【フジメディアHD】M&A等の投資でメディア以外の事業へ挑戦

2016年07月22日 06:00

フジテレビ

フジメディアホールディングス<4676>はフジサンケイグループであり、大きく分けて「放送」「製作」「映像音楽」「生活情報」「広告」「都市開発」の6つの事業からなる。連結子会社は38社となり、放送事業を中心として「メディア・コングロマリット」を目指している。2015年4月には都市開発のセグメントにおいて、サンケイビルウェルケア、グランビスタホールディングス、グランビスタホテル&リゾートを連結に加えている。

フジメディアの主なM&A(資本提携を含む)


年月 概要
2004.1 シンコーミュージック・パブリッシャーズの株式を28億5000万円にて取得
2005.3 ソフトバンクインベストメントとニッポン放送とともに、コンテンツ・メディアブロードバンド関連企業を投資対象とするベンチャーキャピタルファンド(基金規模200億円)を設立。SBI20億円、フジテレビ160億円、ニッポン放送20億円
2005.3 サンケイビルの第三者割当増資にて93億3400万円にて引き受け(11%⇒26%)
2005.5 ニッポン放送の議決権32.5%を保有するライブドアパートナーズの全株式を取得。ライブドアのライブドアパートナーズに対する貸付金債権の買い受け、弁済を含め買収価額総額は670億円
2005.9 産業活力再生特別措置法に基づき、ニッポン放送株式1株につきフジテレビ株式ではなく、6,300円の現金交付の簡易株式交換(約241億円)により完全子会社化
2006.4 ニッポン放送ホールディングスを吸収合併
2007.3 ポニーキャニオン(84%⇒100%)、扶桑社の完全子会社化(84.4%⇒100%)、ビーエスフジの株式を追加取得(39.5%⇒44.5%)
2007.11 ディノスの株式を追加取得し完全子会社化(94.4%⇒100%)
2008.2 富士パシフィック音楽出版の株式を追加取得し完全子会社化(90%⇒100%)
2008.5 サンケイリビング新聞社の全株式を48億1400万円にて取得し、完全子会社化(41%⇒100%)
2011.4 ビーエスフジを株式交換により完全子会社化(44.5%⇒100%)。取得原価83億800万円
2012.3 秋田テレビ、岩手めんこいテレビ、岡山放送、沖縄テレビ放送、仙台放送、テレビ新広島、新潟総合テレビ、福島テレビ、北海道文化放送を追加取得し持分法適用会社へ
2012.4 持分法適用関連会社であったNEXTAPの株式を追加取得し完全子会社化(38.7%⇒100%)
2012.6 関西テレビ放送の株式を追加取得し持分法関連会社に(2.3%⇒2.6%)
2013.1 ベンチャーキャピタル事業新会社として「フジ・スタートアップ・ベンチャーズ」を設立
2013.3 持分法適用関連会社であったサンケイビルを公開買い付けにより492億7200万円で子会社化(31%⇒97.1%)
2013.12 関係強化のためWOWOW株式70万株を東芝より議決権比率4.86%を25億2700万円で取得
2014.1 協同広告はクラオスに吸収合併し消滅
2014.1 スタジオアルタを売却し、持分法関連会社から除外
2014.4 エグジットチェーンの株式を追加取得し完全子会社化
2014.7 タイの最大手TV 通販事業者であるTV Direct Public Companyの株式2.43%を取得
2014.8 伊藤忠商事の子会社であるICTパートナーズの株式37%を取得し、持分法関連会社に
2014.9 健康食品等の製造・販売を行うアルマードの株式を売却
2015.2 eコマース、O2O(on-line to off-line)、インターネット・モバイル全般などで、対象企業はグローバル展開を目指すアーリーステージを中心とするベンチャーキャピタルのQuest Venture Partners Fund II LPへ出資
2015.4 日本在住外国人向けの英語ニュースサイト「Japan Today」や求人・生活情報を提供するサイト「GaijinPot」を運営するジープラス・メディアと、その関連会社で不動産情報提供サービス「realestate.co.jp」を運営するリアル・エステート・ジャパン社を買収
2015.4 ホテル運営等を行うグランビスタホテル&リゾート株式99.6%を取得し子会社化
2015.5 米国発の動画配信ベンチャー、HJホールディングス(「Hulu」を運営)と動画配信分野で協力
2015.5 資本業務提携を目的に、音楽専門チャンネルを持つスペースシャワーネットワークの株式を第三者割当増資にて16.65%を2.6億円にて取得
2015.9 子会社で婚礼プロデュースを行うストーリア(売上9.8億円)株式100%をエスクリへ譲渡
2016.1 複合メディア企業の独ベルテルスマンと音楽著作権の共同保有、世界で徴収する著作権収入を分け合う仕組みに
2016.2 グーグル社発のベンチャー企業で世界的な人気スマートフォンゲーム「イングレス」を運営するNiantic,Inc.に出資し資本参加

