「英国EU離脱」の是非を問う

2016年06月03日 15:07

2週間前の「G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議」でも「目先最大の政治リスク」との認識を得た英国の「EU離脱」というアジェンダにつき、先月中旬ジョンソン前ロンドン市長が「EUをヒトラーになぞらえる」形で離脱呼び掛けを行ったとの報道に触れました。

3ヵ月程前にもツイートした通り、歴史を辿ってみるに英国は欧州共同体への加盟が中々認められず、75年に残留を問う国民投票が行われたり、92年に英国が欧州為替相場メカニズムから離脱したりと、これまでもEUと英国の関係は安定的とは言えないものでした。

先週採択された「G7伊勢志摩首脳宣言」にも「英国のEUからの離脱は,より大きな国際貿易及び投資に向けた傾向並びにこれらが生み出す雇用を反転することになり,成長に向けた更なる深刻なリスクである」と明記されたわけですが、本当に離脱するとなったらば英国経済にとって様々な面で相当なダメージになると私も考えています。

今日に至るまでも離脱派・残留派の拮抗続く状況の下、時々の世論調査の結果を受けては英国の不動産株が上昇したり、ポンドが下落したりといった具合です。今月24日判明する投票結果で離脱派が勝利を収めるとなりますと、株式市場や為替市場あるいは不動産市場が暴落する可能性も想定されましょう。

先月13日IMFが公表した「年1回の英経済の状況に関する報告書」を見るまでもなく、離脱支持が投票多数を占めた場合は「英国内への資金流入減や生産停滞につながり、過去最大規模にある経常赤字がさらに拡大する恐れ」もあるでしょう。

また英国の中央銀行、イングランド銀行(BOE)のカーニー総裁等が指摘するように「成長率が大きく下がり、インフレ率が顕著に上昇する可能性」は言うに及ばず、場合によっては「景気後退に陥るリスクもある」のかもしれません。

IMFのラガルド専務理事が「英国のEU離脱に関して良い点は見当たらない」と強調するまでもなく、その決断が英国経済にポジティブに働くことは何一つないと言っても過言ではありません。

英国というのは昔から主体性を持った民族として在り続けるべきだとする価値観が非常に強く、他所に振り回されるのは真っ平御免と一種独特のディシジョンを下すような国民性を有しているように思われます。それはやはり嘗て7つの海を支配して、「英国の領土に日没することなし」と言われて世界を制覇した国ですから、そうした残滓が色濃く残っているからだと私は考えます。

もっと言うと、英国を構成する四地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)は夫々に中々難しいところがあって、例えばスコットランドは未だスコットランドなりの歴史・伝統・文化というものを根強く持っていて、英国よりの独立を目指す動きを強硬に訴え続ける住人も結構いるぐらいです。

英国には私自身も、ケンブリッジ大学経済学部在籍時およびワッサースタインペレラ社常務取締役時代に住んでいたわけですが、彼らは自主独立といった類の意識が価値観として大変強い民族であると思います。

従って経済的に合理だと思われる事柄が、必ずしも通って行かない部分もあるような気がします。伊勢志摩サミット閉幕後の記者会見でキャメロン首相も強調していたように、「EUにとどまって枠組みの変更を進めていくことこそ、英国の国益になる」にも拘らず、最終的にEU残留という意思が示されないかもしれないわけです。故にその投票結果を見通すは余りに難事であると言えましょう(いま私自身は結局EU残留に決まる?と見ていますが…)。

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