トルコのクーデターが意味するもの

2016年07月18日 10:07

クーデターはどこの世界にもあるものです。日本でもっとも有名なのは226事件でしょうか?1936年2月26日、雪の降る早朝、1500名近い将校が立ち上がり、高橋是清大臣などが殺害され、日本の歴史に多大なる影響を与えた事件です。数々の小説の材料にもなっており、著名どころでは宮部みゆき「蒲生邸事件」があります。

終戦後、この人はまだ生きていたのか、と言わせた鈴木貫太郎首相の伝記には将校が部屋に入ってきたときの生々しい状況が克明に描かれています。やはり戦後、この人もまだいたのか、と言わせた幣原喜重郎首相はその手記で226事件が日本を変えたきっかけであると述べています。

トルコは日本人に対して非常に好意的な姿勢を持つ国として日本からも大挙して観光客が向かう国の一つであります。アジアとヨーロッパの文化の交流地点という意味でその歴史的深さを感じさせるだけではなく、日本企業(大成建設)がボスポラス海峡の橋を建築するなどビジネス上の交流も大きく、安倍首相もしばしば同国を訪れていました。

思い出せば2020年オリンピックを最後まで争ったのもトルコと日本でした。あの当時、トルコがこれほど荒れるとは誰が想像したでしょうか?レバタラですが、仮にトルコでオリンピック開催が決まっていたらリオのオリンピックへの不安感どころではなかったでしょう。

トルコが経済的に躍進を遂げその先行きに大きな期待が育まれたのは2011年まで。その後今日に至るまで経済成長率は2-4%程度に落ち込み、新興国としてはさえない状況に陥ります。その中、イスラム国の台頭でトルコは矢面に立たされます。そのうえ、ロシア機への誤爆などもあり、ロシアとの外交も冷えてしまいます。国内に醸成されたと思われるのが経済の落ち込みを含めた閉塞感だったのでしょうか?

226事件も統制派に対して皇道派が躍進するという国内の温度変化があり、さらにその背景には昭和恐慌に対して金解禁を強行した浜口雄幸首相、井上準之助大臣の政策失敗もありました。それを引き継いだ高橋是清大臣は直ちに金の兌換停止を行い、日本円は大暴落となります。これが青年将校の格好の狙いとなってしまいました。

世界で不和が起きるときは経済問題にその背景にあることが多々あります。第一次世界大戦にしても直接的な原因はオーストリア ハンガリー帝国の皇太子がサラエボ人により殺害されたことでありますが、その背景は1870年代の産業革命が引き起こした効率化が引き起こした植民地戦争であります。

今、世界で起きているのは中国による資源の爆食いからその開発競争、そして大反動の流れであります。その不和のさなか、イスラム国も生まれました。今日頻発するテロも同根でありましょう。経済がそれまでの流れからスピードダウンしたり逆回転をするとまず、影響を受けるのは弱小の国家、企業、ワーカーであります。そこに生まれる不満感は大きな力となり、政権打倒を目指すのですがそこには十分な論理展開というより、政府が敵に見えるようになる錯覚でありましょうか?

エルドアン大統領の力量にかつての勢いはないとされます。そんな中での今回のクーデーターは失敗に終わり、あっさり鎮圧されました。226事件も2月26日から29日までのわずか4日の事件でした。が、その影響は歴史を変えるほどのものとなったのです。実際、トルコでは大量の処分が下されるわけで優秀な人材不足が顕著になるかもしれません。

今回のトルコの事件も日本においてはあと1週間もすれば過去の話になるかもしれません。しかし、世に起こる数々の事件は決して関連性なく、ばらばらに起きているわけではありません。必ず、不満を持つ人間が力を蓄え、ある日突然蜂起するものです。次の事件が再びトルコから起きるのか、全く違う国から始まるのかわかりません。

M&Aに利益至上主義、99%と1%、効率化を求め、さまよい続ける生産拠点といった高度な経営体制からは国家と地域の住民の長期的安定感を醸し出すことはなかなか難しいものです。高度に発展した資本主義は一面を見れば搾取の経済でもあります。金融緩和で喜ぶのはお金を借りることができる企業や個人だけで多くの民からは預金利息を奪い取り、より厳しい生活を余儀なくさせていることに目をくれることはないでしょう。

今回の事件もこんな背景がなかったとは言い切れません。世の不安感はまだまだ続きそうな気がいたします。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 7月18日付より

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