イエレン、FOMC議事録に合わせ利上げに前向き姿勢

2016年05月29日 18:00

イエレン

バロンズ誌、今週はカバーに米株がクラッシュしない5つの理由を掲げます。米株が急落する場合、その後に景気後退が生じるとの前提を挙げた上で説明していました。1)利上げ開始後も低金利政策維持、2)株価収益率(PER)が金融危機以前の最高値を遂げた2007年7月の16.3倍より高い20.3倍であるものの、前者は金融関連の業績悪化が織り込み済みだった、3)配当利回りは07年7月に2.6%で米30年債利回りは5.1%、現在の配当利回りは2.6%に対し米30年債利回りは3.2%と慎重な水準、4)住宅価格は07年7月の26万2560ドルに対し直近は23万2500ドル、5)原油価格は07年7月の85ドルに対し直近は49ドル——以上の点から、米株相場は現時点で崩れないと主張します。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長による講演を取り上げます。抄訳は、以下の通り。


イエレン、利上げ見通しで姿勢変化—Yellen Changes Her Tune on Interest-Rate Hikes

米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者のコーラスに、イエレンFRB議長も参加し始めた。5月18日に4月FOMC議事録が公表されてから明確になってきたように、6月利上げを示唆したのだ。同議長は「いずれかの段階で徐々にかつ慎重に利上げしていき、数ヵ月先に行うことは恐らく適切だ」と発言、3月29日の見解とは全く異なるトーンだった。3月から5月にかけ、何があったのだろうか?

FOMC声明文及び参加者が繰り返し伝えるように、経済指標次第であることは間違いない。米株相場も、反応してきた。S&P500は27日に2.3%の大幅高を示し、3月4日以来の上昇率を遂げた。2015年5月21日の最高値に、あと1.5%に迫る。原油先物相場も、50ドルを超えてきた。

しかし、FF先物が表す6月14〜15日開催のFOMCでの利上げ織り込み度は未だ34%に過ぎない。7月26〜27日開催のFOMCで、漸く57.8%という状況だ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏に言わせれば市場が十分夏の利上げを織り込んでいない点は問題だ。利上げが意識されれば銀行や保険、ノンバンク系など金融セクターがアウトパフォームする傾向が高い一方で現状は割安であり、反対に債券の代替投資先である公益や不動産投資信託(REIT)、生活必需品といったセクターが割高となっている。

利上げ後の相場環境も、懸念材料だろう。利上げ開始に踏み切った2015年12月、S&P500は2100、恐怖指数でお馴染みのVIXは14だったという。しかし利上げ開始明けの2016年1月、S&P500は10%も落ち込み、VIX指数も跳ね上がった。同じ道をたどるなら、追加利上げ後は下振れリスクが横たわる。

業績リセッションに陥った局面での利上げは、痛みを伴う場合が多い点も気掛かりだ。BAMLによると1971年以降、1976年、1983年、1986年と3回あったうち2回、1年以内に米株の下落を経験した。さらに1回目の利上げから1〜2四半期遅れて追加利上げを行った場合は、米株のリターンを低下させるパターンがみられる。

米1−3月期国内総生産(GDP)改定値は、速報値から上方修正された。しかし業績は引き続き振るわず、1.9%増と2015年10−12月期の8.1%減から小幅改善したに過ぎない。JPモルガンの経済調査チームが試算する景気後退入りの確率も、上昇しつつある。12ヵ月先のリセッション入りのリスクは、5月5日の30%から同月27日に34%へ上昇した。

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)のエコノミスト予想平均は、前月比16万人増に過ぎない。RBSによれば、通信大手ベライゾンのストライキが4万人押し下げる見通しだ。一時的要因とみなすかは別として、Fedの利上げが与える市場の影響を鑑みればメモリアル・デーの3連休を楽しむ気にはなれないだろう。

もうひとつも名物コラム、ストリートワイズは最高経営責任者(CEO)の交代にスポットライトを当てています。抄訳は、以下の通り。

CEO交代で、株価は上昇するのか?—Does a CEO Change Mean Your Stock Will Rise?

CEOは安泰でいられなくなった。幹部向け転職サービス会社スペンサースチュアートによると、1−3月期のCEO交代数は18人で前年同期の14人を上回ったという。例えばバイオ製薬大手のギリアド・サイエンシズ(GILD)、同セルジーン(CELG)、調味料メーカーのマコーミック(MKC)、産業資材メーカーのファスナル(FAST)などで、新たなCEOが誕生した。株価の下落が一因であり、S&P500のうち半数以上がベンチマークを下回る状況だ。

CEOの交代は、株価を押し上げたのだろうか?例えばソーシャルレンディング(ネットを仲介し融資を希望する個人と企業と投資家を結ぶサービス)で知られるレンディング・クラブはCEO交代発表後に35%下落、アウトドア系アパレルのデッカーズ・アウトドアーズ(DECK)も26%沈んだ。とはいえファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのジョージ・ジアナリカス氏は、不安視していない。CEO交代で、S&P500の構成企業の55%が1ヵ月から6ヵ月の間にS&P500を上回るリターンを遂げていた。CEOの交代劇は、直後の反応より長い目で見た方が良さそうだ。


イエレンFRB議長の変心は、筆者も驚かされました。4月FOMC声明文ではなく議事録で利上げサインを点灯させるなど、市場との対話を本当に重視してるのか疑問を持たざるを得ません。6月利上げに踏み切れば4月の経済指標に反応して追加利上げを決断したのは明白であり、ダドリーNY連銀総裁をはじめFOMC参加者お決まりのフレーズ「単月の指標を重視しない」との姿勢に反します。労働市場に至っては、米4月雇用統計で非農業部門就業者数は鈍化し、失業率は横ばいで、労働参加率は低下してしまいました。FOMCが掲げた「年2回」の利上げ示唆にこだわるあまり、今後の経済見通しや米株に悪影響を及ぼさなければよいのですが。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年5月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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