バロンズ誌:トランプとクリントンに忍び寄る、不穏な影

2016年05月15日 06:00

WhiteHouse

バロンズ誌、今週のカバーはバイオ関連のリジェネロン・ファーマシューティカルを掲げます。黄斑変性症の治療薬でメガヒットを飛ばした同社の株価は、2015年の夏につけた500ドル超えから370ドル付近まで下落。しかし、バロンズ誌は今後新薬が10年以内に3種類登場する見通しであるほか、来年にかけ数種類の目標達成をこなすと見られ、少なくとも30%近く上昇し500ドル台へ戻ると予想しています。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは米大統領選照準を当てます。抄訳は、以下の通り。


トランプ、クリントン、現実がマーケットを襲う—Trump Clinton: Reality Bites the Markets.

米大統領候補として正式指名が確実なドナルド・トランプ氏は、債務交渉の可能性を指摘した。後に債務再編の撤回した一方、蓄えた富の片鱗をのぞかせる確定申告の公開を拒否。ウォルト・ディズニー傘下の放送局ABCの”グッド・モーニング・アメリカ”で所得税などに絡む税率への質問に「知ったこっちゃないだろう」と切り返すだけに、選挙戦中に公表する気配は感じられない。もう一人の有力候補である民主党のヒラリー・クリントン氏といえば、非営利団体のために資金調達を支援する財団クリントン・グローバル・イニシアチブ(CGI)が取り巻き率いる企業のために200万ドルをお膳立てしたとのニュースで世間を賑わせた。

不安定要素が2人を囲むなか、米株相場の動きと民主党候補が勝利する可能性をめぐって奇妙な相関性が見られつつある。ベスポーク・インベストメント・グループ(BIG)がアイオワ・エレクトロニック・マーケットの動向を元に調査したところ、民主党候補が本選で勝利する確率は前週の半ばに74%から62%と年初来で最大の下げを記録し、S&P500が底打ちした2月11日以来の水準まで落ち込んだ(筆者注:11日にS&P500は0.96%安、ダウは1.2%安で引け)。こうした流れを受け、BIGは仮に低下を巻き戻されず、かつトランプ候補が目指す政策に透明性が出てこない限り「株価に悪影響を与えかねない」と予想する。

クリントン・グローバル・イニシアチブに反応したのでしょうか?
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(出所:Iowa Electronic Market)

ワシントン政治状況に詳しいホライゾン・インベストメンツのグレッグ・バリエール氏は、トランプ候補が本選で勝利する確率を従来の35%から45%ヘ引き上げた。ポール・ライアン米下院議長(ウィスコンシン州)がトランプ候補と会談した後、共和党が同候補に降伏したと分析する。クリントン候補にはメール問題を抱え、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官が調査の可能性をちらつかせ続けていれば、尚更だ。

バリエール氏は、トランプ候補の米大統領就任とその影響、政策の可能性を真面目に分析すべきと主張する。トランプ候補は米国を貿易戦争に突入させ、米連邦準備制度理事会(FRB)に戦いを挑み、地政学的リスクを生み出すのか?あるいは全てにおいて交渉の余地があり、貿易交渉と税制においてマーケットが耐えうる条件を探ることができるのか、注目である。クリントン候補はというと、バリエール氏いわく「米国は明らかに変化を求めるが、クリントン候補は女性であるにも関わらずそうした変化をもたらすファクターを満たしてない」点が問題だ。事実は小説より奇なり。米大統領選までの6ヵ月間で、不透明性という霧が少しずつ晴れていくだろう。

小売関連の株価が下落している。サンクスギビング・デーのパレードで有名な百貨店メーシーズ(M)の株価は2−4月期決算を失望され11日に15%落ち込み、ノードストローム(JWN)も決算結果が嫌気され下落を回避できなかった。個人消費への不安を煽るなかで、米4月小売売上高は予想外に好調で自動車を除く数値など、こぞって力強い伸びを達成した。しかしダウなど米株は米4月小売売上高の結果に対する反応は、急落。3指数は1月以来の3週続落で取引を終えた。

百貨店などの裁量消費財の株価は落ち込む一方、P&G(PG)をはじめマクドナルド(MCD)、コカコーラ(KO)生活必需品セクターは割高を維持している。株価収益率(PER)が20倍とS&P500構成銘柄平均を25%上回るものの、公益セクターと同じくディフェンシブ銘柄としての人気を誇り、かつ安定的な配当を好感されているのだろう。米債でフラットニングが進み、かつ地方債の利回りも過去最低レベルで推移するなかで、マーケットは生活必需品関連を安全資産として活用しているようだ。

もうひとつの人気コラム、ストリートワイズはヘッジファンド業界の年次イベントを取り上げます。抄訳は、以下の通り。


ヘッジファンド・マネージャー、SALTで防御策に出るーHedge Fund Managers Are on the Defensive at SALT.

