補助金無しで世界大学ランキングを上げる方法

2016年06月22日 06:00

「大学のレジャーランド化」とは以前からよく言われるが、最近の大学生はそうでもないらしい。就職難を反映してか、「TOEIC」「簿記」「企業インターンシップ」に励みながら単位も取らなければならず、就職試験で成績表をチェックされるなど大変らしい。一方、「テープレコーダーのようにボソボソと教科書を読み上げるだけの授業」「学会と称してしょっちゅう休むが、研究論文は10年以上書いていない」「そもそも英語の論文など書いたことがない」という大学教授は日本では珍しい存在ではない。中には「エクセルやパワーポイントを知らない」「Eメールを使ったことがない」教授も実在する。そして、現在の日本の法律では「Eメールを使えない」「授業がヘボい」「研究論文を書かない」程度で既に教授になった人材を解雇・降格することは非常に困難であり、日本の大学は今や「大学教授のレジャーランド」でもある。

イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が発表したアジア大学ランキングによると、昨年トップだった東京大学が7位に転落し、その他の日本の大学も全体的な後退が目立った。「ハーバード大」「ケンブリッジ大」に負けるならばともかく、シンガポールや中国に負けるのはショックだったのだろう。大学関係者はここぞとばかり「研究費を増やせ!」「給付型奨学金の充実を!」と叫んでいる。要するに「ランクを上げたければ金を出せ!」と言いたいらしい。

安易に金を出す前に「シンガポールや中国の大学にあって、日本にないモノがあるよね」と私は言いたい。「正規/非正規の格差」とは現在の日本のあちこちに歪をもたらしているが、教育…なかでも大学教官という分野での格差は大きい。「テープレコーダー教授」の雇用は定年まで守られ、退職後の年金や、死後も配偶者の遺族年金が法律で保証されている。一方、これから大学教官を志す若手研究者は、非正規の助教ポストや「一コマいくら」の非常勤講師ポストしか与えられず、「テープレコーダー教授」よりはるかに研究実績があっても、「3年たったら正規雇用にしなければならないけど、そんな予算ないので」と一方的に雇い止めされたりもする。日本の大学には「働かない中高年正規vsヘトヘトの若手非正規」という日本社会の縮図のような格差があり、「低能教官の降格」「無能教官の解雇」「有望な若手と入替」というシステムがない。そして「テープレコーダー教授」や「ヘトヘトの非正規教員」から、質の高い授業や論文は期待できないだろう。

近年、何かと注目される秋田県の国際教養大の成功の一因は、「全教員3年契約(再任あり)」という「ダメ教官を淘汰するシステム」だと私は思う。文部科学省も本気で日本の大学のランキングを上げたいならば、「アベノミクス、旧三本の矢」の一つだった「解雇規制緩和」に真剣に取り組んで、ダメ教官には去ってもらい、空いたポストを老若男女がフェアに競争できる機会を提供すべきだと思う。

画像は東京大学ホームページより

フリーランス麻酔科医

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、まだまだ少ない女性医大教官としての経験を記している。

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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