追加利上げ先送りで、投資すべきクローズ型ファンド

2016年06月05日 06:00

クローズ型ファンド

バロンズ誌、今週はカバーに新規株式公開(IPO)の減少を取り上げる。未上場のスタートアップ企業で評価額が10億ドル以上の企業を指す”ユニコーン”はウバー、エアビーアンドビー、ドロップボックスと147社を数えるが、年初からIPO自体は減少傾向にある。5月まででわずか31件と、2015年5月の69件を下回り、2014年5月の115件からはほぼ4分の1という有様だ。米株市場が年初からの急落を経て、”根拠なき熱狂”の状態から程遠い点が理由に挙げられる。例えばピークを打った1996年の677件を含む90年代はITバブル前段階にあり、2000年に崩壊。2004年にIPOが盛り返してから4年後には、金融危機が直撃したものだ。その一方でベンチャー・キャピタルを背景とした合併・買収(M&A)は安定的に伸び、過去10年間の平均値は120件のところ、今年1〜3月期には112件に至る。詳細は、本誌をご参照あれ。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週のテーマは米5月雇用統計でFedが利上げしづらい環境となったなかで選ぶべきクローズ型ファンドを紹介する。抄訳は、以下の通り。

最大で利回り10%を誇る、9つのクローズ型ファンドとは—9 Closed-End Funds With Yields of Up to 10%

米5月雇用統計は、市場参加者に衝撃を与えた。失業率が前月の5.0%から4.7%へ低下した理由も、バーニー・サンダース候補を米上院議員に選出したバーモント州の人口を超える66.4万人が労働市場から撤退したことが大きい。ただし、金融市場は大荒れせず。ダウは0.2%安にとどまり、VIX指数は上振れを経て年初来のレンジ下限で引けた。ただし米債利回りやドルは急低下し(ドル円は2%以上も円高が進行)、同時に利上げ織り込み度も6月を含めおしなべて低下し、年1回の利上げ織り込み度は56.4%へ上昇した。

グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストは、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)において財生産業の減少に注目。2010年2月以来で最大の減少幅だったとして「1969年11月、1974年5月、1989年10月、2000年11月、2007年5月を彷彿とさせる」と指摘する。いずれも、景気後退の前触れだった。

財生産業と製造業、1980年からの増減数ではまだ安定しているように見えますが・・。
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(作成:BLSよりMy Big Apple NY、単位は千人)

米5月雇用統計の結果は散々だったとはいえ、勝者が存在する。

エバーコアISIのリチャード・ロス氏は、中国の人民元が対ドルで上昇したと指摘した上で「2015年夏と今年序盤に人民元が対ドルで下落し市場の混乱を招いた過去を踏まえれば、良い兆候」と説く。

不動産王ドナルド・トランプ氏も、勝者と言えるだろう。ポール・ライアン米下院議長が1ヵ月の膠着状態を打ち破り同候補に支持表明し、共和党の米大統領候補の正式指名に一段と近づくなど追い風が吹いている。さらにホライゾン・インベストメントのグレッグ・バリエール氏いわく、米5月雇用統計は「米経済が停滞しつつあるというトランプ氏の主張が正しいことを証明した」。民主党のヒラリー・クリントン候補にとっては、米経済を活性化させる提案ができるかが課題となろう。ひとまず、6日に予定する米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長がどのような見解を表明するか、注目だ。

年金をはじめとした機関投資家は、追加利上げが先送りされる気配が漂うなか高いリターンを得るために苦戦している。10兆ドルもの資金が流入する債券市場はマイナス金利時代を迎え、株式市場でのパフォーマンスも1桁が見込まれる状況だ。そこでヒルトップ・セキュリティーズのマーク・J・グラント債券ストラテジストが注目する銘柄こそ、クローズ型ファンド。リターンが最大10%に達し、全てシニア債であるため低リスクで、優秀なファンド・マネージャーに運用されている点で他商品より魅力的な以下の9銘柄を選好するという。

