核心を突き、メディアにも大きく取り上げられています。

例えば「ワシントンD.C.でのニグロ・ナイトへようこそ!フォックス・ニュースなら、『黒人のならずもの2人がエレガントな晩餐会に闖入した』と報じるだろうね(Welcome to Negro Night here in Washington. Or as Fox News will report, ‘Two thugs disrupt elegant dinner in DC)」。

オバマ米大統領にも、辛口ぶりはとどまるところを知りません。「NBAのスティフィン・カリー選手(日本ではステファン・カリーとの表記も)と談笑しているのを見たけれど、いいよね。何となく分かるよ、だって2人とも遠い所から大量の爆弾を落とすことが好きだからね(I saw you hanging out with NBA players like Steph Curry, Golden State Warriors. That was cool. You know, it kind of makes sense too, because both of you like raining down bombs on people from long distances.)」。

クリントン候補にも「ヒラリーは、『黒人の命も大切(Black Lives Matter)』の参加者に迫られた時にイライラしていたんだ。不意打ちを食らってあれだけ怒りを募らせた白人女性は、(ワイドショー司会者の)ケリー・リッパしかいないね(Hillary [Clinton] was flustered when a Black Lives Matter protester challenged her. I haven’t seen a white lady that upset over being blindsided by a black person since Kelly Ripa.)」このジョークは、クリントン候補が黒人層の支持を得ている事情を踏まえれば、強烈過ぎます。クリントン候補が本選で勝利した暁に、ウィルモア氏はどのような祝辞を述べるのでしょうか?

(カバー写真:BBC


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。