日本企業も英国脱出の準備を

2016年06月19日 06:00

イギリスのBrexitBritainExiの合成語)、つまり、EU離脱の是非をめぐる国民投票が23日(木)に近づき世界は固唾を呑んで見守っている。日本にとっても離脱となれば、円高が進み株は暴落することが予想されているので人ごとではない。

しかし、希望は数日前よりは少し明るくはなっている。離脱反対派の労働党のジョー・コックス下院議員が射殺された事件を受け、国民投票に向けたキャンペーンは中止され、冷や水を浴びせられ、雪崩を打って離脱へと言う流れではなくなった。しかし、まだ予断を許さず五分五分だ。

EUのような地域統合は、理論的には国際的なソーシャル・ダンピングを減らすはずだし、そういう効果も出てないわけではない。ただ、タックスヘブンでもEU統合のおかげでそれが下火になったという気分がしないのも事実だ。

また、移民については、明らかに危険だとか社会的に問題を引き起こしても、人権の塹壕に籠もってしまって対策を講じないなら庶民を説得できないのも当然だ。

それは、アメリカのトランプ・サンダース現象(貧しい白人を基盤にしていることも含めて私は同じ根だと思う)も同じで、多くの庶民が感じているような問題意識を頭ごなしに否定するから、彼らのようなポピュリストが力をもつのだ。

ところで、EU離脱ということになれば、どうなるのか。もちろん、イギリスにとっては非常な不確定性が増すだろう。なにより、新しい制度がどうなるかすべて交渉しなければならない。また、スコットランド独立論が勢いづくのも間違いない。

それに対して、ヨーロッパ側にしてみれば悪いことばかりでない。イギリスがいなくなることによって、EUの意思決定は迅速になるだろう。また、シティーの機能のかなりがドイツに移るかも知れないし、日本企業などもイギリスから緩やかに撤退して大陸にいくだろう。

英語もEUの公用語から外れてフランス語の世界に戻ると私はうれしいのだが、この点に関しては、マルタとアイルランドが英語を公用語のひとつにしているので規定上、EUの公用語であり続けるので残念だ。

イギリスは、話し合いでこれまでより不利に扱われないような協定が可能だと思っているようだが、そんなことをしたら、他の国の離脱を招く恐れがあるので、そんな甘い顔できるはずがないので、かなりイギリスにとって辛いことになるだろうし、日本企業もイギリス以外に移る選択肢をきちんと用意することは間違いなく必要だ。。

それにしても政治家は国民投票というものにどうして楽観的に引き寄せられるのだろうか不思議でならない。直接投票はいちばん民主的に見える。しかし、民主主義はその結論に正統性を与えるが結論の正しさを保証するものではないし、まして、レファレンダムによる直接民主制は断片に対する判断で全体を動かしてしまう危険に満ちている。

にもかかわらず、政治家は功名心からレファレンダムをやりたがって、取り返しのつかない結果に呆然とする。

キャメロンはスコットランド独立につづきEU離脱の投票という冒険をして国家とヨーロッパを危うくしている。そもそも、キャメロンはEUからイギリスの例外的特権を得るために、国民投票という脅しを使って自分で罠にはまったのだ。

そもそも大衆は、自分たちで好きなようにやれたらうまくいくとおだてられたら賛成するものだ。市町村合併の投票でも賛成を得るのはなかなか難しいし、どっかの地区を分離する住民投票をすればかなりの市町村が分裂してしまうだろう。

EUから脱退してイギリスに良いことなどないというのは頭で考えれば分かる。しかし、庶民は移民がいなくなったらすべて問題は解決といわれればそうかなと思う。そういうものなのだ。

(画像:「betitaliaweb」より/アゴラ編集部)

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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