AllianceBernstein Global High Income fund (AWF) 利回り8.11%、ディスカウント率 6.77%
BlackRock Corporate High Yield (HYT) 利回り8.16%、ディスカウント率 8.85%
BlackRock Debt Strategies (DSU) 利回り6.76%、ディスカウント率 10.80%
Dreyfus High Yield Strategies fund (DHF) 利回り9.85%、ディスカウント率 3.58%
Neuberger Berman High Yield Strategies fund (NHS) 利回り8.85%、ディスカウント率 12.43%
Pimco Dynamic Credit Income fund (PCI) 利回り10.60%、ディスカウント率 8.74%
Prudential Short Duration High Yield (ISD)  利回り8.90%、ディスカウント率 9.90%
Prudential Global Short Duration High Yield (GHY)  利回り8.49%、ディスカウント率 7.39%
Putnam Premier Income Trust (PPT) 利回り6.60%、ディスカウント率 10.08%

レバレッジを踏まえれば、クローズ型ファンドは株式よりリスクが高いとの声もある。しかし、クローズ型は割安であり利回りも米株の安全資産とされる公益セクターや生活必需品の配当利回りより高い。現代は普通の時代とは言えないが、常識的な手法でリスクが把握しやすいところにこそ、投資機会を発見できるのではないか。

もうひとつの米株に特化したコラム、ストリートワイズはアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートと正反対に米株での推奨銘柄を取り上げます。抄訳は、以下の通り。

債務が高水準でも、マクドナルド、ハーシーズ、UPSが狙い目—Despite High Debt, McDonald’s, Hershey, UPS Look Good

科学者が善玉を発見するまで、全てのコレステロールが悪いと判断されていた。債務についても、同じことが言える。2015年に金融セクターを除く大手1500社は、5000億ドルもの債券を発行し金融危機以前のピーク3500億ドルを突破した。しかし、金利支払いが困難になったかと言えば話は別だ。

確かにシェール企業をはじめとしたエネルギー関連は原油安で業績不振に陥り、利払いが困難となった。ただモルガン・スタンレーによると、S&P500構成企業となればインタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益+受取金利及び配当金など金融収益÷金利支払い)は2015年末に9.4倍と、過去平均の6.5倍を上回る。Fedの低金利政策のおかげで、金利支払い負担平均がたった3.9%であるためだ。しかも社債発行は長期が主流で、ドイツ銀行のストラジテストであるデビット・ビアンコいわくS&P500構成企業の平均償還時期は7年以上となる。S&P500構成企業は3.6兆ドルもの社債を発行したとはいえ、償還を迎える社債は毎年全体の10〜15%に過ぎない。従って、利上げサイクルに入ったFedの金融政策が影響を及ぼす可能性は小さく、ビアンコ氏は「企業のバランスシートは経済への脅威を与えるものというより、安定性を与える」と語る。こうした観点から、ストリートワイズはタイトルに挙げた銘柄に買い推奨を示した。

——バロンズ誌が掲げたクローズ型ファンド、および株式銘柄は筆者の見解ではありませんのでご留意下さい。今回のアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、やはり弱気目線で景気後退の可能性をちらつかせていました。筆者は2017年上半期まで景気後退に陥るリスクは低いとの判断を変えていません。確かに米5月雇用統計や個人消費をはじめ怪しい兆しが見える一方、可処分所得における家計債務は低水準で、企業のキャッシュ水準に赤信号が灯っておらず、Fedは利上げ局面とはいえ4月FOMC議事録に加えられた1段落を踏まえると不測の事態には政策転換すら辞さない構えです。目下、英国の国民投票や米大統領選動向が与えるインパクトも懸念されますよね。Fedは夏の利上げに前向きな姿勢を打ち出すものの、経済下支えのため結局は2013年と2015年の焼き直しとならざるを得ない——筆者は、こうした見解を変更していません。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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