プロ読書家の本を読む技術とは

2016年07月12日 06:00

13669431_1030751410339361_3715537207940440260_o

写真は印南敦史氏

私は読書家というほどではないが、本を書いたり書評を書くことがあるので比較的読むほうではないかと思う。また本を読む人にはそれぞれのスタイルがある。

印南敦史(以下、印南)は、「ライフハッカー[日本版]」「NewsWeek日本版」などのニュースサイトに、月60本近くのブックレビュー記事を寄稿し、年間700冊以上の読書量を誇る人気書評家である。

そんな彼も、数年前までは、1ページを読むのに5分以上もかかるほどの遅読家だったという。『遅読家のための読書術―情報洪水でも疲れない』(ダイヤモンド社)には、遅読家だった印南が書評を書くことからつかんだ読書術が審らかに語られている。今回は、その読書術を探索したい。

●「本を読むのが遅い」と感じている人は意外に多い

数年前にフォトリーディングという、速読術がブームになったことがある。フォトリーディンとは、アメリカのポール・R・シーリィによって開発された右脳を使った超高速情報処理プロセスのことで、神田昌典氏が『あなたもいままでの10倍速く本が読める』で紹介し有名になった手法である。

具体的には、読んで理解する読書ではなく、文章を写真のように記憶して写し撮っていく手法である。1ページを1秒ほどで読む手法は斬新な手法として話題にもなった。

フォトリーディングをはじめ速読本の類は多い。それだけ、「本を読むのが遅い」と感じている人が多いということだろう。遅読家の人には熟読する人が多い。印南はこれを「熟読の呪縛」と表現している。読者の主役は作者ではない。読者が自分勝手に好きなように読んでも構わないのである。

そして、その根拠としていくつかの要点をあげているが、ここでは2つほど紹介したい。

(1)音楽を聞くとき「1音たりとも逃さず聞くぞ」と意気込む人は居ません。では何故、読書は、1ページたりとも逃さないぞ、と意気込んでしまうのでしょうか。
(2)どうせ熟読しても1ヶ月後には内容なんてほとんど覚えていません。だから熟読する必然性はほとんどありません。手早く、本当に必要な数行だけをメモしながら何冊も読んでいったほうが効率的です。

なお、印南は、小説やエッセイなどのストーリー性がある作品は、速読が困難であるとしている。ビジネス書など、数ページ飛ばしても意味が理解できる本は飛ばしても問題ないということである。これはビジネス書の構造を考えると分かりやすい。

例えば特定ジャンルのビジネス書を何冊か読んだとする。そこには一定の共通性があることに気がつくはずである。例えば、コミュニケーション術に関連する本を何冊も読んだとしよう。そこには「人間関係を構築することの重要性」について語られたエッセンスがふんだんに盛り込まれているはずである。

または、「会社が儲かる仕組みつくり」という本があったとしよう。そこには「利益を増やす方法」「コストを減らす方法」「限界利益率を改善する方法」、この3点のうちどれかに関連する内容が必ず盛り込まれているはずである。

理由は、会社の実務の目的が、この3点のうちのどれかに必ず当てはまるためである。特定ジャンルのビジネス書には一定の共通性があり排除できない内容が必ず存在するのである。そのため、ビジネス書は読み飛ばしても内容を把握することが難しくない。

印南は、読書の目的を「半日ないしは1日で、本のテーマを理解し(著者の)琴線に触れた数行を見つける」こととしている。読書は暗記するものではない。読んで楽しむことで、多くの本に接して感動的な1行に出会うことが醍醐味である。共感しグッときた部分が1行でもあればその読書は成功。肩肘張らずにもっと気楽に音楽を聴く感覚で、読書そのものを楽しんでくれという主張に共感する人は多いことだろう。

●本日のまとめ

また、印南は読書の習慣を生活のなかに取り入れることを推奨している。食事やお風呂のとき、テレビを見るとき、毎日会社へ行くときに読むなど、パターン化することで自然に習慣化されるというものだ。読書を自分のなかでどう位置づけ、どのように本と向き合っていくかが大切である。

最後に印南のメッセージを引用し結びとしたい。「やっぱり本がある生活のほうが、ない生活よりはずっと楽しい。これは僕にとって動かしがたい事実です。そして、みなさんの人生にとっても、本が『ある』生活のほうがいいのだとすれば、紹介している内容は参考になると思います。」

PS

アゴラ研究所は、次代の論客になりうる新しい才能を開拓するため、著者発掘セミナーを7月26日(火)に開催します。詳しくはこちら

尾藤克之
コラムニスト

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