フジメディアのM&Aについては、大きなものとして05年に起きたニッポン放送ライブドア事件がある。当時フジテレビの筆頭株主であったニッポン放送の株式に対し、堀江貴文氏率いるライブドアがフジテレビの経営権を取得するために買収を仕掛けた事件であった。最終的にはライブドアとフジテレビの和解により、フジテレビ側が経営権を取られることはなかったが、ライブドアが取得していたニッポン放送株式の取得とライブドアの第三者割当増資の引き受けにより1400億円が必要となる苦い経験となった。

その後のM&Aに関しては、グループ株式の追加取得や、協業の可能性の見込める企業に対し出資や第三者割当増資を引き受けるなど、毎年数件のM&Aを行っている。13年にはベンチャーキャピタルの組成、15年にはホテル運営などを行うグランビスタホテル&リゾート株式の子会社化、16年4月には、自社にゲーム会社を立ち上げるなど、メディア部門以外の新たな領域の開拓に力を入れている。

他社との比較(メディア部門)

フジメディアホールディングスにおいては、放送事業を行うフジテレビジョンが同社では圧倒的な稼ぎ頭となる。民放テレビキー5局(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)の中では1984年から15年まで売上高トップを維持してきた。しかし16年3月期の決算で、売上高トップの座を日本テレビに譲ることとなった。前年対比で見ると、5局のうちフジテレビのみが減収となり、キー局の中でも苦しい環境にいる。

2015年度売上高比較

細かく見ていくと、売り上げに対し、日本テレビが圧倒的な利益を出していることが分かる。フジテレビは日本テレビを除く4社の中でも利益面で苦しい立ち位置に居ることが分かる。メディア全般が低成長ということはなく、実際のところ日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京の3社は16年3月期で過去最高益とかなり好調である。一方フジテレビは、売上高では3分の1ほどになるテレビ東京と比べても営業利益、経常利益、純利益では大きな差が無い。民放5社のうちでは完全に一人負けとなった状況であり、メディア部門の強化は喫緊の課題であろう。

セグメントの分散(ホールディングスでの比較)

16年3月期でのそれぞれの売り上げと利益について示した。

売上と利益

それぞれをホールディングスで見てみるとフジメディアの売上高が大きく抜きんでていることが分かる。

まずセグメントを見てみよう。比較すると、フジメディア以外の4社は3~4の事業セグメントに分けているが、フジメディアはセグメントが7つと他社に比べ多角化していると言える。フジメディアは現時点で100社の子会社と52の関連会社を持っており、事業の分散を進めている。利益の面で見ると、日本テレビに対しては倍以上の差をつけられているものの、外の3社に比べると利益は出ている。フジメディア単体を見ると、放送部門の利益が少ない一方、都市開発のセグメントが利益に大きく貢献していることが分かる。フジメディアはメディアでの売り上げを中心とするも、不振であるメディアの変動に左右されないポートフォリオを構築しているとも言えよう。今期の売り上げ見込みにおいても都市開発事業については23%増を見込んでおり、同事業をさらに拡大させる算段のようだ。

総資産額

厳しい環境に立つフジメディアであるが、財務を見てみると、同社の総資産は16年3月期で1兆1364億円、自己資本比率も減少傾向にあるものの55%と問題ない水準である。

新たな事業領域へ

メディア関連で一人負けしている同社にとって、メディア事業の強化は喫緊の課題となるものの、数年間利益が減少し続けているメディア事業が一気に利益が取れるようになることは難しい。そのため成長分野への投資が必要になろう。

今でこそ珍しくはないが、13年2月にフジメディアはテレビ局では珍しく総額で15億円を投資するベンチャーキャピタル(フジ・スタートアップ・ベンチャーズ)を設立した。スマホ向けアプリの開発や放送と連携できるネット企業の囲い込みや育成を目的として設立したが、キャピタルゲインを得ることを主眼とする銀行系ファンドと異なり、いかに協業できるかというところに主眼を置いている。今現在ではゲーム、学習コンテンツ、マーケットプレイスなどベンチャー企業14社に出資し、新たなメディアコンテンツ価値創造を目指している。

また、自社においても16年4月にスマートフォン及びPC向けゲームの企画運営などを行うフジゲームズを設立した。テレビ局がゲーム会社を持つことは珍しく、新たな柱をつくろうとする同社の気概を感じる。

さらなる多角化を目指し、新たなことに挑戦を続けるフジメディアの次の一手はどのようなものになるのだろうか。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部


編集部より:この記事は「M&A Online」2016年7月21日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「M&A Online」M&Aアーカイブスをご覧ください。

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