危険な表現規制-ヘイトスピーチをめぐる混乱を憂う

2016年06月06日 19:14

焚書は序章に過ぎない。本を焼く者はやがて人間も焼くようになる−ハインリヒ・ハイネ(1797−1856)

気味悪いデモが増えている

以下の5つのデモの写真を見て、読者の方はどのように思うだろうか。

一つ目は14年夏に東京で行われた安倍政権の批判デモ。安倍首相の生首の人形をかざして行進し、ブルドーザーにひかせた。これは学生団体のシールズの前身グループ、人種差別反対を掲げるグループが参加。機関紙「赤旗」に掲載していることから考えると、共産党が支援しているらしい。共産党参議院議員の吉良よし子氏も参加している。写真は全部SNS上に参加者が掲載したものをまとめたもので、ネットに流布していた。自分たちの残虐性と異様さに共産党とその関係者は気づいていないようだ。

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二つ目は13年の共産党の「赤旗祭り」の写真。14年の衆議院選挙で当選した共産党の池内さおり議員が自らのSNSに掲載した。ヒトラーに模した安倍首相の顔を殴り続けている。共産党は暴力革命政党ではないと最近主張するが、運動は暴力的だ。

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三つ目は昨年のデモで、民進党の有田芳生参議院議員がSNSに掲載した写真だ。安倍首相をヒトラー呼ばわりしている。政治家をヒトラー呼ばわりすることは最大限の侮辱だ。議員という立場にふさわしい行為ではない。

CkFjK0AVAAAAhTG.jpg-large四つ目は精神科医の香山リカ氏。反差別デモへのデモで、怨霊に取り憑かれたような表情でわめき、中指を立てている。気味が悪い。(筆者記事「本質からずれる日本の社会運動-香山リカの奇行から」)

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五つ目は撮影者不明ながら、ネット上で流布した写真だ。13年ごろの東京都新大久保のデモの光景のようだ。一社会集団の抹殺を求めている。もちろんこうした事件は日本ではまだ起きていないものの、気味が悪い。

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いずれの姿も部外者には大変に不快だ。筆者は法律を知らないが、残念ながら最後の殺人を教唆する以外は、刑法上取り締まれないだろう。

日本でデモはなじまないし、それを熱心にする人はちょっとずれた人が多い。私たちはこういう言論を批判するべきだが、強制的にやめさせてはいけない。「あなたの言うことには反対だが、それを言うことは認める」という態度が、言論の自由の有るべき姿だ。

 川崎でデモ中止騒動、言論の自由への危険

こうしたおかしな人々の言論の暴力によって、言論の自由が危機にさらされている。

特定の人種や民族を標的に差別をあおる「ヘイトスピーチ」の解消に向けた対策法が6月3日に施行された。言論の自由を抑制しかねないために、法律は理念法にとどまって、具体的な規制、罰則はなかった。在日外国人の権利を守るため、この程度の規制はやむを得ないと思う。

ところが6月5日、川崎市で問題が起こった。在日朝鮮人排除を訴える集団が、在日の生活圏に近い場所での公園での集会を計画した。法の施行に合わせた嫌がらせだろう。

それに対して、神奈川県川崎市で福田紀彦市長の判断で市営公園の使用を許可せず、さらに横浜地裁川崎支部が、在日韓国人が理事長を務める社会福祉法人事務所周辺の差別デモに禁止の仮処分を出した。表現の事前規制として共に問題があるものの、仕方のない判断だろう。在日朝鮮人の方の生活圏で、日の丸を掲げた暴力的な集団が行進するというだけでも、住人に恐怖を広げる。これは許されることではない。

ところが自称「行動する保守」という集団が、デモの禁止された地区と近い川崎市中原区で、6月5日にデモを企画した。彼らの主張では左派政治集団への抗議デモとしていた。

報道などによれば、デモ集団は20人ほど。それを6月5日にカウンターと称する数百人が事前に取り囲み、路上に座り込むなどして騒ぎになった。神奈川県警の「説得」に応じてデモ主催者は中止を決めたという。また東京渋谷でも、同様の騒擾があった。

映像や写真を見ると、「カウンター」の側の行動は座り込みという非暴力的なもの(これでも違法)にとどまらず、圧倒的多数で少数を取り囲み、罵声、もみ合いなど物理的な実力行使を行って中止に追い込んだ。(NHKニュースより)

