人間を必要とするビジネス

2016年07月01日 12:02

「人間を必要とするビジネス」とは実に奇妙なタイトルです。しかし、これが20年後になると意味を持つようになるかもしれません。現在の技術の進歩はあらゆるものをテクノロジーとAIとロボットで置き換えていく動きがあります。そんな20年を見据えてどんな仕事なら人間を必要とするのか考えてみました。

技術がどのように進化するか、もはや想像の域を越えつつありますが、私は人間が得意とする分野に何があるのか、と考えたとき「表情」があると思うのです。喜怒哀楽は必ず顔に出ます。あるいはポーカーゲームでは微妙な相手の顔つきを読み取ることもあるでしょう。警察の犯人探しもその表情からきっかけが生まれたなどという推理小説もあったと記憶しています。

この「表情」、今の技術の進化具合からすれば遠くない将来にロボットが人間の表情を読み取ることは可能かもしれません。しかし、ロボットが人間並みの複雑な表情を作るようになるのは当面ないとみています。とすれば表情が必要になるビジネスが今後も残るのだろうと思います。

数年前、中国で配膳ロボットが話題になったことがあります。珍しさで行くなら面白いと思いますが、普及するかと言われれば学食のような大量の食事を提供するようなところには向くと思います。客は配膳をする人と会話をするわけではないからです。回転ずしのロボットもありなのかもしれません。

では、普通のすし屋の親父がロボットだったらどうでしょうか?行きますか?たまにはおいしいものを食べたい、と思う気持ちはおいしい料理を口にするだけではなく、店の雰囲気、店員の接待を楽しむものです。ではロボットクンにサービスされるならどうなるのか、といえば「ヒロさま、○月○日以来のお越しですね、ありがとうございます。前回は○○を食されましたが今日は△△がヒロさまには最適かと思います」と勝手にその人にもっともふさわしい注文メニューまで推薦されてしまいそうです。

美容室の人がロボットだったらどうでしょう?美容室は店の人の技術もそうですが、そこで1時間なり2時間なり話をするのが楽しいのではないでしょうか?私が行く美容室は高齢者の女性のたまり場かと思うほどいろいろな人が入れ替わり立ち代わりやってきますが、ちょっとした世間話や自分のことを聞いてもらいたくてくる方も多いでしょう。その時、鏡越しにお互いの表情を見ながら話すのが微妙な心理的距離感を作り、しゃべりやすくしています。

日経の記事。「ライブエンタテイメント市場が5000億円を突破した」と。確かに2011年ぐらいまでは3000億円に届かなかった市場がこの数年で急速に伸びています。このブログでも以前同様のことをお伝えしたと思いますが、人が人を求めるのは急速に進むIT化の反動ではないかと思っています。最近では音楽はイヤホン越しに聞くものだと思っている人にとってライブコンサートの会場が一体となる強烈な盛り上がり感はある意味衝撃的に楽しいものだと思います。つまり、この市場が伸びるのはナチュラルな人間の行為ともいえましょう。

同様にスポーツ観戦があると思います。最近はサッカー、野球だけではなく、ラグビーからテニスなどジャンルがどんどん広がっていますがこの傾向について私は古代ローマやギリシャの野外施設での人間の格闘技や弁論会などを思い出しました。人は人であるからこそ人との対決を見たいのだと。

とすれば、AIにロボットが進化し続けると人はローマ時代のレベルに戻るのか、ということになりますが、案外、そうなのだろうと思っています。非効率で均一性もない、だけど手作り感があるできそこないに奇妙な愛着がわくようになるのかもしれません。

これは人間の持つ能力を引き出せなくなっているとも言えないでしょうか?私はその傾向は20年後ではなくてすでに始まっているとみています。効率化で歯車の仕事しかさせてもらえないのはラインのワーカーだけではなく、大学卒業で大手企業に入った人も同じです。だから何十年たってもある狭い専門エリア以外の知識は持つことはなく会社の人事政治力学には精通していても一歩、会社をでるとほとんど役に立たないことばかり。

料理はレシピがないと作れない時代です。自分で生み出そうという人は一部。多くの人はネットで検索すれば一発ですごい料理があなたもできる、ということになってしまいます。でもそれを食べる家族や友人は「へぇ、すごいね、これあなたが作ったの?」という言葉に対して「わたし」と自信をもって言えますか?本当はあなたが作ったのではなくてレシピ通りに真似ただけですね。

我々人間の退化はすでに始まっていると思います。だからゆえに人間が人間を必要とするビジネスをもっと発掘し、雇用を守らねばなりません。人間らしい能力を引き出すために趣味のサークルももっと活発になるべきでしょう。

これからは自分の身は自分で守る、これが大切です。ところで皆さん、家の電話番号、あなたの伴侶の携帯番号、空で言えますか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 7月1日付より

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