大学の新たな市場は団塊世代へと移行する

2016年06月01日 06:00

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※写真はインタビューに協力いただいた石川氏。

なぜ、人は勉強するのだろうか? 誰もが子供の頃に感じた疑問である。さらに親から「勉強は?宿題は?学校のテストは?塾の成績は?」と言われるたびにプレッシャーを感じて勉強嫌いに拍車がかかることもある。大学講師をつとめる石川和男(以下、石川)は、人が勉強をする理由について次のように答えている。

●「文化とはふぐちりである」の好例

――石川 勉強嫌いだったあの頃から30年以上が経ち、今では10倍以上の勉強をしていますが、当時は勉強をする意味がわかりませんでした。そんなときに見たのが金八先生シリーズ。武田鉄矢扮する金八先生が心に響く言葉を連発する大好きな番組でした。そして、ずっと謎だった「なぜ勉強しなければならないのか?」が、この番組を通じて偶然わかったのです。そのシーンは受験に悩む生徒たちに金八先生が語りかけるシーンでした。

「むかしむかし、海の近くに住んでいる一人の男が、奇妙な魚を食べた。その男はその魚を食べて死んでしまった。その魚はフグだった。周りの人たちは、そんな危ない魚を食べるからだ。馬鹿だな、と笑ったが、その男はただの馬鹿ではなかった。

死ぬ間際「どうもあの目玉を食べたのが悪かった」と言い残して死んでいった。そして、また違う男が同じようにフグを食べて死んだ。その男も死ぬ間際に「目玉も悪いけど皮も悪かったみたいだ」と言って死んだ。

次にまた別の男が、フグを食べて死んだ。そしてその男は「目玉も皮も悪いかもしれないが、骨も悪いみたいだ」と言って死んでいった。そんな人たちのおかげで今、安心してフグを食べられるのだ。

当時の金八先生のセリフは、小説家、坂口安吾の『文化とはふぐちりである』という話からの引用だった。

● 社会人が勉強を欲している

現在、大学などの教育機関に魅力的な市場として考えられているのが「社会人教育」である。以前から大学は、若者だけを対象とする教育機関ではなく、中高年層の生涯学習の場でもあるというスタンスをとっている。

大学院を例にとってみよう。現在、専門職大学院の学生は約2万人である。一方、社会人学生は8,000人程度で減少傾向にある。キャリアアップのために勉強をしたいというニーズはあるものの、受け皿としてのレベルが至っていないところが少なくない。石川は、社会人大学院の現状について次のように答えている。

――石川 社会人が仕事をしながら勉強をすることは大変です。ですが、多くのメリットが社会人大学(大学院)には存在します。学ぶことに対する意識が貪欲になり目的も明確になるからです。しかし市場の伸びは鈍化しています。

これまで社会人大学(大学院)の市場は金八先生未満の世代でしたが、今後は団塊世代へ移行するでしょう。団塊世代は、すべて定年年齢である65歳を超えました。これからお金と時間に余裕のあるシニア層が激増していくことになります。シニア層の知的好奇心を満たすようなプログラムを開発できれば、この市場はさらに拡大していくものと思われます。

教育機関は国の支援と指南をうけながら、あの手この手でさまざまな生き残り策を打ち出してきた。少子化といえども市場さえあれば大学が潰れることはない。しかし、シニア層の知的好奇心を満たすようなプログラムとはどのようなものだろうか。

――石川 今後の差別化カリキュラムは実務になると考えています。大学教員というのは、専門分野の研究のプロであって、試験問題の解法テクニックを教えるプロではありません。「簿記論」を教えている講師が、必ずしも「日商簿記検定講座」を担当できるとは限らないのです。結局のところ「モチは餅屋」とばかり、こういった実務系講座は外部から担当講師を探すことになります。そして、実務経験が豊富な講師を採用されることで知的好奇心を見たすプログラムを提供することが可能になるのです。

●本日のまとめ

一般人向けに開講されている「エクステンション講座」をみればその形態がよく理解できる。一般向け講座の数は年間3万講座以上にものぼるともいわれている。講座内容は「経営」「営業」「広告宣伝」「流通」「簿記」「絵画」「手芸」といった座学ではなく実務型の実践的なものにニーズが集まっている。

人が生涯にわたり学び・学習の活動を続けていくことが生涯学習の定義(昭和56年中央教育審議会答申「生涯教育について」)とされているが、学びの多様化は、生涯学習のあるべき姿を体現していくことになるのかも知れない。

尾藤克之
コラムニスト

※石川の新刊
一生モノの副業 この1冊でわかる大学講師のなり方』石川和男・千葉善春(共著)

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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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