安倍さんの「新しい判断」は今年の流行語大賞候補?

新田 哲史

安倍総理会見160601

どうも新田です。ごくごく一部の某アゴラメンバーが、この期に及んでも奇襲解散を仕掛ける見方をされているんですが、まあ、仮にあったとしても「釣り野伏せ」が流行語大賞にエントリーすることはなさそうです(棒…当たり前か、笑)。そういうわけで、永田町のハイライトシーンでは、いろいろと名言、迷言、珍語が飛び出すもの、それこそ小泉パパの「人生いろいろ」なんていうのもありましたが、政界発のエントリーでは、舛添さんの「第三者」「精査」と並び、今年はこれで決まりですね。

安倍首相「消費増税の再延期は新しい判断」 会見で強調(朝日新聞デジタル)
http://www.asahi.com/articles/ASJ616474J61UTFK012.html

お、おう…「新しい判断」ですか。各所で指摘されてますが、2014年の解散総選挙突入時の記者会見で、安倍さんは増税の延期はしないと“公約”してました。首相官邸サイトのオリジナルテキストはこちら。

来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。

当然、公約を撤回するわけですから、その持って行き方をどうするのか、言葉が最大の武器である政治家にとって、その真価が問われる局面の一つであるわけですが、「批判を真摯に受け止める」としつつ、再びの延期を決めるという「新しい判断」をキーワードに持ってきました。日経一面の記事では「直接の陳謝は避けた」と論評されており、公約違反の批判に対するソフトランディングを果たすためのワーディング、いろいろ模索した中で編み出したんでしょうね。コピー考えたのは、スピーチライターの谷口智彦さんなのか、広報ストラテジストの世耕副長官なのか、あるいは今井補佐官なのか、分かりませんが、結局は「上書き」、オサレに英訳すると、「アップデート」っていうノリでしょうかね。

まあ早速、J-castが、あげつらっているわけですが、歴代総理の発言したコピーで「流行語大賞候補」にエントリーされるなど、注目される要因としては、聞いている側のビミョーなズレであったり、聞いている側のソワソワ感やゾクゾク感があります。その多くは、ワーディングの出発点が、公約の撤回であったり、不祥事であったりして、ソフトランディングを目指した“言い逃れ方”の妙技のおかしみにあるわけです。

そうなると、迷言、珍言が飛び出すのは大概、政権が傾いたりしている時なわけですが、目立ってしまうのは、やっぱり民主党政権(笑)。菅直人センセの「一定のメド」発言や、野田さんの「近いうちに解散する」でしょうか。歴代ワードでも巷の子供たちに真似されるくらい人口に膾炙しまして、「宿題をいつ出すのか?」と親から突っ込まれても「一定のメドがついてから」と開き直ったり、「近いうち」と時間を稼いだりする、大人の狡さをいち早く模倣する教育効果が発揮された次第です。

念のため、もう忘れちゃっている人向けに書いておきますと、「一定のメド」は東日本大震災対応でヘタを打ちまくった菅サンが民主党の代議士会で、「大震災に最優先で取り組むことをやってきた大震災に取り組むことが一定のメドがついた段階で、若い世代のみなさんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい」と発言。一定のメドという曖昧さが波紋を呼んで「いつになったら辞めんだよ」という国民からの総ツッコミを招きました。野田さんのほうは、消費増税を巡って袂を分かった小沢さんたちから内閣不信任を突きつけられ、それを否決するために当時野党だった自民・公明と交渉。党首会談で、社会保障と税の一体改革実現の関連法案を通した後、「近いうちに解散して国民の信を問う」と発言したものでした。
総理迷言集

ちなみに、平成以降の歴代総理の迷言・珍言で流行語大賞に入ったり、大衆メディアで話題になったりした主なものをピックしてみましたよ(在職中のもの)。森さんは辞めてから10年以上経った後もご健在。浅田真央ちゃんに関して「大事な時に必ず転ぶ」などなど乱造気味で誰か止めて差し上げてほしいものです。

そういえば、宇野総理は、“三本指”なんていうのもありましたけど(良い子は大人になってからググってね)、あれは昼の永田町ではなく、夜の赤坂かどっかでしゃべった話で未確認情報なので、エントリーしておりません。ではでは。

※追記(14:00)偉大なる失言大王、ローゼン閣下を忘れていたことをご指摘受け、表を差し替えました。閣下に謹んでお詫び申し上げるとともに、漢字の読み間違え伝説をしっかりと後世にお伝えしたいと思います。

(写真は首相官邸サイトより)

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