【映画評】嫌な女

2016年06月30日 06:00

嫌な女弁護士の徹子は、ストレートで司法試験に合格し、結婚もして、完璧な幸せを手に入れているように見えるが、実際は仕事も結婚生活も上手くいかず、空虚な毎日を送っている。そんなある日、婚約破棄で慰謝料を請求された徹子の同い年の従妹・夏子が、徹子を頼って訪ねてくる。徹子は、自分とは何もかも対照的な、社交的で派手好きな夏子を、子どもの頃から嫌っていたが、この日以来、生来の詐欺師の夏子に振り回される日々を送ることになる…。

桂望実のベストセラー小説を映画化したヒューマン・ドラマ「嫌な女」は、女優の黒木瞳が、監督に初挑戦した作品だ。立場も境遇も性格も、何もかも正反対の女性二人が、ぶつかり合いながらも奇妙な絆を結んでいく様を、コミカルかつシニカルに描いている。ターゲットは黒木監督と同じ、50代だろうか。女性の良いところも悪いところも、ズルいところも、切ないところも、何もかも分かっている年齢のファンが見れば、あるある!の連発かもしれない。嫌な女とは、ずいぶん強烈なタイトルだが、女性なら誰しも“嫌な部分”を隠し持っているもの。弁護士という職業柄もあって、自分にも他人にも本音を見せず、感情を押し殺す徹子に対し、生来の詐欺師である夏子は、同性から嫌われても他人からバカにされても、なりふりかまわず生きている。簡単に相手を分かったり、自分を変えようとはしない女たちのスタンスが、とてもいい。それでも不思議なことに、正反対の力が強くぶつかりあうことで化学反応が生まれてくるのだ。

大きな山場である、終盤の結婚式のシーンは、デフォルメされてディティールが甘い気がするが、徹子と夏子の二人の力が生んだ一種の奇跡ということだろう。カタブツの弁護士の徹子をいつも優しく見守るみゆき役の永島瑛子のおだやかな空気感がいい。この人によって徹子はゆっくりと変わっていくので、みゆきの内面にも踏み込んでほしかったのが少し残念。ラスト、竹内まりやが歌う主題歌「いのちの歌」がぴったりハマる。女性による女性のための女性映画。後味は悪くない。
【60点】
(原題「嫌な女」)
(日本/黒木瞳監督/吉田羊、木村佳乃、中村蒼、他)
(女性映画度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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