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現場にいて騒動を扇動したのは共産党の地方議員、社民党の福島みずほ参議院議員、上述の有田芳生参議院議員だった。有田議員はヘイトスピーチをめぐる問題で、各所でトラブルを起こしている。今回も騒ぎ、勝利だと喜んでいた。

ここに矛盾がある。有田議員、また共産党は上記写真のような暴力的なデモを繰り返し行っている。それが他人のデモを攻撃し、暴力的にやめさせた。そのデモに問題はあっても、言論の自由の観点から非常に危険だ。さらに、彼らの二枚舌、二重基準に驚く。ヘイトスピーチを批判する人々が、日本人へのヘイトスピーチを行っている。

前提として、人種差別を私は嫌悪し、それをする人々を軽蔑し、批判する。この川崎でのデモ主催者は、そうした前歴がある人や団体のようなので、在日韓国人の生活圏に近づけないなどの、最小限の表現の規制はやむを得ない。もちろん法律上は問題があり、憲法の理念に反するかどうかの問題は、限りなくグレーだろう。

ただしメディアが人種差別はいけないというありきたりの報道しかしないので、この文章を書きたい。カウンターと反対する人が過激化し、正義の名を騙ってさまざまな問題を引き起こしている。その面も批判されなければならない。

どの人種差別主義者のデモも数十人の規模だ。日本社会は健全でこんな人間たちを、まともな人は誰も相手にしていない。前述の公園使用の不許可などの形で、このような人々の抑制は現行法による対処ができるし、無視しても平気なチンケな政治影響力しかない。彼らは注目を集めたがっている。相手にすることは、彼らの術にはまっているのだ。

有田氏のような一部政治家や左派政党は7月の参議院選挙の前に騒動を起こし、目立つことで政治的利益を得ようとしているのかと勘ぐりたくなる。人種差別主義者も、またカウンターとする人々も何のために騒動を引き起こしているのか。正義感だけとは思えない。なんらかの経済的、政治的利益を得ようとしている人々がいるのだろう。この騒動が過激化することによって、日本人も、在日外国人も、誰も利益を得ない。

なぜ自分で自らの首を絞めるのか

日本の差別主義者の動きに対して、前述の4つの写真に登場した人々が「人権を守れ」といきり立つ。それによって起こる騒動の方が社会を傷つけるだろう。6月5日のデモ中止は、悪しき先例になってしまうかもしれない。デモを反対派が警察と共に潰した。この先例を使って、表現の規制を警察と共に行う可能性が生まれた。冒頭の4つの写真、共産党や有田芳生氏、香山リカ氏の表現を、気に入らないと止めることは、川崎のデモを止めたことと理屈の上では同じになる。

おかしなデモは現行法で対応し、またそれによる社会騒擾を止めるべきだ。デモでのつぶし合いはやめるべきだ。国家権力の言論の自由への介入は最小限にしなければならない。それは表現の自由をおかしくしていく。私たちの生活で規制が増え、自由が抑制されることになるだけだ。

そして人種差別主義者も、カウンターと称する人も、多くの人と日本社会に迷惑をかけている。自省し、行動を自粛するべきだろう。私たちの大半は、この騒擾に関係も関心もない。うるささと交通妨害で迷惑なだけだ。

おかしな主張を強制的に潰すのではなく、その異様な姿を白日の下にさらして、その活動が社会的に意味のないことを示して無力化していかなければならないだろう。迂遠に見えても、それが言論の自由を守りながら、社会秩序を維持する道だ。

「焚書は序章に過ぎない。本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる」。1933年にナチス・ドイツによって反ドイツ的と認定された本の焚書の行われたベルリンの広場にこの警句が刻まれている。恐ろしいことに、ハイネの本を含めて焚書をしたナチスは、本当に人を虐殺し、焼いた。非人道的な行為には、前兆やおかしな人たちの事前の蠢動があるということだ。そして言論の自由の制約は、他の人権侵害につながっていく。

最近、正義を唱える人の異様な行動が増えていないだろうか。この混乱の先に何があるのだろうか。より大きな人権侵害がやってくることは避けなければならない。

石井孝明

ジャーナリスト

メール:ishii.takaaki1@gmail.com

ツイッター:@ishiitakaaki

 

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