『国会審議にALS患者の出席拒否』の真相

恩田 聖敬

okabe

本日は、どうしても伝えたいことがあります。

皆様、こちらのニュースはご存知でしょうか。

ALS患者の質疑拒否、自民・民進 主張に食い違い

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2771394.html

障害者支援法  審議にALS患者の出席拒否 与党が反対

http://mainichi.jp/articles/20160511/k00/00m/040/149000c

5/10に行なわれた衆議院の厚生労働委員会で、障害者支援法の審議にあたり、当初参考人として質疑の場に立つはずだった、ALS患者の日本ALS協会副会長 岡部宏生さんが「答弁に時間がかかる」事を理由に出席を拒否されたというニュースです。

拒否をした側は「(岡部さんの健康状態を配慮し)答弁に耐えられるかどうかをおもんばかった」と述べているようです。

現在拒否をした与党側と野党側とで意見が食い違っています。

一方、日本ALS協会から出された当日の陳述書全文です。

https://www.facebook.com/JapanALS/posts/464606603664207

http://www.alsjapan.org/-article-1117.html

以下、岡部さんのコメントを抜粋します。

「おはようございます。日本ALS協会の岡部宏生と申します。

本来であればここに座って、委員の先生方とお話をさせていただいているはずです。

冒頭のご挨拶として一言申し述べさせていただきます。

私は

ALSという神経難病の患者当事者で人工呼吸器をつけていますので、コミュニケーションには特殊な方法を用いて通訳者を必要とします。

それでコミュニケーションに時間を要するという理由で、今日の参考人として招致されたものを取り消されました。障害者総合支援法の国会審議において、障害者の参考人を拒否なさったわけです。

国会の場はまさに国民の貴重な時間と費用の極みだと認識しております。

その国民の中には私たち障害者も存在しています。

国会の、それも福祉に関する最も理解をしてくださるはずの厚生労働委員会において、

障害があることで排除されたことは、深刻なこの国の在り様を示しているのではないでしょうか。

先に述べましたように、国会の場は国民の時間と認識していますので、

 コミュニケーションに時間がかかることで議論が深まらないという懸念は一見もっとものように聞こえますが、 少しの工夫があればほとんど問題はなく議論ができます。

但しそれには、長期間の訓練による通訳の技能が必要であること、

それはこの法案の内容にも直接関わっていることでもあり、可能であればこの場において先生方にご覧いただきたかったと思います。

後ほど、委員会の事務局に具体的にその方法の一部を提出しますので、

今後の厚生労働委員会の審議の在り方について委員の先生方にご一考いただけますことを切に願っております。(以下略)」

岡部さんは、私が大変尊敬する先輩患者様の一人です。

岡部さんとは、昨年の2月にお会いして以来、さまざまなサポートをいただいております。

私がFC岐阜の社長を退任し、その後について悩んでいた時も、東京から岐阜まで日帰りでお越しいただき、たっぷり3時間お話しました。

そんなバイタリティ溢れる岡部さんに、言われているような体力的な心配があったとは思えません。

私は事実が知りたくて、先ほど岡部さんと電話とメールで話しました。

以下が事実です。

 『当初、本件の参考人陳述者は陳述内容から岡部副会長が適任との判断から、参考人出席依頼(4月28日衆議院厚生労働委員会委員長より)を承諾し、510日の委員会出席を準備予定しておりました。

その後、連休中日の52日に、民進党議員より「委員会内で各政党の参考人に対する質疑に岡部副会長では

時間がかかり質疑が十分できないので別の人に代わって欲しい」との意見があり、調整が難しいので、申し訳ないが常務理事に代わって欲しいとの要請がありました。

最終的に岡部副会長より法案審議で当協会の意見陳述を優先することから参考人変更を受け入れたい意向が示され、了承しました。

但し、参考人陳述者の選考において看過できない障害者差別があると判断し、10日の意見陳述の冒頭に岡部副会長のコメントを紹介しました。』

残念ながら、「時間がかかる」という理由で、岡部さんが参考人を外されたというのが事実です。

体力的な心配で参考人はむずかしいのではという話はあったが、岡部さんは大丈夫ですから自分がやりますと答えたとのことです。

『これほど深刻な差別を受けた経験はなく、大変な問題だと感じました。』

岡部さんの弁ですが、全くその通りだと思います。これは差別です。

誰が拒否したという問題ではなく、障害者のコミュニケーションへの理解があまりに乏しいことが問題だと思います。

例えば、先ほど岡部さんと電話したと書きましたが、喋れないALS患者同士がどうやって電話するのでしょうか?想像できますか?

私の方は、私のわずかに出る声と一部口文字を秘書が通訳し、岡部さんはヘルパーさんと口文字で会話して、

ヘルパーさんが我々に通訳してくれます。

このようにして、患者とのコミュニケーションを取るべく、訓練をした介助者がいれば、ALS患者同士でも、電話にてコミュニケーションが取れるのです。

岡部さんの口文字は私から見たら神業です。

どれだけの時間と苦労をかけて築き上げたものか、想像がつきません。私のiPadのタイプスピードよりはるかに速いです。

「時間がかかる」

そんなことは、我々患者が一番良くわかっています。

だからこそ岡部さんは努力を重ねて、今の口文字のスピードを会得されたのだと思います。私も、症状の進行に合わせて最適なコミュニケーション法を模索してきました。

我々には伝えたい思いがあるからです。好きでALSになったわけじゃない。

制約の中で、懸命に声をあげているのです。

岡部さんは、常にアクティブに全国を飛び回り、ALS患者の同胞に希望を与えています。

そんな方の発言機会を奪っておいて、障害者支援法とは、不可思議でなりません。

もっと現実の現場を見てください。そして患者の声を聞いてください。

岡部さんの姿を拝見したことが、創業への道を後押ししました。障害者だって社会の役に立ちたいし、そのために努力しています。

守られるだけでなく、守りたいものがあります。健常者と障害者の前に人と人として、たまには障害者の時間軸にお付き合いいただき、時間をかけて話を聞いてください。

ちなみに、このブログを書くのに8間かかりました。障害者の時間軸とはそういうものです。

どうかご理解の程、よろしくお願いします。

私が創業を発表した同時刻に、応援してくれていた岡部さんに本件があったことに、私の今後のミッションを考えさせられました。

障害者のバリアを少しでも除くお手伝いがしたいです。

私に対する岡部さんの応援コメント

http://japangiving.jp/project_report/1935

恩田聖敬

ALSと共に働く。これまでも、これからも」

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ALS患者 FC岐阜前社長 恩田聖敬

http://japangiving.jp/p/4071

オフィシャルサイト

https://ondasatoshi.com 


この記事は、岐阜フットボールクラブ前社長、恩田聖敬氏のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2016年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。