安請け合い、安売り厳禁!コンサルタントという仕事

2016年07月08日 06:00

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写真は講演中の林俊之氏

ニュースで脱税や金銭がらみ事件が発生すると、コンサルタントやコンサルタント会社が絡んでくることが多い。よって職業として「コンサルタント」と答えるとあたかも悪いことをしているような印象で受けとめられることがある。たしかに経営コンサルタントと聞くと、なにをしているのかわかり難い。

小さな会社のオープンルール経営のすすめ』(同友館)の著者である、林俊之(以下、林)は経営コンサルタントである。コンサルタント名「カカトコリ」としても活動をしている。セミナー講師や集客コンサルタントなど幅もひろい。

林は、コンサルタントの仕事を次のように答えている。「コンサルタントは何らかの利益をもたらす特定分野の専門家です」。端的にコンサルタントの仕事を表現している。

●コンサルタントという仕事

「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」との批判を聞くことがある。RBV(resource-based view)の時代には、企業の内部資源を活用することに主眼が置かれていた。この時代は「何をやるのかという戦略」が中心だったので「戦略を描くこと」が重視された。「戦略を描くこと」が仕事なわけだから「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」という表現になるのだろう。しかし、これは過去のトレンドの話である。現在は、インプリメンテーションや成果コミットにシフトをしている。

林は「コンサルタントは専門職だから日当が高くて当然です。またコンサルタントはパートナーですから安売りをしてはいけません」と主張してはばからない。

皆さまは、経営コンサルタントのフィーの相場をご存知だろうか。 参考までに、私が勤務していたコンサルティング会社では、@3万円(時間)、シンクタンクでは、@8000円(時間)のタイムチャージを加算していた。確かに安い買い物ではないから、成果が乏しければ批判を浴びることはやむを得ない。

林は、専門職の日当が高い理由について次のように述べている。「本当に良い仕事をして、施主さんにも従業員さんにも楽しく仕事をしてもらうためにはそれなりの報酬が必要なんじゃないでしょうか。私は『下請け』という言葉が大嫌いです。現実として、世の中の97%以上が中小零細企業です。上場企業のような大企業でも中小企業の協力なくしては仕事が進まない構造になっています。」

さらに、専門職が仕事をする際の懸念として、自社の利益を求めるばかりに長期的な利益を失っているところが多いとも述べている。これは分かりやすく説明すると、自社のキャパを上回る仕事を受注しても長い目で見れば利益にならないということである。「この仕事を断ってしまったら次の仕事が来ないかも知れない」という不安感から仕事を請けてしまうと大変なことに成りかねないと警鐘を鳴らしているのである。

これは細かく解説をすると分かりやすい。まず仕事のキャパが上回るとは発注量が増えることを意味する。しかしこのようなケースでは様々なリスクを想定しなくてはいけない。

A社というキャパオーバーの受注をした会社があったとする。従来どおりの価格で受注したが、売上増加に反して利益が減少し資金繰りを悪化させてしまった。原因は、受注量に対応するだけのラインが整っていなかったためである。対応できない量は、同業の別会社に外注することになったが受注単価を上回る外注費用が掛かってしまったのである。

林は「実際に、このようなことは充分に起こり得る」としている。そのうえで次のように述べている。「キャパを上回る場合は仕事を請けない勇気も必要です。もし、請けるのであれば、仕事の価値を正しく伝えなくてはいけません」。もし、林のようなコンサルタントがいれば資金繰りが悪化することも無かったかも知れない。

●コンサルタントを見分ける技術

コンサルタントに景気は関係ない。むしろ、市場環境が厳しくなるほど隙につけこんだコンサルタントが暗躍するものだ。

<よくあるコンサルタントと顧客の会話>

--勝負のポイントは一点突破による集中戦略です。資源を集中させて一気に攻勢をかけるのです。スピードとタイミングも重要です。

顧客:で?具体的になにをすれば良いのでしょうか。

--資源とは自社の強みです。自社の強みを一点絞ることで競合に対抗するのです。一点突破によって商圏を拡大し最終的にマーケットを制するといえば分かりやすいでしょう。

顧客:で??具体的になにをすれば良いのでしょうか。

--まずは攻めるべきマーケットと時期を決めてそこに戦力を集中させましょう。敵を分断し優先順位をつけて撃破していきます。

顧客:で???具体的になにをすれば良いのでしょうか。

--ですから、何回も申し上げていますが、集中的に一点突破をするのです。大手との勝負を避けて商機を見出すのです。これを差別化ニッチ戦略といいます。

顧客:・・・

笑い話ではなくこのようなケースは少なくない。専門的なワーディングを使用すると議論がそれっぽく見えることがある。数字を具体的に明示できないプロジェクトは間違いなく失敗する。林は、「数字にコミットできない具体性の無いプロジェクトは失敗する」と述べている。これに対してはまったく異論は無い。

●本日のまとめ

本書には、一般のビジネスパーソン向けに書き下ろされている。しかし、コンサルタントを本業にしている方にも参考になるように思う。また、実務のショートストーリーが盛り込まれているのでコンサルタントに関心がある学生などにも参考になるだろう。

最後に、林のメッセージを引用し結びとしたい。「よく、お客さまの立場になって考えろと言いますが、私に言わせれば、そんなのは無理です。お客さまの立場になろうとする時点で、売る側にいますから。それよりも効果的なのは、実際に自分がお金を支払う時の感情を意識してみることです。」

PS

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尾藤克之
コラムニスト

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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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