小さくなる世界

2016年06月27日 10:26

英国がEU離脱を決めた際、友人からSNSで「どうなるのだろう?」と投げかけられました。私の答えは「小さくなる」の一言です。たったこれだけの言葉ですが、たぶん、これからの世界を一番うまく言い表している気がします。

英国国内で独立運動が活発になっているようです。北アイルランド、スコットランド、リバプール、ケンブリッジ、ロンドンとすでに5か所でそののろしが上がっています。年齢による残留派と離脱派の相違も指摘されています。若年層は残留に、高齢者層は離脱の声が強く、家族の中でも親と子供が別々の意見に分かれるというケースもあったようです。挙句の果てに選挙やり直しの署名が320万人とは驚いたものです。

独立派の多くは再びEUに加盟してEUとのビジネスを続けるというものであります。私はその発想に一つだけ大きなリスクがあることを指摘しておきます。それはEUの体制そのものが今までのようにはもう存続できる保証がどこにもない、ということです。スコットランドなどが独立してEUに加盟しても経済規模が小さく、単体国家としては旨みに欠けるでしょう。

欧州には小国が実にたくさん存在します。アイスランド、アイルランド、オランダなどはまだ大きい方で、バチカン、モナコ、サンマリノ、リヒテンシュタインなど本当に小さな国家の割拠状態にあるといえます。欧州で14番目に大きな英国が分裂すればそれら新しくできる国は小国の仲間入りすることになります。それは民族問題と共に閉鎖的で他と相いれない根本思想が復活してきたともいえないでしょうか?

同じことは今、総選挙を行っているスペインでも言え、カタルーニャ地方の独立機運は高まるかもしれません。将来的にベルギーの分裂もあるかもしれません。最近ではチェコスロバキアが1993年に分離しています。旧ソ連からも多くの国が独立しました。つまり欧州では分離独立は別に珍しいわけでもなく、我々が大騒ぎするほどの事態ではなく、今回、たまたま英国という日本人にも親しみがある先進国でそれが展開されていることで驚いているだけでしょう。

では今後の対策です。私も何がベストなのかいろいろ考えを巡らせているのですが、ロンドンだけを独立させ、シティの特権を維持し、タックスヘイブンとしての特殊地位を維持したほうがよいかと思います。そして仮称「ロンドン国」がEUに再加盟します。残った英国は連邦制にし、各地域の独立統治性をある程度認めたうえでロンドン国と地域の特性に合わせた提携を結んでいく方式が面白いかもしれません。つまり、ロンドン国を通じてEUの特権を間接的に得られる権利を確保できる合意をEUと今後2年かけて交渉する案です。

私は「緩い関係」の時代がやってきたと再三再四このブログで申し上げています。EUの最大の弱点は「きつく縛った関係」であることなのです。TPPもしかり。今はフレキシビリティを持たせてもっと都合の良い時だけ都合に合わせてくっついたり離れたりできる関係のほうが良いと思います。高齢者の方から「何を言っているんだ」とお叱りを受けると思いますが、時代は明らかに軽いつながりに向かっています。

日本と中国、韓国の関係でもそうでしょう。時代に合わせて近づいたり遠ざかったりいろいろです。そこにポリシーがあるのか、といえば一部の政治家や感情論をも振りかざす活動家は声を張り上げるでしょうが、大多数はその時の都合で動くものなのです。尖閣の時にあれだけ荒れた日中関係が爆買い、韓流ブームが嫌韓、そして今、グーッと収まり韓国からの日本への観光客も大幅に増えました。

この緩い関係はだれが作り出すのかといえば案外、国民のボイスであり、民間の力のほうが大きかったりするのです。政府の努力はそれを後押しするに過ぎないことが往々にしてあります。なぜこうなったか、といえば人々が世界を旅行し、世界の情報が繋がり、民間ベースで宗教も人種も乗り越えた付き合いが急速に発展しているからでしょう。

企業は国境を超え、様々な国の人を雇い入れ、一つの目標である企業の成長に邁進します。これは国への所属意識とともに企業への所属意識も当然生まれ育まれることになり、これが人々のマインドを変え、あたらなる刺激を与えているのではないでしょうか?たまたま、英国ではそれが約半数の人にとってネガティブなイメージと移り、国を閉じることを求めたということでしょう。

「小さくなる世界」は欧州に限りません。アメリカはもうすでに何年もかけて小さくなりかけています。オバマ大統領の「アメリカはもはや世界の警官ではない」というのはアメリカがアメリカ自国のメリットをもっとフォーカスしていることにほかなりません。これは見方を変えればドナルド トランプ氏のメキシコに壁を、ムスリムを排除せよ、と同じことでとてもナチュラルなベクトルの上を走っているだけではないでしょうか?

参議院選挙で野党はアベノミクスの糾弾で声を張り上げますが、多くの野党は「内需拡大」「消費拡大」「TPP大反対」を訴えています。これは実はすごく内向きの政策で貿易より国内でちっちゃくまとまって生きようという以外の何物でもありません。これも世界が小さくなる傾向の一つです。

そういえば最近のテレビ番組で流行っているのは地域情報や「あなたの街訪問」など非常に狭いエリアの特集。私の大好きなドラマ「孤独のグルメ」も地元の人しか行かないこんな店、あんな店の紹介です。それはより小さい狭いエリアに人々の目が移ってきているとも言えます。

このトレンド変化はグローバル化と真っ向からぶつかり合う関係にあります。もちろん、私にもその行方は想像できません。ただ、一つ思うことはグローバル化に人々がキャッチアップできていないことが最大のポイントではないでしょうか?世の中は今、あまりにも急激に進化し、一般大衆はそれに疲れた、これが本当のボイスだと感じます。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月27日付より

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