踊りすぎの株式相場

世界の株式市場の動きが奇妙です。まさに外的要因で一喜一憂相場となっています。いったいこの相場はどこに向かうのでしょうか?

東京市場。6連騰のあと4日連続安、そして昨日まで再び4日連続高でジェットコースターのようになっています。NYは昨年8月につけた18300ドルの高値更新を何度となく阻まれてきましたが、今週、ついにそこをブレイクし、新展開入りとなっています。

材料にも事欠きません。日本の場合、今週のリード役は任天堂。ポケモンGOがアメリカで爆発的に人気になっていることが日本のメディアで報じられ、それに歩調を合わせるように任天堂の株価も急騰。そして、昨晩、NYで上場したLINEは初日の終値が公開価格より27%も高い41.58ドルとなりました。東証には今日、登場しますが、私の予想はストップ高買い気配となるのではないかと思います。

つまり、相場のリーダーが存在することで個人投資家を含めて市場参加意欲が沸いてくることが大いなるモチベーションになります。

次いで円相場。こちらも想定外の円安展開となっています。本稿を書いている時点で105円台前半。昨夜は105円90銭程度までありました。何がこうなっているのでしょう。

まず、英国が国民投票でEU離脱を選択したことで世界に激震が走りました。だれもそれを予想していなかったからであります。日経平均が千数百円も下げたのも心理的ショック要因であります。つまり離脱が現実のものとなったことによる下げではありません。例えばリーマンショックの際には具体的に破たんや行き詰まりが生じた事実がありましたが、英国の件はまだ何も起きていないという絶対的な違いがそこに存在します。

更に欧米は完全な夏休みモードの中、多くのトレーダーは再び夏のリゾートに繰り出し、仕事そっちのけになっています。私がこのブログで「(今週の)月曜日は大きく反発する」と述べたのはそれを理由に指摘させていただきました。

さて、問題は円相場です。これも複数の因子があります。セーフヘイブンと称される円が離脱ショックで一気に買われた後、揺り戻しと夏休みモードへの復帰でセーフヘイブンの重みが消えてしまいました。そこに登場したのがバーナンキ前FRB議長。日本にやってきて安倍首相や黒田日銀総裁と会談しています。その閉ざされたドアの向こうでの会談の内容は全く分かりませんが、ヘリコプターベンの異名をとる氏は新たなる緩和政策のアイディアを提示した可能性は高い気がします。それを受けて日銀の国債全量買い取りや永久債など異次元どころか異空間の発想が打ち出されるのではないかという期待が先行しています。

最後にもう一点。これはアメリカの利上げがどん詰まりを見せていることであります。つい先日まではイエレン議長にしては珍しい「利上げ指南発言」があったもののその膨らんだ風船は英国国民投票とともにパーンと音を立てて消えてしまいました。これで主要国、新興国共に利下げへのバイアスが生じたことは株式市場には追い風となりました。

但し、踊りすぎは禁物であります。

まず、イギリスの新首相、メイ氏の組閣内容は対EU強硬派ぞろいで大陸との激しいバトルが想定されます。強硬派で押すだけ押してメイ首相が折衷するというシナリオが想定されます。今は作戦をじっくり練り、本格的に動き出すのは8月下旬以降とみています。

次に7月下旬から本格化する四半期決算。これがどういう数字になるのか、要注目です。特に日本の輸出関連企業は円高が本格的に影響する初の決算となりますからどの程度下押ししてくるのかがポイントとなりそうです。ユニクロも早速通期見通し下方修正を行っています。

ジムロジャーズ氏が株式市場は今後2年ぐらい様子と見述べたのは嵐はこれから来ることを察知しているからでしょうか。彼に限らず著名ファンドマネージャーは警笛を鳴らしています。思い起こせばG7の際、安倍首相がリーマンショック級の経済不安感と述べたことに対して異論を述べたのが英国前首相、キャメロン氏。そのキャメロン氏がその後引き起こした「リーマン級ショック」となれば冗談にもなりません。

私の長年の経験からすると専門家は独特の嗅覚を持っています。プログラム売買よりもAIよりも高感度な専門家のつぶやきは一応、頭に入れておいたほうが良いでしょう。今は真夏の花火大会ぐらいの気持ちでいた方がよさそうな気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 7月15日付より