大手石油会社:黒から緑へ

2016年06月29日 14:51

今朝(6月29日)流れているFTの記事見出しを直訳すると、このようになる。意味するところは皆さんのご理解のとおりだ。すなわち、大手石油会社が、黒(石油)から緑(再生エネルギー)への移行にどのように取り組んでいるかを解説したものだ(”Big Oil: From black to green” June 28, 2016 7:43pm)。

記事そのものは長文で、なかなか要約しにくい。したがって、いつものことだが、筆者の興味を引いた部分に焦点をあてて紹介することにしたい。

昨年6月、欧州の大手石油会社は連名で、気候変動問題において「我々の役割を果たす」との宣言書を提出し、年末の「パリ協定」を後押しした。だが期待されていた米国の大手石油会社はとうとう参加しなかった。

世界中の大手石油会社はこの2年間、価格の大幅下落により苦しんでいるが、長期的には石油離れの可能性という「挑戦」を受けるだろうことは、エクソンも含め、認識している。需要増加の度合いを読み違えて、回収不能な過剰投資をするリスクが存在しているのだ。

一方で記事は、エクソンが今年1月に発表したエネルギー長期予測を参照して、これから何十年もの間、石油ガスの果たす役割が大きいことを指摘している。

エクソンの長期予測によれば、一次エネルギー需要は2040年までの25年間には25%以上も増える。なお過去25年間には59%増加している。化石燃料の比率は下がるが、それでも石油の需要量は19%増、天然ガスは51%も増える。風力や太陽光などの再生エネルギーの増加率は大きいが、それでも2040年に一次エネルギー全体に占める比率は4%に過ぎない(水力は含まない)。

この見方は大手石油会社が共有しているものらしく、再生エネルギーへの投資をまったくしていないわけではないが、伝統的な石油ガスへの投資額と比べると小さなものに留まっている。

シェルの社長Ben van Beurdenの「化石燃料からの収入が低炭素システムへの移行を成功裏に実現する基礎を築く」という発言が、大手石油会社の現状認識を表現していると言えるだろう。

シェルは先月、再生エネルギーへの投資を任務とする「新エネルギー部門」を新設した。オランダが計画している海上風力発電の入札に備えたもの、と業界では見られている。だが、仮に100%落札したとしても、350億ポンドで買収したBGを含めた石油ガス部門と比べるとまだまだわずかなものでしかない。

BPは、ブラウン社長の時代に「Beyond Petroleum」を唱え、実行した再生エネルギー戦略をほぼ反故にしている。太陽光ビジネスからは撤退し、先進的バイオ燃料の研究プログラムは中止した。米国の風力事業も売却しようとしたが、価格が折り合わず、実現できていない。

なおFTは、ほぼ同時刻に元社長のブラウン卿へのインタビュー記事を掲載している(”Ignore climate change at your peril, Lord Browne warns oil groups” June 28, 2016 6:42pm)。気候変動による影響を軽視して、今年5月に倒産した米石炭会社Peabody Energyの二の舞になるな、と警告している内容である。

最も野心的なのは仏トタールで、2011年に14億ドルを投じて太陽光パネル製造メーカーSunPowerを買収、今年5月にはバーテリー会社Saftを11億ドルで買収することに合意し、今月にはベルギーのガスおよび再生エネルギー販売会社であるLampirisを3.24億ドルで買収することに基本合意した。

だが、過去にいくつもの失敗事例を抱えている石油ガス業界には、得意な分野に注力することが得策との考え方も根強い。エクソン幹部は、GMが航空機産業に進出しないのと同じだ、という。確かに次のような失敗事例が存在する。

・1987~93 BPは動物食品販売会社Purina Millsを傘下に。
・70年代半ば~1988 Mobilは小売チェーンMontgomery Wardを所有。
・1969~86 エクソンは原子力発電所を所有。
・70年代半ば~80年代 エクソンは太陽光発電研究のリーダー。

このように、今後起こるだろう技術革新とコスト低減により再生エネルギーの重要性がさらに高まることを認識しつつ、当面の間は伝統的な石油ガス、なかでも相対的にCO2排出量の少ないガスへの投資を継続するために、他社より安いコストで石油ガスを発見、開発、生産することを目指していくものになりそうだ。

この記事では最後に、化石燃料から再生エネルギー会社に脱皮して成功した事例としてデンマークのDong Energy(政府が50.1%所有)を紹介しているが、エネルギー消費量が日本の4%に過ぎない小国であり、世界的規模で「モデル」とみなすことには無理があるだろうな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年6月29日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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