ラスベガスに建つホテル、ベラージオで今年もスカイブリッジ・キャピタル主催のヘッジファンド業界イベント、スカイブリッジ・オルタナティブス・カンファレンス(SALT)が大々的に開かれた。ゲストにはアカデミー候補俳優のウィル・スミスやNBAスターのコービー・ブライアント、演説者にはロバート・ルービンとラリー・サマーズといった財務長官経験者のほか、マイケル・ブルームバーグ前NY市長が顔を並べる。華やかさと裏腹に、ヘッジファンド関連のデータ会社プレキンの調査では約半分に及ぶヘッジファンドが年初来から損失を被る状況。遂には2−20、すなわち管理手数料2%、成功報酬20%の制度に顧客が噛み付き始めた。

カーライル・グループのデビッド・ルーベンスタイン共同創業者は、高い報酬制度の説明に務めていた。「地域社会に我々の業務を理解してもらう必要がある」—説得力が会ったかは別問題だろう。あるいは、政府に責任を求める声も相次いだ乗っ取り屋として知られ石油関連の投資で知られるBPキャピタル・マネジメントのブーン・ピケンズ氏、エクィティ・グループ・インベストメントで不動産関連の投資で名高いサム・ゼール氏などは、オバマ政権の政策すなわち金融規制改革案(ドッド・フランク法)などを成績不良の理由に挙げ、運用への疑問を避けた。

こうした発言が相次いだとはいえ、話題のトピックに関する見解は聞くに値するはずだ。例えば英国の国民投票を控え、多くの市場関係者がポンドの買い・国債の買いが適切と判断するなか、ポリゴン・ヨーロピアン・イベント・ドリブン・エクィティーズ・ファンドのリード・グリフィン最高投資責任者(CIO)は、ドイツ証券取引所の買い、ロンドン証券取引所の売りを推奨。仮に欧州連合(EU)脱退の決断が下れば、両者の合併が破談に終わりドイツ証券取引所の株価上昇を招くと発想しているためだ。

その他、ブルームバーグ前NY市長は、共和党に対し「ビジネスの党ではなくなった」と発言。今や民主党のように組合、警察、消防車、廃棄処理業者などの団体に依存せざるを得ないと語る。

米国は、もはやエマージング国なのか?サマーズ元米財務長官は「イエス」と答えていた。もちろん経済成長の話ではなく、政治状況の観点からで「政治リスクが経済に甚大な影響を与えるなんて、まるで私がエマージング市場について常に考えていたことだ。今や、米国でそうした議論が生じているように思う」。


ロイター調査でトランプ候補とクリントン候補が拮抗しつつあるとのニュースが世間を騒がせたように、共和党寄りのバロンズ誌も論調が変わりつつあります。ただし、各世論調査の平均値を示すリアルクリアーポリティクスの米国時間15日時点における数字はクリントン候補が47.3%に対し、トランプ候補は41.6%。ほぼ同率に迫った2015年12月の44.3%VS43.7%と比較すれば、クリントン候補のリードは変わらず。むしろ、メディアがトランプ候補勝利を煽り始めた感は拭えません。

トランプVSクリントン、世論調査結果のヒストリカルはこちら。

realclearpolitics
(出所:RealClearPolitics)

リスク・シナリオとしては、トランプ米大統領誕生後の米国の姿にばかり注意を払っていられません。例えば仮にトランプ候補に税金未納問題が浮上した場合、あるいはクリントン候補が問題で起訴された場合、両者は候補者として残れるのか否か?特にこの問題では、後者のダメージの方が大きいと考えられます。FBIが捜査に着手しても米司法省が取り下げる可能性があるとはいえ世論に影響すること必至でしょうから、トランプ候補を米大統領に押し上げる圧力が働きかねません。その時にトランプ候補が引きずり下ろされていたとしたら・・・もう一度シナリオ練り直しですね。

(カバー写真:Diego Cambiaso/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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