現金決済の金融規律

2016年06月14日 11:30

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融資は、銀行等が連続的な借換えに応じれば、事実上、半永久的なものにもなり得る。では、連続的な借換えにおいて、弁済という行為は、実質として、あるか。

これは、最高度に金融の機微にわたる論点であるが、要は、金融規律の問題であると思われる。金融規律を支えるのは、事実としての現金の力である。現金による決済は、金融規律の問題を超えて、より広く、商取引の規律を支える極めて重要なものなのである。

例えば、差金決済の問題がある。買ったものを、直ちに転売して、差益を得る場合、差金だけを決済すれば便利だが、そのようなことを安易に認めれば、小さな元手での投機的取引の横行を招き、商業規律の弛緩を招きかねない。故に、買い付け代金と売り付け代金は、それぞれ独立に決済すべきなのである。つまり、買い手に対して、買い付けるだけの資金を用意することを求めることで、取引の規律と安全性を維持しているのだ。

ところが、特殊な場合として、市場の流動性を豊富にするために、投機資金の呼び込みが必要なときもある。先物市場や信用取引は、そのいい例である。だから、先物市場では、差金決済がなされるのである。つまり、投機のためには、差金決済が望ましいが、正常な取引では、差金決済は認め難いのである。これが取引にかかわる金融規律だ。

同様に、融資契約書を書き換えるだけで、弁済と新規融資の実行を擬制するならば、それは、弁済と新規融資の差金決済であって、融資の本旨として、あるいは金融規律の問題として、認め難いということである。弁済というのは、現金が債務者から債権者へ移動しなければならず、新規融資というのは、現金が債権者から債務者へ移動しなければならないのである。

金利もそうである。金利は現金で支払われるべきで、元本に加えてはいけない。現金による金利の支払いこそ、金融規律の基本である。満期のない永久債も、それが債券であるためには、定期的な金利の確実な支払いが必須要件になっているのである。

では、金利を元本に加えていって、満期時に元利一括弁済することは、絶対にないかというと、そうでもない。例えば、リバースモーゲージは、担保資産の売却による弁済を前提にしている特殊な住宅融資だが、債務者の弁済能力ではなくて、担保資産の弁済能力を基礎にした融資である以上、期中に現金による利息の支払いを行わず、満期時に元利合計を一括弁済することにしても、融資の性格上、おかしなことではない。

しかし、債務者の弁済能力を基礎とする通常の融資においては、定期的な金利の支払いこそが債務者の弁済能力の定期的な確認である以上、金融規律の維持のためにも、現金による金利支払いは、絶対要件になるのである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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