復帰したジョージソロス氏が稼ぐネタ

2016年06月10日 09:34

ジョージ ソロスといっても知らない方も多いかと思います。伝説の投資家、いや投機家といったほうが良いのかもしれません。私はあえて「不和で儲ける男」と言っておきましょう。そのソロス氏が慈善家としての余生を堪能するだけでは我慢できなくなったらしく、85歳にしてトレーディング復活となったようです。

ソロス氏は1969年にソロスファンド(のちのクォンタム ファンド)を立ち上げ、ここから彼の第一幕である驚異的な収益を築きその名を世界に轟かせます。そのリターンは10年で4200%ともいわれ、論外なレベルであります。が、その不屈なファンドはパートナーであるジム ロジャーズと別れたことで大きな挫折となり、ファンドは巨額の損失を出します。

ここまでか、と思われたソロス氏がその名前を歴史に残した史上最大の賭けがイギリスのポンド危機に乗じたポンドの売り作戦で「イングランド銀行をつぶした男」としての異名をとったのであります。100億ドルの売り仕掛けで10-20億ドルの利益を上げたとされます。その後、97年のアジア危機でも売り方に回り大きな利益を上げたようです。

今年の初め、そのソロス氏が久々に注目を浴びたのは中国のハードランディングは避けられないとし、中国元の売りを公言したことでしょうか?その中国元は対米ドルでは14年1月を境に元安に転換しており、現在もそのトレンドは変わっていません。ソロス氏が為替のトレンド変更から2年もたってからその勝負に打って出るには何らかの自信があるからなのでしょう。

今回、復帰にあたり、二つの不和の可能性を提示しています。一つは中国、もう一つは欧州であります。不和に強い男である故にその匂いを嗅ぎつけて崖から落ちそうな人を背中から押し出すつもりなのでしょうか?

中国については市場と国民を区別して考えなくてはいけません。中国が潰れるという本は日本を中心に多く出回っていますが、潰れてなくなるわけではなく、潰れるのは市場でそれを支えた政府がさらに窮地に追い込まれるということです。もちろん13億の民が消えていなくなるわけではありません。

市場に於いて恣意的コントロールは一般的には難しくなってきたのですが、中国ではまだ可能であります。恣意とは実態と公開された数字にかい離があることを意味しますが、このかい離をアービトラージ(裁定取引=価格差を利用した取引)すれば大きく儲けることが論理的には可能であり、ソロス氏はここに目を付けたのではないかと思います。

有り余る資材、不動産バブル、世界の工場の終焉、資本逃避など良い話はほとんど聞こえてこないのに政府が買い支える株式市場、そして政治力満載の為替相場は確かに何かのきっかけでつまづく可能性は大いにあります。

ではもう一つの不安である欧州です。ソロス氏は目先に迫ったイギリスのEU離脱についてはないだろう、と想定しています。しかし、PIIGS,ギリシャ問題などの経済格差に端を発したEUの構造的問題、難民問題からフランスやオーストリアでの極右政党の躍進、イギリスはスコットランド独立運動が起きるなど欧州の各地域で成功こそしていないものの不和のフロス(泡)があちらこちらからぶくぶくと湧き上がっている実態は何かを予言していると見ているのでしょうか?

アメリカでもトランプ氏やサンダーズ氏の活躍ぶりは明らかに想定外であります。

その点からすると安倍首相がG7の際に述べたリーマンショックとの比較論はソロス氏にとって大変ありがたい援護射撃となるハト派(弱気)発言ということになります。海外では通常強気の姿勢(ブル)を示すことが指導者の基本であります。世界経済に不安感があるのならそうだとは述べずにより明るくする手段や改善方法を提示するのが政治家や経営者の基本スタンスであり使命であります。ところが安倍首相の発言は不安な社会を増長してしまい、本来ならタブーに近い発言であったのです。

欧州と中国、そこには共通点がないわけではありません。いびつな労働市場と行政の構造的硬直体制であります。一言で言えば過去を踏襲し、フレキシビリティがない点でしょうか?ところが急速な変化、IT化や流通、国際間の物流やネットビジネスなどでビジネスの屋台骨が根幹から変化しているのに対して欧州、中国は対応が遅れています。(日本もそうかもしれませんが、努力はしています。中国はそれを認めず、否定しています。)

マラソンで集団グループについているが実はもうアップアップ、いつ、遅れだすとも限らないとソロス氏は見ているのでしょうか。

ソロス氏のように巨額の資金を動かすことでそれに同調する他のファンドも当然出てくるため、実際に動き出すとあり得ないほどの力を発揮することも可能です。中央銀行を袖にするのですから怖いもの知らずなのでしょう。それは機動性でもあります。政府、中銀は一旦方針を作るとそう簡単に動きを変えられません。巨艦故の弱さです。

私は基本的に他人の弱みに付け込んで更にドツボに押し込むことは人道的に受け入れられません。もちろん、私もショート(売り建て)は投資のテクニックとして時々やりますが、それはあくまでもチャート上などの技術的理由であり、それもごくたまにしかやりません。

欧州にしても中国にしても盤石の体制ではない中で世界をかく乱させることが道義的に許されるのか、これは議論になるかもしれません。90年代は可能であっても現代は人々の考え方も変わってきています。ソロス氏のスタンスは弱みに付け込む金儲けであってそのお金が慈善事業に回ってもあまり嬉しくはないでしょう。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月10日付より

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