米国債利回り低下と米株高の共存、いつまで続く?

2016年07月11日 06:00

バロンズ0710

バロンズ誌、今週のカバーは投資信託の未来を予想する。米国投資信託協会(ICI)によると、投資信託の運用資産規模は1965年以降で年間平均13%増だったものの、2015年は前年比1.4%減の15.7兆ドルに終わった。コストの割にパフォーマンスが弱いためで、PIMCOからは2015年に460億ドルの資金が流出し運用資産総額は3010億ドルとなった。逆にバンガード・グループは7.2%増の3.1兆ドルに及ぶ。投資家がコスト低下と同時に高いリターンを求めるなか、後者はパッシブではなくアクティブ運用で顧客を取り込む状況だ。詳細は、本誌をご参照下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米株高と金利低下を取り上げる。抄訳は以下の通り。

低金利は株高を演出できるのか?—Can Low Rates Keep Lifting the Stock Market?

足元は、さながらキューブラー=ロス・モデル相場といったところだ。低金利環境に対し否定→怒り→駆け引き→失望を経て、ポートフォリオ・マネージャーは最終的に受け入れの領域に達しつつある。市場関係者は国債利回り低下という崩壊が一時的ではなく、日本が向かう方向を指していると認識し始めた。各国の中央銀行がインフレ目標を突破する未来は遠く、利上げの時代は暫くやってきそうにない。

米10年債利回りも米6月雇用統計を経てもなお低下、1.366%と過去最低を更新した。世界では、11.7兆ドル相当の国債利回りがマイナスという状況だ。需要が供給を上回るなか投資信託市場では債券ファンドに144億ドルも流入し、株式ファンドの4億7000万ドルを遥かに超える。それでもS&P500は8日に1.5%の大幅高を演じ、5月につけた最高値に迫った。

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(出所:Stockcharts)

米6月雇用統計は、確かに雇用減速への不安を後退させた。しかし、グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストによると、数字が示すより悲観的な内容だという。家計調査をみると失業率は5月の4.7%から6月に4.9%へ上昇したが、これをNFPに換算すると「6月は就業者数が11.9万人減少し、過去6ヵ月で51.7万人減少した」。また「企業の設備投資が過去6ヵ月間に年率10%減」とあって、雇用が加速する公算は今後小さいと警鐘を鳴らす。4〜6月期決算もS&P500構成企業の1株当たり利益は前年同期比5.1%減と予想されており、雇用に明るい材料を届ける見通しにはない。バークレイズの Ajay Rajadhyaksha債券・為替・商品リサーチ・ヘッドがBREXIT後のラリーの波に乗らないよう推奨する通りリスク資産の上昇は望み薄で、米国債への資金流入は継続しそうだ。

もうひとつの人気コラム、ストリートワイズも株式市場に慎重な見方を寄せる。抄訳は以下の通り。

株式投資にあぐらをかくべからず—Don’t Get Too Comfortable With Stocks.

英国民投票で欧州連合(EU)離脱が過半数を獲得した後、株式市場は下落を回避しており投資家はリスクを不安視していないようだ。S&P500は8日に上昇、5月の最高値まであと0.04%に迫る。米6月雇用統計を受けても利上げ織り込み度は上昇していないことが一因で、米10年債利回りは1.366%と過去最低に迫った。

低金利がリスク資産への資金流入を加速させる余地を残すものの、環境は厳しい。確かに株式益回りは6%で米10年債利回り1.38%を4.62%上回る半面、株価益回りの逆数である株価収益率(PER)は16.7倍で過去10年間の14倍を上回り割高感がある。

国債利回りが低下する段階で株式プレミアムが上昇する傾向が高くなるという事実にも、注意したい。第2次世界大戦後、1950年代に米10年債利回りは3%以下で推移した。現在の株式リスクプレミアムは当時を大きく超え、5%以上に達するという。

米国企業の利益の伸びが鈍化するリスクもある。そもそも英国には景気後退リスクが差し迫り、世界経済の成長は低迷したままだ。米国企業の売上のうち英国を含む欧州は15%を占める事情を鑑みると、BREXITは売上を0.3%ポイント押し下げかねない。

米債利回りの低下は、米国の景気後退と米株安のリスクを先読みしている可能性もある。MKMパートナーズのマイケル・ダーダ氏主席ストラテジストによると低金利に陥ったリセッションは1947年から1960年に4回発生し、S&P500は平均で20%も沈んだ。景気後退の平均である34%より下げ幅こそ小さいが、投資家に与える痛みは大きいだろう。

——S&P500は2013年以降、米10年債利回りが2%以下で最高値を更新していません。現状、BREXITをきっかけにイタリアの銀行破綻懸念、再燃する中国景気減速もあって、TINAつまりThere Is No Alternativeという状況で米国債に資金が流入するのは当然の成り行きに見えます。問題は米株高。たとえBREXITの影響を直接受けるリスクが低いとはいえ、ドル高がボディブローのように効いてくる可能性は見過ごせません。米国企業は前年比効果で下半期に業績リセッションから抜け出す公算ですが、世界経済が上向かない以上、設備投資や採用を積極的に勧められるような好業績は期待しづらい。米株VS米債の綱引きで、米株に軍配が上がるように思えないのは筆者だけでしょうか。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長による口先介入にも、要注意。6月に行った議会証言で米株は「割高」と言及済みであるだけに8月26日にジャクソン・ホール会合で登壇する際、再び警戒シグナルを点灯しないとも限りません。

(カバー写真:Christine Puccio/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年7月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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