ピザを食べ連帯。サッカー監督の多様なリーダーシップ

2016年05月18日 11:30

ピザで選手をもてなすクラウディオ・ラニエリ監督(64)は典型的なイタリア人だ。一方、選手の健康管理のためクラブ内に独自のキッチンを作ったユルゲン・クリンスマン監督はまた典型的なドイツ人だ。前者は英プレミアリーグの覇者となったレスター・シティFCの監督であり、後者は米国サッカーのナショナル代表監督だ。

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▲様々なピザを並べる店(2013年9月25日、イタリア・ベルガモにて、撮影)

現在は健康食のブームだ。特にスポーツ界では健康と体力向上のため消化が良く、吸収しやすい栄養の摂取に努力するスポーツ選手が多い。そのような中で、あのレスターの監督はお国自慢のピザを選手たちにおごり、談笑しながら一緒に食べるのを好むという。ピザは消化に良くないとか、健康に良くないというつもりはないが、ピザが健康食と評価されているとは思わない。イタリア人監督にはそんな理屈などどうでもいいのだ。

もちろん、どんな健康食も美味しくなければ食べたいと思わない。美味しくないのに無理して食べればそれこそ消化不良になってしまう。美味しく、喜びながら食べれば、人間の胃袋は大抵の物を消化してしまう。

参考までに、当方は英国の冒険家、作家のベア・グリルス氏(Bear Grylls)のドキュメンタリー番組「MAN vs WILD」(日本では「サバイバルゲーム」で放映)が大好きだ。元イギリス軍特殊部隊SASのグリルス氏は困窮下で生存する術を具体的に実演する。一人で砂漠に降ろされ、そこから脱出したり、人里離れた山奥で食糧を探し、山や川で魚や虫を取りながら生き延びる。彼の姿をみていると、人間は本来、なんでも食べられる、ということが分かる

和気あいあいとピザを食べながら談笑すれば、空腹を満たすだけではなく、選手間で自然に連帯感、同胞感が生まれてくる。監督があえて選手たちに苦言を呈し、うるさく言わなくても選手たちはピザを満喫しながら自然と彼らの中で仲間意識が生まれてくる、というわけだ。イタリア人監督はそのことを良く知っているのだろう。

一方、選手の健康管理のために最高の料理人と最高の健康食を提供すべきだというのがドイツ人監督だ。選手はお腹が空けば何でも食べる。選手たちは食欲旺盛な若者たちだ。だから、健康管理を考えながら食事をコントロールするということは容易ではない。そこでFCバイエルン・ミュンヘン監督時代、クリンスマン監督はクラブ内に独自のキッチンを作り、精神統一と瞑想のために仏像まで設置している(後日、撤去)。

レアル・マドリードのFWロクリスティアーノ・ロナウドはその点、サッカー選手の模範だ。彼は自身の肉体を資本と考え、その維持のために投資している。彼は自宅で野菜を栽培している。彼の職業意識は飛びぬけている。誰よりも熱心に練習することはロナウドを見てきたトレーナーたちが異口同音に証言していることだ。

米国人女性と結婚したクリンスマン監督はドイツ人らしく規律と秩序、そのうえ米国人好みの実務的な指導力を発揮し、マイナー・スポーツだったサッカーを米国で人気スポーツにまで成長させていった。イタリア人のラニエリ監督が米代表の監督だったらひょっとしたら難しかったかもしれない。

プレミアリーグでクラブ創設133年にして初めて優勝したレスターの英雄の1人、FW・ジェイミー・ヴァーディ(29)は昔から暴れん坊であり、外国人嫌いだ。チームの同僚、日本人の岡崎慎司選手に対しても中国人を誹謗する言葉でからかうなど問題発言をしている。監督は「両選手の間で問題はないよ」という。監督は両選手の間に入って調停などしていないというが、両選手間でしこりはないという。当方の推測だが、ピザの効用ではないか。

指導者のリーダーショップは多種多様だ。レスターの場合、たまたまイタリア人監督であり、たまたま落ちこぼれ選手、暴れん坊の選手が多かったことから、あのピザが彼らの潤滑油となってチームの結束を固めていったのだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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